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【ネタバレなし】朝井リョウ『正欲』のあらすじと感想|映画との違いや3つの見どころを解説

朝井リョウさんの小説『正欲』は、私たちが当たり前だと思っている価値観を根底から揺さぶる衝撃作です。

この物語が投げかける、社会が語る「多様性」の“外側”にある真実こそ、多くの読者の心を掴んで離さない理由となっています。

この記事では、作品の購入や鑑賞を迷っている方に向けて、ネタバレを一切含まずに『正欲』のあらすじや見どころを解説します。

稲垣吾郎さんや新垣結衣さんが出演する映画版のキャストや評価、原作との違いも紹介するため、あなたがこの作品とどう向き合うべきかのヒントが見つかります。

テーマが重そうで少し怖いけど、自分に合う作品か知りたいな…

この記事を読めば、作品の核心に触れずにその輪郭を掴めます

目次

朝井リョウの衝撃作『正欲』の概要

『正欲』は、私たちが自明のものとして受け入れている「普通」や「正しさ」といった価値観を根底から問う作品です。

読む前の自分には戻れなくなるほどの体験が、この一冊には詰まっています。

物語が社会に投げかける問いの鋭さこそ、この作品が多くの読者の心を掴んで離さない理由です。

これから、作品の輪郭を形作る基本情報をひとつずつ見ていきましょう。

読者の価値観を揺さぶる物語のあらすじ

横浜地検の検事である寺井啓喜は、不登校になった息子との向き合い方に悩んでいます。

同じ頃、学園祭の実行委員である大学生の神戸八重子は、多様性をテーマにしたイベントを企画していました。

そして、ショッピングモールで働く桐生夏月は、誰にも言えない秘密を抱えながら日々を過ごしています。

一見、何の関係もない彼らの人生が、ある事故をきっかけに思いもよらない形で交差し始めます。

その繋がりは、「多様性を尊重する時代」にとって、ひどく不都合な真実を浮かび上がらせるものでした。

この物語は、読み手の倫理観や常識を静かに、しかし確実に揺さぶります。

ネタバレなしであらすじを知りたいんだけど…

それぞれの人生が予想外の形で繋がっていきます

このあらすじは、私たちが普段目を背けているかもしれない問いを、静かに突きつけてくるのです。

物語を動かす主要な登場人物の関係図

この物語は、異なる環境で生きる人々の視点が切り替わりながら進んでいきます。

登場人物は、検事、販売員、大学生など、実にさまざまです。

一見、無関係に見える5人の視点で物語が進むことで、読者は物事を多角的に捉えることを求められます。

それぞれの人物が抱える葛藤や秘密が、物語に深い奥行きを与えています。

第34回柴田錬三郎賞など輝かしい受賞歴

『正欲』は、著者の朝井リョウさんの作家生活10周年を記念して刊行された作品です。

その文学的な価値は高く評価されており、数々の文学賞に輝いています。

特に、エンターテインメント性と文学性を両立した作品に贈られる第34回柴田錬三郎賞の受賞は、この作品の質の高さを物語るものです。

これらの受賞歴は、『正欲』が多くの読者と選考委員の心を動かした確かな証拠です。

2023年に発売された新潮社の文庫版

2021年3月に単行本として刊行された『正欲』は、多くの読者の反響に応える形で文庫化されました。

2023年6月1日に新潮文庫から発売され、単行本よりも手軽な価格で手に取りやすくなっています。

文庫版も出ているの?

はい、単行本より手軽に楽しめるようになりました

通勤中や少し空いた時間に読書を楽しみたい方にとって、持ち運びやすい文庫版の発売は嬉しい知らせです。

読書メーターに寄せられた感想と評価

国内最大級の読書コミュニティサイト「読書メーター」では、『正欲』に対して多くの感想やレビューが投稿されています。

2024年現在、感想・レビュー件数は5,600件以上にのぼり、その注目度の高さがうかがえます。

投稿されている感想には、以下のような声が多く見られます。

具体的なレビュー内容は伏せますが、多くの読者がこの物語によって心を大きく揺さぶられていることが分かります。

ネタバレなしで語る『正欲』3つの見どころ

朝井リョウさんの『正欲』が多くの人の心を掴んで離さないのには、明確な理由があります。

それは、ただ面白いだけでなく、読者自身の価値観を根底から揺さぶる力を持っているからです。

この物語の魅力は多岐にわたりますが、特に注目してほしいのが、巧みに計算された物語の構成です。

ここでは、まだ作品に触れていないあなたに向けて、ネタバレなしで3つの見どころを解説します。

見どころ1-交差する人々の人生を描く巧みな構成

この物語の大きな特徴は、一見するとまったく接点のない複数の登場人物の視点が切り替わりながら進んでいく、群像劇の形式をとっている点です。

検事、ショッピングモールの店員、大学生など、異なる環境で生きる5人の男女の日常が、ある出来事をきっかけに、まるで運命の糸がたぐりよせられるように繋がり始めます。

登場人物たちがどう繋がっていくのか、想像がつかないな…

その繋がり方こそが、この物語の衝撃の核心に触れる部分です

誰が、どこで、どのように関係していくのか。

散りばめられた伏線が一つに収束していく展開は、ミステリー小説を読むようなスリルがあり、読者は息をのむことになります。

見どころ2-社会が語る多様性の“外側”を問うテーマ

『正欲』が投げかける最も重要な問いは、現代社会で肯定される「多様性」の正体に関するものです。

私たちは日々、多様な価値観を認め合おうと語りますが、この物語は、その「多様性」という言葉の光が届かない場所にいる人々の存在を鮮烈に描き出します。

この作品は、社会が「普通」と定める範囲からはみ出してしまう、ある特殊な欲望のかたちに焦点を当てています。

そのテーマの鋭さは高く評価され、第34回柴田錬三郎賞を受賞しました。

多様性って、結局は多数派が許せる範囲のことなのかも…

その違和感にこそ、この作品が突きつける問いの本質があります

読み終えたとき、あなたが信じていた「正しさ」や「普通」という感覚は、間違いなく揺らいでいるでしょう。

見どころ3-原作小説と映画で味わう表現の違い

『正欲』は、原作小説と映画版でそれぞれ異なる感動を体験できるのも大きな魅力です。

同じ物語を扱いながらも、表現媒体の違いが、作品に新たな奥行きを与えています

小説では、朝井リョウさんならではの繊細な筆致で、登場人物たちの心の機微や葛藤が克明に描かれます。

一方、映画では稲垣吾郎さんや新垣結衣さんといった実力派俳優陣の鬼気迫る演技と、岸善幸監督の映像表現が、物語の衝撃を五感に直接訴えかけます。

どっちから先に触れるべきか、迷ってしまう…

どちらからでも大丈夫ですが、両方に触れることで作品理解が格段に深まります

どちらか一方だけでなく、両方に触れることで、物語のテーマ性をより立体的に理解できます。

まずは小説で、次に映画で、と味わい方を変えてみるのもおすすめです。

稲垣吾郎・新垣結衣出演の映画版『正欲』

原作小説の持つ鋭い問いかけを、実力派のスタッフとキャストが映像で見事に表現したのが映画版『正欲』です。

岸善幸監督の演出と、主演の稲垣吾郎さん、新垣結衣さんの覚悟を感じさせる演技が、観る者の心を激しく揺さぶります。

この映画は、小説を読んだ方はもちろん、まだ作品に触れたことがない方にも、新たな発見と衝撃を与える一作に仕上がっています。

岸善幸監督が描く衝撃の映像世界

本作のメガホンを取ったのは、映画『あゝ、荒野』や『前科者』で人間の深淵を鋭く描き、高い評価を得てきた岸善幸監督です。

監督は、登場人物たちが抱える渇望や孤独を、時に息苦しくなるほどのリアリティで映し出します。

上映時間は134分と、原作の持つ複雑なテーマ性と人物像を丁寧に描くための時間が十分に確保されました。

監督の手腕で、原作の雰囲気がどう変わったか気になります

登場人物の感情の機微を、息苦しいほどのリアリティで映し出しています

観る者はまるで登場人物の息遣いを隣で感じているかのような感覚に陥り、映像ならではの力で物語の世界へ引き込まれていきます。

稲垣吾郎・新垣結衣・磯村勇斗ら豪華キャスト

この物語の複雑な登場人物たちを演じるために、日本の映画界を代表する豪華な俳優陣が集結しました。

不登校の息子を抱える検事・寺井啓喜役に稲垣吾郎さん、特殊な性的指向をひた隠しに生きる桐生夏月役を新垣結衣さんが演じています。

特に新垣結衣さんは、本作の演技で第33回日本映画批評家大賞の助演女優賞を受賞するなど、これまでのイメージを覆す役柄で高い評価を獲得しました。

俳優陣の鬼気迫る演技によって、キャラクター一人ひとりの痛みがスクリーンからあふれ出し、物語に圧倒的な説得力を与えています。

物語の余韻を深めるVaundyの主題歌「呼吸のように」

映画の鑑賞後、深く心に残るのが人気アーティストVaundyが書き下ろした主題歌「呼吸のように」です。

この楽曲は、物語のエンディングを静かに、そして温かく包み込みます。

この主題歌は、映画のために制作されたオリジナル楽曲であり、Vaundy自身が脚本を読み込み、作品の世界観に寄り添って作り上げました。

どんな曲なんだろう?

物語の登場人物たちに寄り添い、鑑賞後の心に深く響くバラードです

映画を観終えた後にこの曲を聴くと、登場人物たちのその後の人生に思いを馳せずにはいられなくなり、物語の余韻を何倍にも深めてくれます。

東京国際映画祭での最優秀監督賞と観客賞のダブル受賞

映画『正欲』は、公開前からそのクオリティの高さで注目を集め、アジア最大級の映画祭である第36回東京国際映画祭で大きな成果を上げました。

コンペティション部門に出品され、見事に最優秀監督賞(岸善幸監督)と観客賞の2つの賞に輝いています。

批評家からの評価である「最優秀監督賞」と、観客からの支持を示す「観客賞」を同時に受賞した事実は、この映画が専門家と一般の観客の両方から高く評価された傑作であることの証明です。

これらの輝かしい受賞歴は、映画『正欲』が日本映画史に残る重要な一作であることを物語っています。

動画配信サービス(サブスク)での視聴

映画『正欲』は、2023年11月の劇場公開後、現在は動画配信サービス(サブスク)でも視聴が可能です。

映画館の大きなスクリーンとはまた違った環境で、物語の世界にじっくりと浸れます。

現在、Netflixで見放題配信が行われており、契約していれば追加料金なしでいつでも鑑賞できます。

家でじっくり観たいんだけど、どこで観られる?

現在、Netflixで見放題配信されています

劇場公開時に見逃してしまった方も、もう一度あの衝撃を体験したい方も、自宅で手軽にこの問題作と向き合うことが可能です。

『正欲』の楽しみ方と作品との向き合い方

『正欲』という作品に触れる方法は、一つではありません。

原作小説、オーディオブック、そして映画と、それぞれに異なる魅力があります。

あなたのライフスタイルや、物語とどう向き合いたいかに合わせて、最適なメディアを選ぶことが、この作品を深く味わうための第一歩です。

どの入口から入ったとしても、この物語が投げかける問いの重さは変わりません。

それぞれのメディアでの体験を比較してみるのも、作品を多角的に理解する上で面白いでしょう。

最終的には、あなた自身の「普通」について、深く考えるきっかけを与えてくれるはずです。

文字で心理描写を深く味わう原作小説

原作小説でこの物語に触れる最大の魅力は、登場人物たちの繊細で複雑な心理描写を、自分のペースで深く追体験できる点にあります。

朝井リョウさんの作家生活10周年記念作品として2021年に刊行され、累計発行部数は50万部を突破しています。

手に取りやすい文庫版も2023年に発売されました。

活字を読むのは久しぶりだけど、ついていけるかな?

登場人物の視点が次々と切り替わる構成なので、新鮮な気持ちで読み進められますよ。

一文一文をじっくりと噛み締めながら読むことで、社会が声高に叫ぶ「多様性」という言葉の裏で、こぼれ落ちてしまう個人の声なき声や葛藤を、より深く感じ取ることができます。

新たな読書体験をもたらすオーディオブック

オーディオブックとは、プロのナレーターが書籍を朗読してくれる「聴く本」を指し、通勤中や家事をしながらでも物語を楽しめる新しい読書スタイルです。

本作はaudiobook.jpとAudibleで配信されており、audiobook.jp版は「オーディオブック大賞2023」の聴き放題部門で大賞を受賞しました。

そのクオリティは専門家からも高く評価されています。

移動中に本を読むのは目が疲れてしまって。

耳から物語が入ってくるので、目を休ませながらでも作品の世界に没頭できます。

文字を追うのとは異なり、声の抑揚や息遣い、絶妙な間によって登場人物の感情がダイレクトに伝わってくる感覚は、オーディオブックならではの体験です。

映像と俳優の演技で心を揺さぶられる映画

2023年に公開された映画版『正欲』は、原作が持つテーマ性を損なうことなく、映像と音、そして俳優陣の迫真の演技によって、観る者の感情を直接的に揺さぶる力を持っています。

監督を務めた岸善幸さんは、第36回東京国際映画祭で最優秀監督賞と観客賞のダブル受賞という快挙を成し遂げました。

稲垣吾郎さん、新垣結衣さん、磯村勇斗さんといった実力派キャストが、役に魂を吹き込んでいます。

原作を読んでから観るべきか、先に観るべきか迷います。

どちらからでも楽しめますが、映画を先に観て衝撃を受け、答えを探すように原作を読むのもおすすめです。

小説では読者の想像に委ねられていた登場人物たちの表情や声が、スクリーン上で生々しく立ち現れます。

鑑賞後に響くVaundyさんの主題歌「呼吸のように」が、物語の余韻をいつまでも心に残します。

世間の「普通」に疑問を持つ人におすすめの理由

この物語は、社会が押し付ける「普通」や「当たり前」という価値観に、少しでも息苦しさや違和感を覚えた経験がある人にこそ、強く響くでしょう。

横浜地検の検事、寝具店の店員、意識の高い大学生。

登場人物たちは、私たちと同じ社会で暮らしながら、その心の内には世間から到底理解されない渇きを抱えています

描かれるテーマが重そうで、少し怖い気もします。

その恐れや戸惑いの感情こそが、この作品と真摯に向き合っている証拠です。

『正欲』は、ただ物語を消費して終わる作品ではありません。

読み終えた後、観終わった後に、自分自身の内面と向き合い、他者への想像力を巡らせる、思索的な時間をもたらしてくれます。

よくある質問(FAQ)

タイトルの『正欲』には、どのような意味が込められているのですか?

このタイトルは、社会的に「正しい」とされる欲望と、人が内心に抱く抗いがたい欲望との間の葛藤を象徴しています。

単純な善悪では測れない人間の複雑な感情や、世間が認める「多様性」の枠からはみ出してしまう欲望のあり方を読者に問いかける、本作のテーマそのものを表す言葉です。

詳しい解説は物語の核心に触れるため、ぜひ本編でその意味を深く味わってください。

原作の小説と映画、どちらから先に楽しむのがおすすめですか?

どちらから触れても、それぞれに深い感動があります。

登場人物の緻密な心理描写や思考の過程をじっくりと味わいたい方は、原作の小説から読むことをおすすめします。

一方、稲垣吾郎さんや新垣結衣さんといったキャストの鬼気迫る演技と、映像・音響による直接的な衝撃を体感したい方は、映画から観るのがよいでしょう。

両方に触れると、作品への理解がさらに深まります。

登場人物たちの関係図は複雑ですか?

最初は全く無関係に見える登場人物たちが、物語が進むにつれて予想もしない形で繋がっていきます。

その繋がり方は、複雑というよりはむしろ「見事」という言葉がふさわしいです。

ばらばらに見えた点が一本の線として繋がった瞬間の衝撃は、この物語の大きな魅力の一つとなっています。

ネタバレを避けるため詳細は語れませんが、驚きの展開が待っています。

映画のキャスト、特に稲垣吾郎さんや新垣結衣さんの演技の評価はどうですか?

非常に高い評価を得ています。

検事役の稲垣吾郎さんは、エリートとしての顔の裏に隠された葛藤を見事に表現しました。

特に、桐生夏月役を演じた新垣結衣さんは、これまでのパブリックイメージを覆す難役に挑み、その演技は多くの映画賞で受賞するなど絶賛されています。

また、磯村勇斗さんの助演も作品に深みを与えており、豪華キャスト陣の覚悟が感じられると評判です。

作中で象徴的に描かれる「水」は何を意味しているのでしょうか?

作中における「水」は、登場人物たちの渇きや、他者との間に存在する見えない境界線、あるいは生命の根源など、多層的な意味を持つ重要なモチーフです。

この「水」がどのように描かれているかを意識すると、物語の考察がより一層深まります。

明確な答えは示されませんが、それぞれの登場人物にとって「水」が何を象徴するのかを考えることも、この作品の楽しみ方の一つです。

映画は現在、映画館で観られますか?それとも配信だけですか?

映画『正欲』の劇場公開日は2023年11月10日で、現在はほとんどの上映館での公開を終了しています。

しかし、ご自宅でじっくり鑑賞することが可能です。

現在はNetflixなどの動画配信サービス(サブスク)で見放題配信が行われていますので、契約していればいつでもこの衝撃作と向き合えます。

まとめ

この記事では、朝井リョウさんの衝撃作『正欲』について、ネタバレを一切含まずにあらすじや映画版との違い、そして3つの見どころを解説しました。

この物語が問いかけるのは、私たちが普段、疑いもせずに受け入れている「普通」や「正しさ」そのものであり、社会が語る「多様性」という言葉の光が届かない場所にいる人々の存在を鮮烈に描き出します。

もしあなたが、世間が定める「当たり前」に少しでも息苦しさを感じたことがあるなら、この物語はきっと心に深く突き刺さるはずです。

まずは手に取りやすい文庫版や、現在配信されている映画から、あなたの価値観を揺さぶるこの問題作に触れてみてください。

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