重松清さんの小説『きよしこ』は、誰もが一度は経験する「うまく言葉にできないもどかしさ」を痛いほど丁寧に描いた物語です。
吃音という悩みを抱えた主人公の少年が、転校を繰り返しながら多くの出会いを通じて少しずつ心を成長させていく12年間の軌跡を描いています。

読書感想文の課題、何を書けばいいかヒントが欲しいな…



この物語のテーマを深く知れば、きっとあなただけの感想が書けますよ
- 7つの短編で描かれる詳しいあらすじ
- 読書感想文に役立つ3つのテーマ
- 主人公の成長を支える登場人物たち
- NHKでドラマ化された際のキャストや作品背景
心に響く理由、うまく言葉にできないもどかしさを描く物語
『きよしこ』が多くの読者の心を掴んで離さないのは、誰もが一度は経験する「うまく言葉にできないもどかしさ」を、痛いほど丁寧に描いているからです。
主人公の少年が抱える悩み、作者自身の体験から生まれる物語のリアリティ、そして読後に温かい気持ちになる結末が、この作品を特別なものにしています。
これから、この物語がなぜこれほどまでに心に響くのか、3つの理由を詳しく見ていきましょう。
主人公きよしが抱える吃音という悩み
この物語の核となるのが、主人公きよしが抱える吃音(きつおん)という悩みです。
吃音とは、言葉がなめらかに出なかったり、特定の音を繰り返したりする発話の障害を指します。
きよしは特に「カ行」や「タ行」がうまく言えず、転校先での自己紹介で自分の名前「きよし」すらまともに発音できません。
欲しいクリスマスプレゼントの名前が言えず、感謝の「ありがとう」も伝えられない。
そんな日常の小さなつまずきの積み重ねが、彼の心を深く傷つけていきます。



うまく話せないだけで、周りから変に思われるのって辛いですよね…



きよしが感じる孤独や悔しさは、決して他人事ではない普遍的な感情なのです
言葉にできない想いを胸に秘めるきよしの姿は、読者の心に強く迫り、物語への共感を深める大きな要素となっています。
作者・重松清自身の少年時代が紡ぐリアリティ
物語に深い真実味を与えているのは、作者である重松清さん自身の少年時代の体験です。
この小説は、自伝的な要素が色濃く反映された作品として知られています。
重松さん自身も、父親の転勤で少年時代に9回の引っ越しを経験し、吃音に悩んでいた過去があります。
転校先でなかなか馴染めなかった孤独感や、言葉に詰まる瞬間の焦りといった感情の描写は、作者自身が経験したからこその生々しさを持っています。
項目 | 内容 |
---|---|
生年月日 | 1963年 |
出身地 | 岡山県 |
特徴 | 自身の吃音や転校の経験を作品に反映 |
主な受賞歴 | 直木賞、山本周五郎賞、吉川英治文学賞など |
作者自身の痛みが土台にあるからこそ、『きよしこ』は机上の空論ではない、血の通った物語として読者の心に響きます。
読後に静かな勇気をもらえる優しい結末
きよしの苦悩を描きながらも、『きよしこ』は決して暗いだけの物語ではありません。
読んだ後に心が温かくなり、静かな勇気をもらえる優しい結末が待っています。
物語を通じて、きよしは多くの出会いと別れを経験します。
空想の友達「きよしこ」や、転校先で出会う「どんぐりのおっちゃん」、そして家族の不器用な愛情に支えられ、彼は自分の悩みと向き合いながら少しずつ前に進んでいくのです。



きよしは、自分の言葉で想いを伝えられるようになるのでしょうか?



物語の終わりには、彼なりの成長と確かな希望の光が見えてきますよ
劇的な出来事が起こるわけではないですが、きよしの小さな一歩に、私たちは自分のことのように心を動かされます。
読み終えたとき、明日から少しだけ顔を上げて歩いてみようと思える、そんな力をくれる物語です。
7つの短編で辿るあらすじ、きよしの12年間
この物語は、主人公きよしが小学1年生から高校3年生になるまでの12年間を、7つの短編を通して描いています。
転校を繰り返す中で、彼がどのように言葉の壁と向き合い、心を成長させていくのか、その軌跡を辿ります。
短編集タイトル | 時代 | 主な出来事 |
---|---|---|
きよしこ | 小学1年生 | 空想の友達「きよしこ」との出会い |
乗り換え案内 | 小学生 | 転校先での自己紹介の失敗と孤独 |
どんぐりのココロ | 小学生 | どんぐりのおっちゃんとの心の交流 |
北風ぴゅう太 | 小学生 | 伝えられない感謝の言葉のもどかしさ |
ゲルマ | 中学生 | 深夜ラジオとの出会いと自己表現への憧れ |
交差点 | 高校生 | アルバイトと淡い恋を通した人との関わり |
東京 | 高校3年生 | 故郷からの旅立ちと自立への決意 |
各短編は、きよしの人生における重要な転機を描き出しており、読み進めるごとに彼の成長と心の変化を感じ取ることができます。
きよしこ、少年だけの友達との出会い
この物語は、主人公が「きよしこ」という自分にしか見えない空想の友達を作り出すところから始まります。
吃音(どもり)が原因でうまく話せないきよしにとって、きよしこは唯一、すらすらと言葉を交わせる大切な存在でした。
小学1年生のクリスマス、きよしはプレゼントに「魚雷戦ゲーム」が欲しいのに、「ギョ」という音が言えません。
そのため、両親に欲しいものを伝えられず、違うおもちゃをもらうことになります。
言いたいことが言えない悲しさと孤独の中で、きよしこは彼の心の声を代弁してくれる支えとなるのです。



どうして「きよしこ」なんて名前なの?



「きよしこの夜」の歌から、自分の名前に似た「きよしこ」という友達を想像したんですよ。
この出会いは、これから続くきよしの長く苦しい言葉との闘いの中で、彼の心をそっと守るための、ささやかなお守りのようなものでした。
乗り換え案内、転校先での孤独
父親の仕事の都合で、きよしは転校を繰り返します。
新しい学校での最初の関門は自己紹介です。
しかし、「きよし」の「キ」がうまく発音できない彼は、教室で立ち尽くしてしまい、クラスメイトから笑われてしまいます。
この失敗が原因で、きよしは学校で孤立を深めていきます。
誰とも話さず、休み時間も一人で過ごす日々。
彼の孤独は、転校という環境の変化によって、さらに色濃いものになってしまうのです。
うまく言葉を発せられないことが、周りの世界との間に高い壁を作ってしまう切なさが描かれています。
どんぐりのココロ、どんぐりのおっちゃんとの触れ合い
そんな孤独な日々の中で、きよしは公園で「どんぐりのおっちゃん」と名乗る男性と出会います。
彼は、きよしが言葉に詰まっても急かすことなく、静かに待ってくれる大人でした。
おっちゃんは、きよしが集めたどんぐりを「どんぐりのココロ」と呼び、一つひとつを大切に扱います。
言葉を交わさなくても、おっちゃんの優しい眼差しと態度は、きよしの固く閉ざした心を少しずつ解きほぐしていきました。
この出会いは、話すことだけがコミュニケーションではないと教えてくれます。



どんぐりのおっちゃんて、どんな人だったの?



少し変わった人に見えるけど、きよしの純粋な心を誰よりも理解してくれる優しい人でした。
おっちゃんとの触れ合いは、きよしにとって、人と関わることへの恐怖を和らげる温かい経験となりました。
北風ぴゅう太、伝えられない感謝の言葉
この短編では、きよしが抱える「ありがとう」という感謝の言葉を伝えられないもどかしさが、痛いほどリアルに描かれます。
いつも優しくしてくれる学校の用務員さんに、きよしは感謝の気持ちを伝えようと決心します。
しかし、いざ伝えようとすると、「ア」の音が喉の奥でつかえて出てきません。
感謝の気持ちでいっぱいなのに、それを言葉にして届けられない苦しみ。
このエピソードは、言葉にできない想いの尊さと、それを伝えられないことの悲しさを読者に強く訴えかけます。
ゲルマ、思思春期の葛藤とラジオの世界
中学生になったきよしは、ゲルマニウムラジオと出会い、その世界に没頭します。
深夜、布団の中でイヤホンから流れてくるDJたちの巧みな話術やリスナーからのハガキは、学校という狭い世界しか知らなかった彼の心を、外の広い世界へと繋げてくれました。
言葉を巧みに操るDJへの憧れは、同時に自分の吃音に対する劣等感を強めることにもなります。
しかし、ラジオの世界は、彼に言葉の面白さや表現することの楽しさを教えてくれました。
この経験が、後の彼の人生に大きな影響を与えていくのです。
交差点、高校生活での新たな出会い
高校生になったきよしは、勇気を出してハンバーガーショップでアルバイトを始めます。
そこで同級生の女の子、相原和歌子と出会ったことが、彼の世界を大きく変えるきっかけとなります。
彼女との交流を通して、きよしは少しずつ自分の殻を破っていきます。
もちろん、吃音の悩みが完全になくなるわけではありません。
注文を取るときに言葉に詰まってしまうこともあります。
それでも、和歌子との他愛ない会話や、共に働く経験は、彼に人と関わることの喜びを教えてくれました。
淡い恋心とともに、きよしが社会との接点を見つけていく成長が描かれます。



アルバイトで、きよしは変われたのかな?



吃音は治りませんが、それを受け入れて人と関わろうとする大きな一歩を踏み出せたんですよ。
この出会いは、きよしが自分の悩みと向き合いながらも、前を向いて生きていこうとする強さを身につける重要なステップでした。
東京、故郷を離れる日の決意
物語の最後を飾るのは、きよしの旅立ちの物語です。
高校を卒業したきよしは、大学進学のために故郷を離れ、一人で東京へ向かうことを決意します。
家族に見送られ、電車に乗り込むきよしの胸には、これまでの12年間の思い出がよみがえります。
うまく話せずに泣いた日、孤独に震えた夜、そしてささやかな出会いがくれた温もり。
たくさんの経験を経て、彼は独り立ちする日を迎えました。
そして、ずっと心の中にいた親友「きよしこ」に、静かな別れを告げるのです。
物語の深みを増す主要な登場人物
この物語の魅力は、主人公きよしだけでなく、彼を取り巻く登場人物たちの存在にあります。
彼らは、きよしの成長に静かに、しかし確実に関わっています。
言葉にできない息子の苦悩を静かに見守る両親、何も聞かずに寄り添ってくれたどんぐりのおっちゃん、そしてきよしの世界を広げてくれた和歌子。
彼らとの出会いがなければ、きよしは孤独に押しつぶされていたかもしれません。
登場人物 | きよしとの関係 |
---|---|
きよしこ | きよしが作り出した空想の友達、心の支え |
きよしのお父さん・お母さん | 息子の吃音に悩みながらも不器用な愛情で見守る |
どんぐりのおっちゃん | 言葉を介さず心で通じ合えた恩人 |
相原和歌子 | 高校時代のアルバイト仲間、きよしに変化のきっかけを与える |
一人ひとりの登場人物とのエピソードが、きよしの人間的な深みを形作っており、物語全体に温かい彩りを添えています。
読書感想文に役立つ3つのテーマ
読書感想文で何を書けばよいか悩んでいるなら、この物語から見つけられるテーマはたくさんあります。
特に、主人公きよしの心の動きに注目すると、あなた自身の経験と重ね合わせやすい深いテーマが見つかります。
ここでは、感想文の軸となる3つのテーマを解説します。
これら3つのテーマを意識して読み進めることで、作品への理解が深まり、あなただけの感想文を書き上げることができるようになります。
テーマ1 言葉が持つ力と伝えられない想いの尊さ
この物語の根底に流れるのは、言葉が持つ不思議な力と、言葉にできない想いのもどかしさです。
主人公のきよしは吃音のため、たった一言の「ありがとう」や「ごめんなさい」が言えません。
そのせいで、自分の本当の気持ちとは裏腹に、相手を傷つけたり誤解されたりしてしまいます。
ソースによると、きよしはクリスマスプレゼントに欲しかった「魚雷戦ゲーム」の「ギョ」が言えず、違うおもちゃを受け取ってしまいます。
言葉にできないことで本当に欲しいものさえ手に入れられない悔しさは、読者の胸に強く突き刺さるのです。



自分の気持ちをうまく言葉にできないとき、すごくもどかしい気持ちになる…



その気持ち、痛いほどわかります。きよしの姿は、言葉の大切さを改めて教えてくれますよ。
きよしが言葉と格闘する姿を通して、私たちは普段何気なく使っている言葉がいかに大切で、そして言葉にできない想いがいかに尊いものであるかを考えさせられます。
この点は、読書感想文で深く掘り下げて書けるポイントです。
テーマ2 孤独との向き合い方と空想の友達の存在価値
父親の仕事で転校を繰り返すきよしは、常に孤独を感じています。
そんな彼の唯一の友達が、自分にしか見えない空想の存在「きよしこ」でした。
「きよしこ」は、きよしが言えない言葉を代弁し、彼の心を支えるかけがえのない存在です。
この物語では、きよしと「きよしこ」だけの世界が丁寧に描かれています。
誰にも理解されない孤独の中で、自分だけの味方がいることの心強さは、多くの読者が共感する部分です。
周りに馴染めないと感じた経験がある人なら、なおさらきよしの気持ちが理解できるでしょう。



新しいクラスで、まだ誰も話せる人がいないから、きよしの気持ちがわかるな…



孤独なとき、自分を支えてくれる存在は本当に大きいですよね。
孤独とどう向き合うか、そして自分を支えてくれる存在の価値について考えることは、読書感想文の重要なテーマになります。
「きよしこ」は本当に存在しないのか、それとも心の支えとして確かに「存在」するのか、あなたなりの考えをまとめてみるのも面白いです。
テーマ3 静かに見守る家族の不器用な愛情
物語では、きよしを囲む家族の姿も印象的に描かれています。
特に、息子の吃音に心を痛めながらも、どう接すればいいかわからず、不器用な愛情を注ぐ両親の姿は胸を打ちます。
書評によれば、きよしの両親は息子の吃音の原因が幼少期の体験にあると感じ、責任を抱えています。
言葉でうまく励ますことができなくても、ただ静かに息子のそばにいるその姿から、深い愛情が伝わってきます。



親の気持ちって、普段あまり考えたことがなかったかも…



この物語を読むと、家族のありがたさにも気づかされますね。
きよしが自分の殻に閉じこもってしまうときも、家族は決して彼を見放しません。
直接的な言葉がなくても伝わる愛情の形について考察することは、家族との関係を見つめ直すきっかけにもなり、感想文に深みを与えてくれます。
作品の基本情報、著者とNHKドラマ化の概要
『きよしこ』を深く理解するためには、作品そのものの情報だけでなく、作者である重松清さんの背景や、映像化された際のキャストを知ることが欠かせません。
作品が生まれた背景や、メディア展開によってどのように表現されたのかを見ていきましょう。
項目 | 概要 |
---|---|
書籍 | 2002年に新潮社から刊行された短編小説集 |
著者 | 『ビタミンF』で直木賞を受賞した重松清 |
ドラマ化 | 2021年にNHKで放送、主演は安田顕 |
書評 | ミュージシャンの高野寛らが自身の体験と重ねて評価 |
これらの情報から、『きよしこ』が作者の実体験を色濃く反映した作品であり、多くの人々の心を動かし、映像作品としても高く評価されていることがわかります。
新潮社から刊行された書籍の詳細
『きよしこ』は、2002年11月18日に新潮社から刊行された重松清さんの短編小説集です。
現在は新潮文庫からも発売されており、304ページの中に7つの短編が収録されています。
読書メーターでは9,989件もの登録数があり、多くの読者に読み継がれている作品です。
項目 | 内容 |
---|---|
著者 | 重松清 |
発売日(文庫) | 2005年06月26日 |
価格(文庫) | 693円(税込) |
シリーズ名 | 新潮文庫 |
ページ数 | 304ページ |
ISBN | 978-4-10-134917-6 |
発行形態 | 文庫、電子書籍 |



文庫本だと手軽に読めるかな?



はい、電子書籍版もあるので、スマートフォンでもすぐに読むことができますよ。
全7編で構成されており、主人公きよしの小学生から高校生までの成長を時系列で追体験できる構成になっています。
直木賞作家・重松清の経歴と代表作
作者の重松清(しげまつ きよし)さんは、1963年岡山県生まれの作家で、現代の家族が抱える問題をテーマにした作品を数多く発表しています。
出版社勤務を経て執筆活動に入り、1999年に『エイジ』で山本周五郎賞、2001年には『ビタミンF』で第124回直木賞を受賞しました。
受賞年 | 受賞作 | 賞の名称 |
---|---|---|
1999年 | ナイフ | 坪田譲治文学賞 |
1999年 | エイジ | 山本周五郎賞 |
2001年 | ビタミンF | 直木賞 |
2010年 | 十字架 | 吉川英治文学賞 |
2014年 | ゼツメツ少年 | 毎日出版文化賞 |
『とんび』や『流星ワゴン』など、テレビドラマ化された作品も多く、世代を問わず多くの読者から支持されています。
安田顕主演、2021年放送のNHKドラマ版キャスト
『きよしこ』は2021年3月20日にNHK総合の土曜ドラマ枠でテレビドラマ化され、俳優の安田顕さんが大人になった主人公・白石清を演じました。
放送時間は21:00から22:13までの73分間で、自身の少年時代を小説として書き上げる形で物語が進んでいきます。
清の担当編集者役として、timelesz(旧Sexy Zone)の菊池風磨さんが出演したことも話題を集めました。
役名 | 俳優名 |
---|---|
重松清(白石清) | 安田顕 |
野村幹人(清の担当編集者) | 菊池風磨(timelesz) |
白石早織(清の妻) | 西田尚美 |
白石曜子(清の母) | 貫地谷しほり |
白石賢一(清の父) | 眞島秀和 |
どんぐりのおっちゃん | 千原せいじ |
清(小学校低学年時) | 鳥越壮真 |
清(小学校5年時) | 横山歩 |
少年時代のきよしを複数の子役が演じ分けることで、心の成長が繊細に表現されています。
ミュージシャン・高野寛らによる書評
この作品は著名人からも高く評価されており、特にミュージシャンの高野寛さんは自身の転校経験と重ね合わせた書評を寄せています。
高野さんは、「転校生にしかわからない孤独感が微細に描かれている」と述べ、物語のリアリティこそが一番の強さだと語っています。
重松清『きよしこ』
https://www.shinchosha.co.jp/book/134917/
公務員だった親の仕事の都合で、幼稚園で一度、小学校で二度、中学校で一度転校した。生まれた街の記憶はない。同じ街に住めるのは大体3~4年間。成人式を迎えても、どの街の式に出席したらいいのかわからなかった。結局、大学の学生寮のコタツで一人でやり過ごした。
転校経験のない同級生から何度も、「一度でいいから転校してみたいな」と言われたことがある。映画などに描かれる転校生は、しばしばミステリアスなヒーローで、羨ましがられる理由も分かる。でも実在する普通の転校生は、地道にハードな状況と戦わなければならないのだ。
重松さんの自伝的小説とされている『きよしこ』には、想い出を切断されてしまうような、転校生にしかわからない孤独感が微細に描かれている。主人公・きよしは吃音が克服できずにいる。スポーツは得意だが、話すことが苦手で、転校する度に友達づくりに悩む。
『きよしこ』の心理描写は、転校経験者にはとてもリアルで、忘れかけていたあの頃の痛みがチクチクと蘇る。でも読み終えると、根無し草のような自分のアイデンティティは今の自分になるために必要な過程だったんだと思わせてくれる。そして転校経験のない読者にも、きよしの苦しみと成長は切実に伝わるはず。そのリアリティこそが、この物語の一番の強さだ。
このように、同じような痛みを知る人々にとって、本作は過去の自分を肯定してくれるような温かい力を持っているのです。
よくある質問(FAQ)
- この物語は重松清さんの実話なのですか?
-
この物語は完全な実話ではありませんが、作者である重松清さん自身の少年時代の体験が色濃く反映されています。
重松さん自身も、父親の転勤で転校を繰り返し、吃音に悩んだ経験を持っています。
そのため、主人公の少年の感じる痛みや孤独の描写には、非常に強いリアリティがあります。
- 主人公の少年は、最後には吃音が治るのでしょうか?
-
物語の最後まで、主人公の吃音が完全に治ることはありません。
しかし、彼は自分の悩みを受け入れ、言葉に詰まりながらも人と関わろうとする強さを身につけていきます。
この物語は、障害を克服する話ではなく、悩みと共にどう生きていくかを描いている点が、多くの読者の感動を呼ぶのです。
- NHKドラマ版と原作の小説に違いはありますか?
-
大きな違いは、物語の視点です。
原作の小説が少年時代のきよしを主人公として時系列で進む短編集であるのに対し、NHKのドラマは、大人になった主人公(安田顕さん)が自身の過去を小説として執筆するという構成になっています。
これにより、過去を振り返る大人の視点が加わっているのがドラマ版の特徴となります。
- なぜ「泣ける」という感想が多いのですか?
-
言いたい言葉が伝えられないもどかしさや、それによって生じる家族とのすれ違いなど、主人公が経験する切ない場面が多く描かれているからです。
特に、感謝や謝罪の言葉を伝えられずに苦しむ主人公の姿に、自身の経験を重ねて感情移入する読者が少なくありません。
その苦しみを乗り越えようとする姿が、温かい感動を呼びます。
- 主人公を支える「きよしこ」とは、結局何だったのでしょうか?
-
「きよしこ」は、吃音が原因で孤独を感じていた主人公の少年が、心の中に作り出した空想の友達です。
現実世界ではうまく話せない彼にとって、唯一すらすらと言葉を交わせる大切な存在でした。
物語を通して、彼の心の成長を静かに見守る、もう一人の自分自身のような存在と言えます。
- 読書感想文では、どのようなテーマで書くのがおすすめですか?
-
「言葉の重み」というテーマがおすすめです。
主人公が「ありがとう」の一言を伝えられずに苦しむ場面などを通して、普段私たちが何気なく使っている言葉が持つ力や、想いを伝えることの難しさと大切さについて考察すると、深みのある読書感想文になります。
家族の愛情や孤独との向き合い方も良いテーマです。
まとめ
この記事では、重松清さんの小説『きよしこ』のあらすじや読書感想文に役立つテーマを解説しました。
この物語は、吃音に悩む少年が多くの出会いを経て成長していく12年間の軌跡を描いています。
- 主人公が吃音と向き合う12年間のあらすじ
- 読書感想文のヒントになる3つのテーマ
- 作者自身の体験から生まれた物語のリアリティ
- 安田顕さん主演でドラマ化された際のキャスト
もし、この物語に心を動かされたなら、ぜひ実際に本を手に取ってみてください。
主人公きよしの心の声に耳を澄ませることで、言葉にできない想いの尊さに気づく体験が待っています。