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【ネタバレなし】青崎有吾『早朝始発の殺風景』の感想|あらすじと伏線を徹底レビュー

青崎有吾さんの『早朝始発の殺風景』は、ありふれた日常に潜む謎と高校生たちの気まずい空気を描いた人気の青春ミステリーです。

何気ない会話の中に隠された伏線が、最後には一つの真実に繋がっていく構成は、多くの読者を魅了しています。

この記事では、『早朝始発の殺風景』のあらすじや魅力、読者の感想からドラマなどのメディア展開まで、ネタバレを一切せずに徹底解説します。

ネタバレなしで、どんな話か知りたいな

管理人

この記事を読めば、購入前に知りたい魅力がすべてわかります

目次

『早朝始発の殺風景』の概要と魅力

『早朝始発の殺風景』は、ありふれた日常に潜む小さな謎と、高校生たちの気まずい空気を描いた青春ミステリーです。

何気ない会話の中に隠された伏線が、最後には一つの真実に繋がっていく構成が、この作品最大の魅力と言えます。

これから、この小説がなぜ多くの読者を惹きつけるのか、その概要と魅力を4つのポイントに分けて解説します。

著者・青崎有吾が描く日常の謎

本書のジャンルである「日常の謎」とは、殺人事件のような大きな出来事ではなく、身の回りで起こる些細な疑問や謎を解き明かしていくミステリーの一分野です。

著者の青崎有吾さんは、2012年に『体育館の殺人』で第22回鮎川哲也賞を受賞してデビューして以来、このジャンルで数々の作品を生み出してきました。

ミステリーって聞くと難しそう…

管理人

大丈夫、事件が起きなくても会話だけで楽しめるのが「日常の謎」の魅力です

青崎有吾さんの手にかかれば、高校生たちの気まずい会話さえも、読者を引き込む上質なミステリーに変わるのです。

5つの短編とエピローグで繋がる物語構成

この小説は、それぞれ独立した5つの物語で構成される「連作短編集」という形式を取っています。

1話完結で読みやすいうえに、全ての物語が書き下ろしのエピローグで繋がるという仕掛けが施されています。

各短編は、始発電車やファミレスといった限定された空間だけで物語が進行するのも特徴です。

各話に散りばめられた伏線が、最後のエピローグで見事に回収される爽快感は格別です。

一度読み終えた後、必ずもう一度最初から読み返したくなります。

第73回日本推理作家協会賞候補の実力

日本推理作家協会賞とは、その年に発表された最も優れたミステリー作品に贈られる、日本で最も権威ある文学賞の一つです。

『早朝始発の殺風景』は、2020年に開催された第73回日本推理作家協会賞の「長編および連作短編集部門」で候補作に選ばれました。

賞の候補ってことは、やっぱり面白いってこと?

管理人

その通り、多くのミステリーファンや評論家から高く評価された証拠です

受賞には至らなかったものの、候補作に選出された事実が、この作品の文学的な価値と面白さの高さを証明しています。

集英社から刊行の単行本と文庫版

本書は、人気漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』などで知られる大手出版社、集英社から刊行されています。

読者のスタイルに合わせて選べるように、単行本と文庫版の2種類が発売されており、どちらも全国の書店やオンラインストアで手軽に入手可能です。

まだ読んだことがない方は、まずは持ち運びに便利な文庫版から手に取ってみるのがおすすめです。

ドラマや漫画から興味を持った方も、原作小説を読むことで新たな発見があります。

ネタバレなしで解説する5つの物語のあらすじ

この小説は、それぞれ異なる高校生たちのワンシーンを切り取った5つの短編と、それら全てを繋ぐ書き下ろしのエピローグで構成されています。

一見すると無関係に見える物語に散りばめられた小さな謎や伏線が、最後に一つの線として繋がる構成は見事です。

ここでは、各物語の魅力的なあらすじを紹介します。

始発電車の男女の探り合い「早朝始発の殺風景」

物語の幕開けは、タイトルの通り早朝の始発電車です。

偶然乗り合わせた同じクラスの殺風景(さっぷうけい)と加藤木(かとうぎ)。

お互いに口数少なく、なぜこんな時間に電車に乗っているのか、腹の底を探り合うような気まずい空気が車内に流れます。

気まずい空気、わかる…!どんな会話なんだろう?

管理人

セリフの一つ一つに隠された意図を読み解くのが楽しいですよ。

ぎこちない会話の応酬から、相手の目的を推理していく緊張感がたまらない一編です。

読んでいるこちらも、息をのんで2人のやり取りを見守ることになります。

ファミレスでの女子高生たちの思惑「メロンソーダ・ファクトリー」

放課後のファミリーレストランに集まった女子高生3人組。

表向きの議題はクラスTシャツのデザイン決めですが、その会話の裏ではそれぞれの本音と建前が渦巻いています

仲が良さそうに見える彼女たちの間には、繊細で複雑な力関係が存在するのです。

女子同士のこういう会話、リアルでちょっと怖いかも…

管理人

些細な言葉の裏にある本心に気づいた時、ゾクッとします。

何気ない言葉の端々から感じられる、女子グループ特有のピリピリとした空気感が巧みに描かれています。

些細な一言が、彼女たちの関係性を大きく揺るがします。

観覧車という密室劇「夢の国には観覧車がない」

舞台は遊園地の観覧車という、約15分間だけの逃げ場のない密室空間です。

そこに乗り合わせたのは、どこか気まずい雰囲気の男子高校生2人。

なぜ彼らは一緒に観覧車に乗っているのでしょうか。

沈黙と短い言葉が、2人の間の緊張感を高めていきます。

男子2人で観覧車って、どんな状況!?

管理人

気まずさの理由がわかると、切ない気持ちになります。

ゆっくりと頂上へ向かうゴンドラの中で、彼らの関係性は少しずつ変化を見せます。

限られた時間で描かれる、もどかしくも切ない青春の一ページです。

公園で再会した兄妹の口論「捨て猫と兄妹喧嘩」

公園で偶然再会した兄と妹。

2人はそこで見つけた捨て猫をどうするかで口論を始めます。

しかし、その喧嘩は単なる猫の問題だけではありません。

会話が進むにつれて、2人がそれぞれ抱えている家族や過去に対する複雑な思いが浮き彫りになっていきます。

兄妹喧嘩にミステリー要素があるの?

管理人

喧嘩の本当の理由、それは猫だけではないんです。

これまでの物語とは少し趣が異なり、よりパーソナルな問題に踏み込んだ一編です。

兄妹ならではの遠慮のないやり取りの中に、隠された真実が見え隠れします。

卒業式後の同級生宅への訪問「三月四日、午後二時半の密室」

物語の舞台は、高校の卒業式当日。

クラス委員の女子生徒は、式を欠席した同級生の男子生徒の家を訪ねます。

ドア越しに交わされる短い会話と、彼の部屋に残された物だけを手がかりに、彼女は彼が式に来なかった理由を推理します

卒業式に来ないなんて、よっぽどの理由がありそう…

管理人

部屋に残された手がかりから真実を見つけ出す、安楽椅子探偵のような面白さがあります。

不在の相手を推理するというユニークな構成で、読者の想像力を掻き立てる物語です。

彼女がたどり着いた真実とは、一体どのようなものなのでしょうか。

全ての伏線が繋がる圧巻のエピローグ

これら5つの物語は、それぞれ独立した短編として楽しむことができます。

しかし、この作品の真骨頂は、全ての物語を読んだ後に待ち受ける書き下ろしのエピローグにあります。

バラバラだと思っていた物語や登場人物たちが、予想もしない形で繋がり、見事な伏線回収が行われるのです。

バラバラの話だと思ってたのに、全部繋がるの!?

管理人

この驚きと感動は、ぜひご自身で体験してください。

多くの読者が「エピローグを読んで鳥肌が立った」「もう一度最初から読み返したくなった」と絶賛する、鮮やかな結末が用意されています。

読了後には、タイトルの「早朝始発の殺風景」という言葉が、全く違う意味を持って心に響くはずです。

読者の感想やレビューから見る作品の評判

この作品が多くの読者から支持される理由は、高校生たちのリアルな会話劇、登場人物たちの繊細な心理描写、そしてミステリーとして見事な物語構成にあります。

読後の満足度がとても高い一冊です。

実際に本を読んだ人たちが特に魅力を感じたポイントを3つに絞ってご紹介します。

高校生たちのリアルで気まずい会話劇

本作の大きな特徴は、物語のほとんどが会話で進行する「会話劇」である点です。

会話劇とは、登場人物たちの対話を中心に物語が展開していく手法を指します。

始発電車や放課後のファミレスといったありふれた日常空間で、わずか数十分の出来事がほぼリアルタイムで描かれていきます。

他愛のないおしゃべりに見えて、その裏ではお互いの腹の内を探り合うような、高校生特有の気まずい空気が巧みに表現されているのです。

会話だけで物語が進むのって、退屈にならないかな?

管理人

いいえ、その逆です。言葉の端々に隠された感情や謎が、最高のスパイスになっていますよ。

読者はまるでその場に居合わせたかのように、ページをめくる手が止まらなくなるほどの緊張感と臨場感を味わえます。

登場人物たちの繊細な関係性の変化

ミステリーとしての面白さはもちろんですが、会話を通じて変化していく登場人物たちの距離感も、この作品の大きな魅力です。

最初はどこかぎこちなく、互いに壁を作っていた登場人物たちが、一つの謎を共有することで少しだけ心を通わせる瞬間は、青春小説としても見事です。

その微細な心の動きが、セリフや仕草から丁寧に描き出されています。

不器用ながらも必死に他者と関わろうとする彼らの姿に、自分の学生時代を重ね合わせて共感する読者が後を絶ちません。

ミステリー好きを唸らせる構成の巧みさ

本作は5つの短編とエピローグで構成される「連作短編集」という形式をとっており、この仕掛けこそがミステリーファンを唸らせる最大のポイントです。

一見するとそれぞれ独立した物語に思える5つのエピソードには、巧妙な伏線がいくつも散りばめられています

そして、書き下ろしのエピローグで、バラバラだったピースが一つに繋がり、全ての謎が解き明かされます。

伏線回収がすごいって聞くけど、難しくない?

管理人

大丈夫です。読み終わった後、きっともう一度最初から読み返したくなる感動が待っています。

この「してやられた!」という感覚と、全てが繋がった時の爽快感が、多くのミステリーファンから絶大な支持を得ている理由なのです。

ドラマからオーディオブックまで広がるメディア展開

『早朝始発の殺風景』は小説だけでなく、様々な形で楽しめる点が大きな魅力です。

特に、WOWOWで放送された連続ドラマは原作の世界観を大切にしながらも、新たな視点を加えています。

この小説の人気を受けて、映像化やコミカライズ、さらには音声コンテンツまで幅広く展開されています。

それぞれのメディアの違いを知ることで、作品をより深く味わえます。

どのメディアから入っても、『早朝始発の殺風景』の持つ独特の空気感と面白さを体験できます。

自分のライフスタイルに合った楽しみ方を見つけるのもおすすめです。

山田杏奈・奥平大兼主演のWOWOW連続ドラマ

WOWOWで放送された連続ドラマは、原作の表題作「早朝始-発の殺風景」とエピローグにしか登場しない殺風景と加藤木という2人の登場人物が、全話を通して物語に関わるオリジナル構成で制作されました。

2022年11月から全6話で放送され、主演は殺風景役を山田杏奈さん、加藤木役を奥平大兼さんが務めました。

原作の雰囲気を再現しつつ、ドラマならではの連続性を加えたことで、原作ファンも新鮮な気持ちで楽しめる内容になっています。

原作とドラマって、どう違うの?

管理人

殺風景と加藤木が全話に登場する点が最大の違いです

原作の各短編が、殺風景と加藤木の視点を通して一本の大きな物語として再構築されています。

小説を読んだ後にドラマを観ると、また違った発見があるはずです。

山田シロ彦によるコミカライズ版

小説の繊細な空気感を美しい作画で表現したのが、山田シロ彦さんによるコミカライズ版です。

集英社のWeb漫画サイト「となりのヤングジャンプ」にて、2022年7月から11月まで連載されました。

単行本は全2巻(上下巻)で完結しており、小説の登場人物たちの表情や情景が視覚的に描かれることで、感情移入しやすくなっています。

活字だけでは想像しきれなかったキャラクターたちのイメージが、漫画を読むことでより鮮明になります。

原作のファンはもちろん、活字が少し苦手という方にもおすすめです。

人気声優が担当した朗読版とオーディオブック

「耳で読む」という新しい読書体験を提供するのが、人気声優が担当した朗読版とオーディオブックです。

集英社の文庫フェア「ナツイチ2025」の企画では、短編「夢の国には観覧車がない」が小林千晃さんと土屋神葉さんによって朗読されました。

さらに、2025年9月からは安田陸矢さん、井料愛良さんらが担当するオーディオブック版も配信されています。

通学中に聴きたいけど、どこで聴ける?

管理人

audiobook.jpやAudibleで配信されています

通勤・通学中や家事をしながらでも物語を楽しめるのが音声コンテンツの利点です。

声優たちの演技によって、会話劇の緊張感や繊細な感情の動きがより一層引き立ちます。

よくある質問(FAQ)

ミステリー小説をあまり読まないのですが、初心者でも楽しめますか?

はい、ミステリー初心者の方にこそおすすめしたい一冊です。

この物語は殺人事件などが起きない「日常の謎」というジャンルで、高校生たちのリアルな会話劇が中心となります。

人間関係の機微を描いた青春小説として、どなたでも感情移入しながら楽しめます。

1話あたり、だいたいどのくらいの時間で読めますか?

各短編は、30分から40分ほどで読み切れる長さになっています。

物語は1話で完結する短編集の形式なので、通学中の電車や少しの休憩時間など、すきま時間を使って自分のペースで読み進めるのに最適です。

WOWOWで放送されたドラマ版との違いは何ですか?

一番大きな違いは、物語の視点です。

早朝始発の殺風景に登場する殺風景と加藤木は、ドラマでは全話を通して物語に関わる中心人物として描かれます。

一方、原作の小説では各短編で主人公が異なり、様々な登場人物の視点から物語を体験できます。

この本が気に入ったら、次に読むべき青崎有吾さんの作品を教えてください

同じように高校生が主人公の日常ミステリーがお好きでしたら、著者のデビュー作『体育館の殺人』から始まる〈裏染天馬〉シリーズがおすすめです。

ミステリーとしての満足度が高く、本作の雰囲気が好きな方ならきっと夢中になります。

単行本と文庫版では、どちらを選べば良いですか?

気軽に持ち運んで読みたい方には、コンパクトで価格も手頃な早朝始発の殺風景の文庫版がぴったりです。

一方で、作品を本棚に飾りたい方や、ハードカバーのしっかりした質感を好む方には単行本が適しています。

物語の内容に違いはありません。

この物語の続編は出版されていますか?

2024年現在、公式に発表されている続編はありません。

物語は書き下ろしのエピローグで美しく完結していますので、この一冊で満足感のある読書体験が得られます。

登場人物たちのその後を想像するのも、この作品の楽しみ方の一つです。

まとめ

『早朝始発の殺風景』は、高校生たちの気まずい会話の中に隠された謎を描く、新感覚の青春ミステリーです。

バラバラに見えた5つの物語が、最後のエピローグですべて繋がる構成は、多くの読者を唸らせています。

この記事で作品の魅力が伝わったなら、次はぜひご自身で小説を手に取り、伏線が回収される爽快感を味わってみてください。

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