貫井徳郎さんの『微笑む人』は、犯人ではなく犯行の動機にこそ最大の謎がある衝撃的なミステリーです。
誰もが羨むエリート銀行員が妻子を殺害し、「本が増えて家が手狭になったから」という理解不能な動機を語る、不気味な物語が描かれます。

「後味が悪い」って聞くけど、どんな話なんだろう?ネタバレなしで知りたいな…



この記事では、結末に触れずに作品の魅力と感想を解説します
- ネタバレなしのあらすじと登場人物
- 「後味悪い」という評価の真相と読者の感想
- 松坂桃李さん主演のドラマ版と原作小説の違い
貫井徳郎『微笑む人』とはどのような小説か
貫井徳郎さんの『微笑む人』は、単なる犯人当てのミステリーではありません。
物語の最大の謎は「なぜ犯行に至ったのか」という理解不能な動機にあり、読者はその深淵を覗き込むことになります。
人間の常識が通用しない不気味な世界観に、あなたもきっと引き込まれるはずです。
人間の心の闇を描く衝撃のミステリー
この物語の核心は、エリート銀行員・仁藤俊実が「なぜ妻子を殺害したのか?」という不可解な謎です。
逮捕された彼が語った動機は、「本が増えて家が手狭になったから」という、常人には到底信じがたいものでした。



え、そんな理由で家族を殺すなんて信じられない…



その常識が通用しない不気味さが、この物語の魅力なんです
幸せな家庭で起きた凄惨な事件と、その裏にある異常な動機。
その真相を追う過程で、人間の心の奥底に潜む、底知れない闇に触れることになるでしょう。
「本当の幸せ」とは何かを問う重厚な物語
本作は事件の謎を追うだけでなく、「本当の幸せとは何か」という普遍的なテーマを読者に突きつけます。
主人公の仁藤は、社会的地位、美しい妻と娘、そして高級住宅地のマイホームという、誰もが理想とする幸福の象徴をすべて手に入れていた人物でした。
完璧な人生を歩んでいたはずの男が、なぜすべてを壊すような凶行に及んだのか。
物語を読み解くことで、目に見えるものだけが幸せではないという、現代社会の価値観を根底から揺さぶる問いに行き着きます。
読後に重い余韻が残る「イヤミス」という評価
この作品は、しばしば「イヤミス」と評されます。
イヤミスとは「読んだ後に嫌な気持ちになるミステリー」の略称で、後味の悪さを特徴とするジャンルです。
事件が解決しても爽快感はなく、むしろやるせなさや割り切れない感情が心に残るでしょう。



後味が悪いのは苦手だけど、ただ怖いだけじゃないのかな?



心を揺さぶられますが、それ以上に考えさせられることが多い物語ですよ
謎解きのスッキリ感を求める方よりも、物語の重い余韻に浸りながらじっくりと考えを巡らせたい方にこそ、手に取っていただきたい一冊です。
ネタバレなしのあらすじと主要登場人物
物語は、誰もが羨むようなエリート銀行員が愛する妻子を殺害するという、衝撃的な事件から幕を開けます。
最も不可解なのは、逮捕された夫が語る信じがたい犯行動機です。
登場人物 | 役割 | 特徴 |
---|---|---|
仁藤俊実 | 妻子を殺害した容疑者 | エリート銀行員、常に穏やかな笑みを浮かべる |
「私」 | 物語の語り手 | 小説家、事件の真相を取材する |
完璧に見えた男の仮面の裏には、一体何が隠されているのでしょうか。
この二人の登場人物を中心に、人間の心の闇へと迫っていきます。
エリート銀行員による妻子殺害事件の概要
高級住宅街で、幸せな家庭を築いていたはずのエリート銀行員・仁藤俊実が、自らの手で妻と娘の命を奪う事件が発生します。
社会的地位も家庭も、すべてを手にしていたはずの男が起こした常軌を逸した犯行は、世間を大きく騒がせました。
周囲からは「理想の家族」と見られていた仁藤家で、一体何があったのでしょうか。
完璧な幸福の裏に隠されていた歪みが、この物語の出発点となります。



なぜ、何不自由ない生活を送っていた人がそんな事件を?



その理解できない部分こそが、この物語最大の謎であり、読み手を引き込む魅力なのです。
この事件は単なる謎解きではなく、人間の心理の奥底に潜む不気味さを描き出しています。
不可解な動機を語る容疑者・仁藤俊実
本作の中心人物である仁藤俊実は、逮捕された後も常に穏やかな笑みを浮かべている、不気味な男として描かれます。
彼は取り調べに対し、妻子を殺害した動機を「本が増えて家が手狭になったから」と供述しました。
このあまりにも不可解で理解不能な動機は、捜査関係者や報道陣を混乱の渦に巻き込みます。
彼の浮かべる微笑みは、反省の念がないサイコパスの証なのでしょうか。
それとも、何か別の感情が隠されているのでしょうか。
仁藤俊実という人物の謎が、物語全体を支配しています。
事件の真相に迫る小説家の「私」
この物語は、仁藤が起こした事件に強く惹かれた小説家の「私」を語り手として進みます。
「私」は、この事件を題材にしたノンフィクションを書くため、仁藤の過去を知る人々への取材を開始します。
友人、同僚、そして親族。
彼らの口から語られる仁藤の人物像は、断片的でありながらも、次第に完璧な男のイメージの裏に隠された素顔を浮かび上がらせます。



取材を重ねることで、何が見えてくるんだろう?



様々な視点から語られる証言がパズルのピースのように組み合わさり、事件の意外な真相に繋がっていきます。
読者は「私」と同じ視点に立ち、一つひとつの証言に耳を傾けながら、事件の真相へと一歩ずつ近づいていくことになります。
「後味悪い」は本当か読者の感想と口コミ
本作に寄せられる「後味悪い」という評価は、決して間違いではありません。
しかし、それは物語の質が低いことを意味するのではなく、むしろ読者の心を強く揺さぶる力を持っている証だと言えます。
読後感がすっきりする作品を求めている方には、少し覚悟が必要かもしれません。
評価のポイント | ポジティブな意見 | ネガティブな意見 |
---|---|---|
人物の心理描写 | 登場人物の心の闇がリアルで引き込まれる | 誰にも共感できずつらい |
ストーリー展開 | 結末を知った時の衝撃が大きい | 救いがなく、やるせない気持ちになる |
読後感 | 人間の本質について深く考えさせられる | 数日間気分が落ち込んでしまう |
ここでは、実際に作品を読んだ方々の感想や口コミを、ネタバレに触れない範囲でご紹介します。
購入を検討する際の参考にしてください。
人間の心理描写への高い評価
この作品が多くの読者から評価されている理由の一つは、登場人物たちの巧みな心理描写にあります。
常人には理解しがたい行動の裏にある、人間の心の機微や底知れない闇を見事に描き出しています。
読書メーターでの感想・レビュー数は1354件を超えており、多くの読者がその世界に引き込まれていることがわかります。
特に、主人公・仁藤俊実の不可解な言動は、読者に強烈な印象を与えます。
項目 | 内容 |
---|---|
肯定的な口コミ① | 主人公の感情が理解できないのに、なぜか目が離せなくなる不思議な魅力がある |
肯定的な口コミ② | 完璧に見える人間の内面に潜む狂気が生々しく描かれていて、静かな恐怖を感じた |
肯定的な口コミ③ | 登場人物たちの会話の一つひとつが意味深で、最後まで緊張感が途切れない |



サイコパス的な話は少し苦手かも…



単なる恐怖だけでなく、なぜそうなったのかを深く考えさせる物語です
読者はページをめくるごとに、自分の中の常識や価値観を試されているような感覚に陥ります。
人間の心理に鋭く切り込んだ描写は、この物語の大きな魅力です。
タイトルの意味を知った時の衝撃
物語を最後まで読み終えたとき、多くの読者がタイトルの『微笑む人』という言葉の本当の意味に気づき、鳥肌が立つほどの衝撃を受けます。
序盤からキーワードとして登場する仁藤俊実の「微笑み」が、物語の進行とともに全く異なる意味合いを帯びてくる構成は見事です。
何気ないタイトルに込められた作者の意図が明らかになった瞬間、物語全体の印象ががらりと変わります。
項目 | 内容 |
---|---|
タイトルに関する口コミ① | 最後の1ページを閉じた瞬間、タイトルの意味が分かって全身が震えた |
タイトルに関する口コミ② | このタイトルは秀逸。物語のすべてがこの一言に集約されている |
タイトルに関する口コミ③ | 読み返すたびに「微笑み」が持つ意味合いが変わって見える奥深い作品 |
この巧みなタイトル回収は、本作が単なる謎解きミステリーではなく、文学作品としての深みを持っていることの証左です。
救いのない展開への様々な意見
この作品が「後味悪い」や「イヤミス(読んだ後に嫌な気持ちになるミステリー)」と評される最大の理由は、その救いのない物語の展開にあるといえます。
読後に爽快感や希望を感じたい方にとっては、重く、やるせない気持ちが残る読書体験になることは事実です。
そのため、読む人を選ぶ作品であることは間違いありません。
項目 | 内容 |
---|---|
注意を促す口コミ① | スッキリする結末やハッピーエンドを求める人には絶対におすすめできない |
注意を促す口コミ② | 読んだ後、数日間気分が引きずられてしまい、少し落ち込んでしまった |
注意を促す口コミ③ | 感情移入できる登場人物が誰一人おらず、終始つらい気持ちで読み進めた |



やっぱり気分が落ち込むのは嫌だな…



ですが、その重さこそが現実社会や人間の本質について考えるきっかけになります
このやるせなさや息苦しさこそが、現代社会が抱える問題や人間の本質的な闇を鋭く描き出している、と高く評価する声も数多く存在します。
松坂桃李主演のドラマ版と原作小説
『微笑む人』は2020年にテレビ朝日系列でスペシャルドラマとして映像化もされています。
原作の持つ不気味な空気感はそのままに、ドラマならではの脚色が加えられており、原作とドラマの違いを知ることが作品を二度楽しむための鍵になります。
項目 | 原作小説 | テレビドラマ |
---|---|---|
事件を追う人物 | 小説家の「私」 | 週刊誌記者の鴨井晶 |
メディア | 書籍(単行本・文庫など) | 2020年3月1日放送 |
主演 | — | 松坂桃李 |
物語の視点 | 内省的・心理的 | ジャーナリスティック・客観的 |
原作を読んでからドラマで答え合わせをするのも、ドラマを観てから原作で登場人物の細やかな心理描写を深く味わうのも、どちらも楽しめるでしょう。
2020年放送のスペシャルドラマ基本情報
テレビドラマ版は、2020年3月1日にテレビ朝日系列の「日曜プライム」枠で放送されました。
主演を松坂桃李さんが務めたことで、大きな注目を集めた作品です。
項目 | 詳細 |
---|---|
タイトル | ドラマスペシャル 微笑む人 |
放送日時 | 2020年3月1日 21:00 – 23:05 |
放送局 | テレビ朝日 |
主演 | 松坂桃李 |
脚本 | 秦建日子 |
原作の持つ人間の心の闇というテーマを、約2時間のドラマで見事に描ききっています。
主演・松坂桃李の不気味な怪演
ドラマ版『微笑む人』の魅力は、なんといっても主演・松坂桃李さんの演技にあります。
妻子を殺害したにもかかわらず、常に穏やかな微笑みを浮かべる主人公・仁藤俊実の得体の知れない不気味さを見事に表現し、多くの視聴者に衝撃を与えました。



松坂桃李さんの演技、そんなにすごかったの?



原作ファンも納得するほどの見事な怪演でした
その完璧な演技は、仁藤というキャラクターがただのサイコパスではない、複雑な内面を抱えていることを観る者に強く印象づけます。
原作との最大の違いである事件を追う人物設定
原作とドラマ版における最も大きな違いは、事件の真相に迫る人物の設定です。
原作では小説家である「私」が語り手ですが、ドラマでは尾野真千子さん演じる週刊誌記者の鴨井晶というオリジナルキャラクターに変更されています。
この変更により、原作が仁藤の内面や関係者の証言から静かに真相へ迫るのに対し、ドラマ版は1つの事件を記者の視点から追うことで、よりサスペンス色の濃いエンターテインメント作品としての側面が強くなりました。
物語の骨格は同じでも、視点が変わることで全く異なる印象を受けるのです。
尾野真千子など主要キャストの紹介
ドラマ版では、主人公の仁藤を取り巻く登場人物を実力派の俳優陣が固めています。
特に物語の鍵を握る週刊誌記者・鴨井晶を演じた尾野真千子さんの存在は、ドラマ版の魅力を大きく引き上げています。
役名 | 俳優名 | 役柄 |
---|---|---|
仁藤俊実 | 松坂桃李 | 妻子を殺害したエリート銀行員 |
鴨井晶 | 尾野真千子 | 事件の真相を追う週刊誌記者 |
井上肇 | 生瀬勝久 | 鴨井が所属する週刊誌の編集長 |
彼らの確かな演技力が、この異常な事件に説得力と深みを与えています。
単行本・文庫・オーディオブックの書籍情報
原作小説『微笑む人』は、実業之日本社から出版されています。
複数の形態で発行されているため、自分の読書スタイルに合わせて選べるのが嬉しいポイントです。
種類 | 出版社 | 発売日 |
---|---|---|
単行本 | 実業之日本社 | 2012年8月18日 |
文庫本 | 実業之日本社文庫 | 2015年10月2日 |
オーディオブック | Audible Studios | — |
まずは手に取りやすい文庫版から、この衝撃的な物語の世界に触れてみることをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
- この小説は実話や実際の事件がモデルになっているのですか?
-
この物語はフィクションであり、特定の事件をモデルにしたものではありません。
しかし、エリート銀行員が引き起こす事件という設定は、現代社会が抱える問題や人間の心の闇をリアルに描き出しており、読者に強い現実感と恐怖を与えます。
著者である貫井徳郎さんの創作による、練り上げられたミステリーです。
- 主人公の仁藤俊実はサイコパスなのでしょうか?
-
仁藤俊実がサイコパスに該当するかどうかは、この小説における大きな謎の一つであり、読者の解釈に委ねられています。
物語を読み進めることで、彼の行動の裏にある複雑な心理が少しずつ明らかになっていきます。
彼を単なる異常者として片付けるのではなく、その内面に何が隠されているのかを探ることが、本作の読書の醍醐味となります。
- ドラマと原作小説では結末の真相が違うのですか?
-
テレビ朝日で放送された松坂桃李さん主演のドラマ版と原作小説では、物語の結末に至るまでの過程や見せ方に違いがあります。
特に、事件を追う登場人物が異なるため、真相の明かされ方や受け取る印象も変わってきます。
原作を読んでからドラマを見る、あるいはその逆でも、両者の違いを比較しながら二重に楽しむことが可能です。
- 読書にあまり慣れていなくても最後まで読めますか?
-
はい、問題なく読めます。
文庫版のページ数は300ページ弱と、ミステリー小説としては標準的な長さです。
文章も平易で読みやすく、次々と展開する謎が読者を飽きさせません。
理解不能な動機という大きな謎に引き込まれ、普段あまり本を読まない方でも最後まで一気に読み進めることができるでしょう。
- この小説の犯人や動機はすぐにわかりますか?
-
このミステリーは、誰が犯人かを探す物語ではありません。
犯人は物語の冒頭で明示されます。
この小説の本当の謎は、犯行に至った動機は何か、という点にあります。
なぜ完璧な人生を送っていたはずの男が事件を起こしたのか、その真相が徐々に明らかになる過程こそが、この物語の最大の魅力です。
- 「後味悪い」という感想が多いですが、どんな人におすすめですか?
-
確かに、読後に重い余韻が残るため「後味悪い」という感想やレビューは多いです。
しかし、それは人間の心理や社会が持つ歪みを深く考えさせられる、重厚なテーマを扱っている証拠でもあります。
謎が解けてスッキリする物語よりも、読書の後にじっくりと考えを巡らせたい方や、人間の心の奥深くを覗いてみたいという方にこそ、おすすめしたい一冊です。
まとめ
貫井徳郎さんの『微笑む人』は、妻子を殺害したエリート銀行員が語る不可解な供述の裏に隠された、犯行の動機こそが最大の謎である衝撃的なミステリーです。
単なる謎解きではなく、人間の心の闇と「本当の幸せとは何か」という重いテーマを読者に問いかけます。
- 理解不能な動機に隠された人間の心の闇
- 読後に重い余韻を残す「イヤミス」としての評価
- 物語の最後にわかるタイトルの本当の意味
- 松坂桃李さん主演のドラマ版との違い
この物語の結末は、あなたの常識を根底から揺さぶります。
まずは手に取りやすい文庫版で、その得体の知れない恐怖と深い問いかけを体験してみてください。