【ネタバレなし】住野よるのこの気持ちもいつか忘れるあらすじ｜新潮社文庫の感想と3つの魅力

住野よる著『この気持ちもいつか忘れる』は、変わり映えのしない日々に飽きている主人公と異世界の少女との交流を描いた、退屈さえも肯定してくれる物語です。

この記事では、新潮社文庫から発売された本作のあらすじやTHE BACK HORNとのコラボ背景、そして物語を彩る3つの魅力をネタバレなしで紹介します。

住野よる描く『この気持ちもいつか忘れる』概要

『この気持ちもいつか忘れる』は、退屈な日常と非日常的な異世界が交差する不思議な体験を、読者の心に深く刻み込むエンターテインメント小説です。

この作品は複数の形態で出版されており、それぞれの違いをまとめた比較表は以下の通りです。

形態	発売日	特徴
先行限定版	2020年9月16日	5曲入りCDが付属した特別仕様
単行本通常版	2020年10月19日	書籍のみで物語を楽しめる
新潮社文庫版	2023年6月26日	持ち運びやすく手頃な価格

住野よる作品の中でも特に実験的でありながら、誰の胸にもある普遍的な感情を揺さぶる物語と言えます。

新潮社文庫出版情報

現在、多くの書店で平積みされているのは、新潮社文庫から出版されている文庫版です。

2023年6月26日に発売されたこの文庫版は、価格が税別900円と、単行本よりも手に取りやすく、通勤や通学のカバンに入れて持ち歩くのに適しています。

文庫版の基本情報は以下の通りです。

項目	詳細
レーベル	新潮文庫
ページ数	369ページ
ISBNコード	978-4-10-128637-7
解説	特別な解説はなし

文庫本という親しみやすい形で、カヤとチカの切なくも温かい交流をいつでもどこでも味わうことができます。

THE BACK HORNコラボ制作背景

本作は、著者が敬愛してやまないロックバンド「THE BACK HORN」と、構想の初期段階から綿密な打ち合わせを重ねて作り上げた共同プロジェクトです。

小説の執筆と楽曲の制作が同時進行で行われるという異例のスタイルで、双方が相互に影響を与え合いながら完成しました。

このコラボレーションの特徴は以下の通りです。

要素	内容
プロセス	互いの創作物を確認しながら制作を進行
楽曲参加	収録曲『輪郭』の作詞を住野よるが担当
一体感	歌詞と物語が深くリンクする構成
メディア	書籍と音楽CDをセットにした限定版を展開

文字から音が聞こえ、音から情景が浮かぶという、小説と音楽の境界線を取り払った新しい芸術体験を提供しています。

恋愛小説超えた独自ジャンル

この物語は「ボーイミーツガール」の体裁をとっていますが、単純な恋愛小説の枠には収まらない複合的なテーマを内包しています。

3つの異なる要素が絡み合い、読者は「退屈」という感情の正体や、自分自身の生き方を見つめ直す時間を持つことになります。

物語を構成する主な要素は以下の通りです。

ジャンル要素	描写内容
青春小説	日常に飽き足らない若者の鬱屈と焦燥
ファンタジー	目と爪だけが光る異世界の住人との交流
人間ドラマ	友人や恋人との対話を通じた自己受容

ありきたりなハッピーエンドや悲恋の物語ではなく、読み手の心の在り方によって感じ方が変わる、深みのある作品世界が広がっています。

ネタバレ配慮あらすじ登場人物紹介

この物語で最も特筆すべき点は、退屈な現実世界と幻想的な異世界が深夜のバス停で静かに交差するという設定の妙です。

派手な魔法や戦闘があるわけではなく、異なる常識を持つ二人が言葉を交わすだけの空間が、読む人の心に深く染み渡ります。

物語を彩る主要な登場人物たちを整理しました。

名前	呼び名	特徴
鈴木香弥	カヤ	日常に退屈を感じている男子高校生
チカ	チカ	異世界から来た不思議な少女
須能沙苗	斎藤	他者と距離を置くカヤの同級生
会沢志穂梨	田中	カヤが適当に分類していたクラスメイト

登場人物たちの背景をあらかじめ把握しておくことで、彼らの交わす会話の端々に込められた感情をより深く理解できます。

退屈日常生きる主人公カヤ

主人公の鈴木香弥（カヤ）は、周囲の人間や出来事を見下しながらも、自分自身の現状に飽き飽きしている男子高校生です。

彼は10代という多感な時期にありながら、人生をどこか冷めた目で見ている点が、30代前後の大人がふと感じる虚無感と重なります。

社会に出てある程度の仕事をこなせるようになった私たちが抱く、「このままでいいのか」という焦燥感を彼もまた持っています。

カヤの性格的特徴
日常に刺激がなく退屈している
周囲のクラスメイトに関心がない
自分だけは特別でありたいと願う

物語が進むにつれて、彼の抱える退屈がどのように変化していくのかが見どころです。

深夜バス停出会う異世界少女チカ

もう一人の主人公であるチカは、カヤたちの住む世界とは異なる物理法則で動く異世界から来た少女です。

彼女の世界では戦争が起きており、避難所となっている場所がカヤの世界の使われなくなったバス停とリンクしているという設定が物語を動かします。

深夜の静寂の中でだけ繋がる二つの世界は、切なくも美しい舞台装置として機能します。

チカの世界の設定
カヤの世界とは異なる文化を持つ
恋愛という概念が存在しない
常に戦争の危険と隣り合わせ

彼女との対話を通じて、カヤの世界の見え方がどう変わるのかに注目してください。

目爪だけ光る不思議存在

チカの姿はカヤの目には完全には見えず、唯一目と爪だけが光って認識できるという特殊な描写がなされています。

この視覚情報は物語全体を通して重要な意味を持ち、文章だけで表現される6つの光るパーツ（両目と両手の爪、両足の爪）が読者の想像力を強く刺激します。

姿が見えないからこそ、声や気配、そして光の動きだけで彼女の感情を読み取ろうとするカヤの必死さが伝わります。

チカの身体的描写
暗闇に浮かぶ瞳の輝き
手を振る際の爪の軌跡
触れることのできない距離感

儚い光の描写から、彼女の美しさや存在感を確かに感じ取れるはずです。

須能沙苗会沢志穂梨関係性

物語に現実的な重みを与えるのは、カヤが「斎藤」と呼ぶ須能沙苗と「田中」と呼ぶ会沢志穂梨という同級生たちです。

カヤはクラスメイトを適当なあだ名で呼ぶ癖がありますが、この2人との関わり方が高校時代と大人になってからのパートで大きく意味を変えていきます。

特に須能沙苗は、カヤの内面に深く踏み込む重要な役割を担っています。

2人のサブキャラクター	役割
須能沙苗	カヤの理解者であり衝突する相手
会沢志穂梨	カヤの世界認識を変えるきっかけ

彼女たちとの関係性の変化は、カヤが大人になる過程そのものを表しています。

読者心惹きつける作品3つの魅力

この物語が多くの読者を惹きつけてやまない理由は、単なる恋愛小説という枠組みを超え、私たちの心の奥底にある孤独や退屈を肯定してくれる点にあります。

住野よるという作家が描く繊細な心理描写と、THE BACK HORNの音楽が融合することで、ページをめくるたびに自分の心と向き合う濃密な時間を過ごせます。

作品の持つ多面的な魅力を整理しました。

魅力の要素	特徴	ベネフィット
登場人物への共感	現代的な虚無感の描写	自分の抱える悩みが肯定される
音楽との融合	THE BACK HORNとのコラボ	五感で楽しむ立体的な読書体験
読後感	静かな希望と余韻	見慣れた日常が愛おしくなる

主要な3つの要素に加え、客観的な評価や具体的な楽しみ方について掘り下げていきます。

退屈抱える若者心情共感

ここで言う「共感」とは、物語の中だけで完結する感情移入ではなく、読者自身の現実の悩みとリンクする痛みのことです。

主人公のカヤは、高校生でありながら人生をどこか諦めており、日々の繰り返しに空虚な「退屈」を感じています。

この感覚は、社会に出て仕事に慣れ、ふと立ち止まった時に「自分は何のために生きているのか」と自問する20代、30代の私たちの心情と痛いほど重なります。

物語が進むにつれて、カヤはその退屈な日常こそが、実はかけがえのないものであることに気づいていきます。

退屈を否定するのではなく、その中にある小さな光を見つけ出そうとする姿勢は、乾いた毎日に潤いを与えてくれるはずです。

小説音楽リンクする臨場感

本作における「リンク」とは、単なるBGMとしての音楽ではなく、小説と楽曲が互いに影響を与え合いながら一つの世界を構築する相互補完の関係を指します。

ロックバンド「THE BACK HORN」と構想段階から意見交換を重ねて制作されており、文章から溢れ出る感情の揺らぎが、音楽によって物理的な振動を伴って伝わってきます。

特に、作中で重要な意味を持つ楽曲『ハナレバナレ』や『輪郭』を聴きながら読み進めると、文字だけでは表現しきれない疾走感や切なさが脳内に直接響きます。

CD付の限定版やストリーミングサービスを利用して、実際に曲を流しながら読む体験は、これまでの読書とは一線を画すものです。

視覚と聴覚の両方で物語を感じることで、チカの存在やカヤの焦燥がよりリアルな「輪郭」を持って迫ってきます。

読後残る静かな希望余韻

この作品が与える「余韻」は、劇的な感動で涙を流してスッキリする類のものではなく、読み終えた後の景色が少しだけ違って見える感覚です。

「この気持ちもいつか忘れる」というタイトルが持つ本当の意味を理解した時、胸の奥にじんわりと温かいものが広がります。

決してハッピーエンド一辺倒ではないかもしれませんが、喪失や別れを含んだ上で、それでも明日を生きていこうと思える静かな強さを受け取れます。

物語の結末を知った後、ふとした瞬間に思い出す言葉や場面がいくつもあります。

それらは、忙しい日常の中で忘れかけていた大切な感情を呼び覚ますスイッチの役割を果たしてくれます。

書店員熱い応援コメント

全国の書店員から寄せられたコメントは、この作品がプロの読み手たちをどれほど熱狂させたかを如実に物語っています。

以下に、特設サイトなどで公開されている熱いメッセージの一部をご紹介します。

文苑堂書店　富山豊田店
菓子涼子さん

なになになに？
爪と目しか見えない女の子!?
存在が斬新すぎます！　その女の子との出会いが毎日を“つまらない”と生きている男の子を変えていく……
その様子に感動しつつ、目が離せなかったです。
THE BACK HORNの曲を流しながら読むと、一気に物語の世界観に包まれました！

https://www.thebackhornsuminoyoru.com/

未来屋書店　高の原店
元尾和世さん

特別な人間ではない、だけど誰かの特別になりたい。
人を想う熱量の差は大きいほどせつない。
だけどこの熱量は誰にも負けない。
だから忘れるわけがない、かつてすごい熱量で誰かを何かを好きになったことがある人に、今その熱がある人に読んで欲しい。

https://www.thebackhornsuminoyoru.com/

宮脇書店　柴田店
渡辺啓市さん

人は1つの思い出を抱えて一生を生きていけるのか？　どんなにあの時光輝いた思い出も少しずつその光彩を弱め、“何か”はいつしか輪郭しか残らなくなる。悲しいけれど、だから人は前に進むことができるのだと思う。
しかし住野さんはうまいね。読み終えた時、無性にCDが聴きたくなった。

https://www.thebackhornsuminoyoru.com/

紀伊國屋書店　ららぽーと横浜店
千葉拓さん

「この気持ちもいつか忘れる」という言葉が物語の後半、深く胸に刺さる。住野よるが紡ぐ物語は恋愛小説でも青春小説でもない別の何ものかであるようで、不思議な強い吸引力をもっている。ミステリでもないのに、読み終えた直後にすぐ最初のページに戻り読み返してしまう。

https://www.thebackhornsuminoyoru.com/

萬松堂
吉岡彩佳さん

住野よるさんの書かれる登場人物は、ピュアでだからこその鋭さや残酷さを持っていて、いつもはっとさせられるような瞬間があります。
普段何気なく見過ごしてしまうものを改めて目の前に差し出される感覚です。
自分の内にあったはずの気持ちを忘れてしまうことへの怖れや罪悪感みたいなものは私自身にもなじみのある感情のように思えて胸が詰まりました。

https://www.thebackhornsuminoyoru.com/

丸善　丸広百貨店　東松山店
本郷綾子さん

叶わなかった夢の先でも、生きていける。道が途切れてしまったように見えても、まだ終わりじゃない。
自分だけが苦しんでいて、自分だけがいろいろなことを考えているのだと、傲慢でしかなかった制服のあの頃が浮かんだ。
あまりにも無垢で心を打ち砕く、青春そのもののような小説。

https://www.thebackhornsuminoyoru.com/

読書サイト投稿高評価傾向

作品の評価を測る指標の一つとして、読書管理サイトにおける具体的な数値を確認することは非常に有効です。

多くの読者が感想を残している事実は、それだけ物語について誰かと語り合いたくなる作品であることの証明と言えます。

項目	数値
本の登録数	1348
感想・レビュー数	324
Kindle版登録数	81
文庫版登録数	919

新潮社文庫として出版された後も登録数は伸び続けており、単行本発売から時間が経っても長く読み継がれています。

数字の裏側には、それぞれの読者が受け取った「忘れられない気持ち」が存在しているのです。

住野よるファン納得完成度

住野よる作品における「完成度」とは、読者の予想を良い意味で裏切り、心の柔らかい部分を鋭く突く作家性が発揮されているかどうかで決まります。

デビュー作『君の膵臓をたべたい』から一貫している、ピュアでありながらどこか残酷さを孕んだ人間関係の描写は、本作でも健在です。

特に、会話劇の中で見え隠れする登場人物たちの自意識やエゴは、読んでいる私たち自身の内面を見透かすような鋭さを持っています。

ファンが期待する「住野よるらしさ」を保ちつつ、音楽とのコラボレーションという新しい試みによって物語の強度は増しています。

カヤとチカ、そして斎藤や会沢志穂梨といったキャラクターたちが織りなす関係性は、これまでの作品以上に複雑で、だからこそ愛おしく感じられます。

独特世界観物語構成評価

この物語の舞台設定で特筆すべきは、日常と地続きにある異世界のリアリティです。

「深夜の使われなくなったバス停」という寂れた場所が、目と爪だけが光る少女チカとの接点になります。

ファンタジー要素を含みながらも、決して絵空事にならず、カヤの抱える現実の孤独や焦燥を浮き彫りにする装置として機能しています。

異世界と現実世界、過去と現在、小説と音楽。

複数の要素が複雑に絡み合いながらも、最後には一本の線として繋がる物語構成は見事です。

考察の余地を残した謎のアーティスト「安芸一歌」の正体など、読み終わった後も思考を巡らせたくなる仕掛けが随所に施されています。

音楽小説融合楽しむ読書体験手順

この作品の真髄を味わうには、物語を追うだけでなく音楽と空間をセットにした体験の設計が重要です。

ステップ	アクション	ポイント
準備	書店での購入	文庫版の手触りと重みを確認
演出	プレイリスト作成	THE BACK HORNの楽曲をスタンバイ
読書	ネタバレ回避	解説やあらすじを読まずに没入
読後	自己対話	深夜の散歩で日常を見つめ直す

普段の読書とは一味違う、五感を使った没入体験へあなたを誘います。

文庫本手取る週末書店巡り

週末の書店巡りは、未知の物語と出会うための神聖な儀式であり、この作品においてはその行為自体が物語の一部となります。

書店の棚から新潮社文庫の背表紙を探し出し、ページ数369ページの厚みと紙の質感を指先で確かめる瞬間、あなたの現実は少しずつ物語の世界へとシフトして強調されます。

書店で購入するメリット
帯や裏表紙のキャッチコピーから作品の温度感を確認できる
文庫本ならではの手軽なサイズ感と持ち運びやすさを実感
自分の手でレジへ運ぶ過程が読書への期待感を高める
偶然目に入った隣の本との出会いも楽しめる

手に入れた文庫本を鞄に入れ、帰路につく足取りはいつもより軽やかになります。

THE BACK HORN楽曲用意

THE BACK HORNとのコラボレーションによって生まれた本作において、音楽は単なるBGMではなく物語を構成する不可欠な要素として機能します。

全5曲が収録されたEP『この気持ちもいつか忘れる』を音楽アプリで検索し、いつでも再生できる状態にしておくことが、作品世界へ深く潜るための鍵となると強調します。

プレイリスト収録曲	役割・特徴
ハナレバナレ	物語の疾走感と切なさを加速させる
輪郭	登場人物の心情を鮮明に映し出す
突風	感情の揺れ動きを音で表現
君を隠してあげよう	繊細な優しさで物語を包み込む

イヤホンから流れる旋律が、文字情報に鮮やかな色彩と感情の輪郭を与えます。

解説読まず物語世界没入

物語の結末や核心に触れるネタバレ情報は、初読の感動を奪うノイズとなるため完全にシャットアウトする必要があります。

1ページ目から最終行に辿り着くまでは、巻末の解説やSNSでの考察には一切目を通さず、あなた自身の感性だけでカヤとチカの会話を受け止めることが重要だと強調します。

ネタバレ回避のための鉄則
読み終わるまで検索エンジンで作品名を検索しない
巻末の解説ページは本編読了後まで封印する
書店員や読書サイトのレビューも細部は読み飛ばす
自分の予想や推測を大切にしながら読み進める

誰かの解釈を通さない純粋な物語体験は、あなただけの特別な記憶として刻まれます。

自分自身日常見つめ直す時間

読了後に訪れる静かな余韻は、退屈だと思っていた日常の景色を変えるための大切なプロセスです。

物語を閉じた後、26年間積み重ねてきた自分の人生や仕事、日々のルーチンを振り返り、「退屈」の正体について思考を巡らせる時間は、何にも代えがたい贅沢なひとときとなると強調します。

読後に試したいアクション
深夜のバス停や静かな場所へ散歩に出かける
カヤやチカの視点で自分の生活を見つめ直す
THE BACK HORNの『輪郭』を聴きながら感想をノートに書き出す
誰かに伝えたくなる気持ちをあえて胸の内に留めて反芻する

この物語を通した体験は、あなたの乾いた心に確かな潤いと、明日を生きるための静かな光をもたらします。

まとめ

住野よるさんが描く『この気持ちもいつか忘れる』は、変わり映えのしない毎日に飽きているあなたの心を、異世界の少女との不思議な交流を通して優しく肯定してくれる物語です。

乾いた日常に潤いを取り戻すために、まずはプレイリストを用意してから書店へ向かい、この本を手に取ってみてください。