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このミステリーがすごい大賞とは|ランキングとの違いと歴代受賞作一覧

いつものミステリー小説に物足りなさを感じているなら、注目すべき賞があります。

それは、まだ世に出ていない才能を発掘する新人賞、「このミステリーがすごい!大賞」です。

この賞は年末に発表されるランキングとは全く違い、『チーム・バチスタの栄光』や『元彼の遺言状』のような未来のベストセラー作家が生まれる瞬間に立ち会える公募形式の文学賞なのです。

年末に見かけるランキングとは何が違うんだろう?

ランキングは成績優秀者の発表会、大賞は未来のスターを探す入学試験のようなものです。

目次

未来のスター作家を発掘する新人賞「このミステリーがすごい!大賞」

いつもの読書に少し物足りなさを感じているなら、この賞に注目することをおすすめします。

なぜなら、未来のベストセラー作家が生まれる瞬間に立ち会えるからです。

ランキング企画の「このミステリーがすごい!」とは異なり、こちらはまだ世に出ていない才能を発掘するための文学賞なのです。

この賞は、あなたの読書体験をより深く、刺激的なものに変えてくれる新しい物語との出会いの場となります。

宝島社が主催する公募形式の文学賞

「このミステリーがすごい!大賞」とは、出版社の宝島社が中心となって2002年に創設した、公募形式の新人文学賞です。

ミステリー小説の新人賞ですが、その枠はとても広く、ミステリーの要素さえあればSFやファンタジー、時代小説まで幅広いジャンルの作品が募集対象となります。

応募資格はプロ・アマを問いません

この門戸の広さから、毎年多数の意欲作が集まり、多くのベストセラー作家を輩出してきました。

賞金1200万円と書籍化の約束

この賞の大きな魅力は、大賞賞金が1200万円という点です。

これは日本の新人文学賞の中でも最高水準の金額であり、多くの才能ある書き手を惹きつける要因になっています。

さらに、大賞受賞者には賞金だけでなく、作品が必ず宝島社から書籍として出版されるという未来も約束されます。

作家を目指す人にとって、これ以上ない栄誉とチャンスが与えられるのです。

賞金が高いと、才能ある人が集まりやすいのかな?

その通りです。だからこそ毎年レベルの高い作品が集まるのです。

高額な賞金と確実な出版の保証が、毎年質の高い原稿が集まり続ける好循環を生み出しています。

個性を評価する加点方式の選考スタイル

選考方法にも、この賞ならではの特徴があります。

それは、作品の欠点を探して減点していく一般的な方法ではなく、他の作品にはない長所や個性的な点を見つけて評価する「加点方式」を採用していることです。

この選考スタイルによって、文章の完成度や構成の緻密さだけでなく、「他の誰にも書けない」というユニークな魅力を持つ作品が発掘されやすくなっています。

医療ミステリーの金字塔『チーム・バチスタの栄光』や、リーガルミステリーの新しい扉を開いた『元彼の遺言状』などは、まさにこの方針が生んだ傑作といえるでしょう。

私たちが斬新な物語に出会える背景には、このユニークな選考スタイルが存在するのです。

受賞を逃しても書籍化のチャンスがある「隠し玉」制度

最終選考で惜しくも大賞を逃してしまった作品にも、まだ道が残されています。

それが、編集部が「この作品はぜひ世に出したい」と判断した場合に書籍化される「隠し玉」という特別な制度です。

実際に、2018年に映画化され社会現象にもなった志駕晃さんの『スマホを落としただけなのに』も、この「隠し玉」から生まれたヒット作です。

応募者の才能を最後まで見捨てず、面白い作品は決して埋もれさせないという出版社の強い意志が伝わります。

この敗者復活ともいえる制度が、賞全体の層の厚さと信頼性を高めています。

映像化を前提としたU-NEXT・カンテレ賞

近年では、時代のニーズに合わせて新たな取り組みも始まっています。

第17回(2019年)から新設されたのが、ドラマ化を前提として選考される「U-NEXT・カンテレ賞」です。

この賞に選ばれた作品は、カンテレ(関西テレビ放送)によってテレビドラマ化され、動画配信サービスのU-NEXTで配信されます。

つまり、物語が活字の世界を飛び出し、より多くの人々へ届く仕組みが最初から用意されているのです。

作家にとっては活躍のフィールドが広がり、読者にとっては活字と映像という二つの形で物語を楽しめる、双方にとって価値のある試みです。

年末恒例の書籍ランキングとの決定的な違い

「このミステリーがすごい!」という名前が同じなので混同しがちですが、年末に発表されるランキングと、未来のスター作家を発掘する「大賞」は全くの別物です。

両者の違いを理解することで、ミステリー小説の世界がより一層面白くなります。

つまり、ランキングはその年のミステリー小説の「通信簿」であり、大賞はこれから世に出る才能の「入学試験」のようなものだと考えると分かりやすいです。

選考対象-未発表の原稿か既刊本か

両者の最も大きな違いは、選考の対象となる作品が「すでに本になっているか、まだ世に出ていない原稿か」という点にあります。

年末に書店に並ぶガイドブック『このミステリーがすごい!』は、その年に日本国内で刊行されたミステリー小説の中から、評論家や全国の書店員たちの投票によってベスト10を決めるランキングです。

一方で「このミステリーがすごい!大賞」は、プロ・アマ問わず誰でも応募できる公募形式の新人賞であり、まだ書籍化されていない未発表の原稿だけが選考対象となります。

じゃあ、書店で見る「このミス」の帯は、ランキング1位の作品と大賞受賞作の2種類があるってこと?

その通りです。どちらも面白い作品である証ですが、その意味合いは大きく異なります。

既刊本から選ばれるランキングと、無名の原稿から選ばれる大賞。

この違いを理解することが、2つの「このミス」を正しく見分ける第一歩です。

目的-才能の発掘か作品の評価か

選考対象が違うということは、当然その目的も大きく異なります。

ランキングの目的は、その年に出版された数多くのミステリーの中から「本当に面白いのはこれだ」という優れた作品を読者に紹介し、評価を確定させることにあります。

対して大賞は、まだ誰も知らない才能の原石を見つけ出し、未来のベストセラー作家を世に送り出すことを目的としています。

賞金1200万円と書籍化の約束は、才能ある書き手を惹きつけるための強力な動機付けになっています。

ランキングが「過去1年間の総括」であるのに対し、大賞は「ミステリー界の未来への投資」という役割を担っているのです。

発表時期と形式の相違点

読者として私たちが情報に触れる発表のタイミングと形も、両者でははっきりと異なります。

ランキングは、毎年12月上旬に『このミステリーがすごい!』という名前のガイドブックとして書籍形式で発表されます。

年末の風物詩として、書店に平積みされる光景を目にしたことがある人も多いでしょう。

一方、大賞の発表は毎年10月上旬に行われ、受賞作は翌年1月頃に宝島社文庫として刊行されるのが通例です。

年末にランキング本でその年のトレンドを確認し、年明けに大賞受賞作という新しい才能の作品を読む、という楽しみ方ができます。

本屋大賞や週刊文春ミステリーベスト10との関係性

ミステリー小説の賞やランキングには、「このミス」以外にも有名なものがいくつかあります。

特に「本屋大賞」や「週刊文春ミステリーベスト10」はよく比較されます。

「週刊文春ミステリーベスト10」は、「このミス」ランキングと同様に、その年に刊行されたミステリーを対象としたランキングで、ミステリーファンにとって年末の大きな関心事です。

一方で「本屋大賞」は、ミステリーに限らず全てのジャンルの小説を対象とし、「全国書店員が選んだいちばん!売りたい本」という視点で選ばれる点が特徴です。

これらの賞やランキングは、それぞれ異なる視点で作品を選んでいます。

「このミステリーがすごい!大賞」は、その中でも「新しい才能の発掘」という点において、唯一無二の存在感を放っているのです。

歴代このミステリーがすごい!大賞の受賞作品一覧

この賞からは、後のベストセラー作家となる多くの才能が羽ばたいていきました。

医療ミステリーからリーガルサスペンス、社会派まで、個性豊かな受賞作の歴史をたどれば、あなたの読書体験を豊かにする新たな一冊が必ず見つかります

ここでは、創設から現在までの大賞受賞作品を一覧で紹介します。

第1回から第10回までの大賞受賞作

賞の初期には、現在も第一線で活躍する作家たちのフレッシュなデビュー作が名を連ねています。

特に第4回受賞の『チーム・バチスタの栄光』は、医療ミステリーというジャンルを確立した記念碑的な作品です

今では有名な作家のデビュー作も多いんですね!

ここから新たなスターが誕生していった歴史を感じます。

この時期は、後のミステリー界を牽引する才能が続々と発掘された、まさに黎明期と言えるでしょう。

第11回から第20回までの大賞受賞作

賞が成熟期に入ると、より多様なジャンルの作品が登場するようになります。

SFや社会派の要素を取り入れた作品や、キャラクターの魅力で読ませるエンターテインメント性の高いミステリーが増えてきたのが特徴です。

特に第19回受賞の『元彼の遺言状』は、リーガルミステリーの新しい形を提示し、テレビドラマ化もされる大ヒットを記録しました

受賞作の幅が広がり、ミステリーというジャンルの可能性を押し広げた10年間であったことが分かります。

第21回以降の最新大賞受賞作

近年では、時代の空気感を敏感に捉えた作品や、心温まる設定の中に驚きのトリックを仕込んだ作品など、新しい読書体験を提供するミステリーが選ばれています。

最新の受賞作に触れることは、ミステリー小説の最前線を知る最も手軽な方法です

これからどのような才能がこの賞から生まれてくるのか、注目が集まります。

このミス大賞から生まれた映像化作品5選

『このミステリーがすごい!』大賞は、書籍としての面白さだけでなく、映像化された際のポテンシャルも高く評価されており、受賞作の多くが映画やドラマになっています。

ここで紹介する5作品は、活字の世界だけでなく、映像の世界でも大きなインパクトを与え続けています

これらの作品は、この賞が持つ「新しい才能を発掘する」という理念を象徴しており、ミステリー小説の可能性を広げた傑作ばかりです。

チーム・バチスタの栄光-海堂尊

本作は、医療ミステリーという新しいジャンルを確立した記念碑的作品です。

現役医師である海堂尊さんが描くリアルな医療現場と、巧妙に仕組まれた謎解きが見事に融合しています。

伊藤淳史さんと仲村トオルさんのコンビで映像化された作品は、原作の面白さをそのままに、多くのファンを獲得しました。

シリーズ累計発行部数は1000万部を超える大ヒットとなり、日本のミステリー界に大きな影響を与えた一冊です。

医療モノって専門用語が多くて難しそう…

大丈夫です、個性的なキャラクターたちの軽妙な会話劇が物語をぐいぐい引っ張りますよ

専門知識がなくても、エンターテイメントとして存分に楽しめる点が、多くの人に愛される理由です。

さよならドビュッシー-中山七里

「どんでん返しの帝王」の異名を持つ中山七里さんのデビュー作にして、第8回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作です。

音楽とミステリーが絡み合う感動的な物語は、多くの読者の心を打ちました。

全身に大火傷を負いながらもピアニストを目指す少女の過酷な運命と、彼女の周りで起こる不可解な事件が描かれます。

2013年には橋本愛さん主演で映画化され、原作の持つ切ない雰囲気と衝撃のラストが忠実に再現されました。

ただの感動ストーリーじゃないんですよね?

はい、ラストに待ち受ける衝撃の真実が、物語の印象を180度覆します

中山七里さんならではの構成の巧みさが光る、ミステリーファン必読の傑作です。

スマホを落としただけなのに-志駕晃

大賞受賞作ではなく、最終選考で惜しくも落選した作品を編集部が書籍化する「隠し玉」から生まれた大ヒット作です。

誰もが経験しうる日常の恐怖を描き、社会現象を巻き起こしました。

恋人が落としたスマートフォンをきっかけに、個人情報が次々と暴かれ、平穏な日常が脅かされていく様子は圧巻です。

2018年に北川景子さん主演で映画化されると、興行収入19.6億円を記録する大ヒットとなり、続編も製作されました。

スマホを落とすだけで、そんなに大変なことになるの?

誰もが経験しうる出来事が最悪の事態に発展するリアルな恐怖が、この作品の魅力です

面白い作品は決して見逃さない、という「隠し玉」制度の意義を証明した一冊といえます。

元彼の遺言状-新川帆立

「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇妙な遺言から幕を開ける、新しいタイプのリーガルミステリーです。

お金に貪欲な女性弁護士・剣持麗子のキャラクターが魅力的で、多くの読者から支持されました。

第19回の大賞を受賞し、2022年には綾瀬はるかさん主演でフジテレビ「月9」枠でドラマ化もされました。

軽快なテンポとコミカルな会話劇で、法律という難しいテーマをエンターテイメントに昇華させています。

法律の話は堅苦しいイメージがあります…

お金に貪欲で型破りな女性弁護士が主人公なので、コミカルでテンポ良く物語が進みます

従来のリーガルミステリーのイメージを覆す、キャラクターの魅力が際立つ作品です。

名探偵のままでいて-小西マサテル

認知症を患った元名探偵のおじいちゃんが、孫娘の持ち込む「日常の謎」に挑むという、切なくも心温まる設定が読者の涙を誘った第21回大賞受賞作です。

2023年の本屋大賞にもノミネートされ、ミステリーファンの枠を超えて支持を広げました。

記憶を失っていく中でも、かつての慧眼を取り戻し謎を解き明かす祖父の姿は感動的です。

累計発行部数は25万部を突破しました。

本格的な謎解きは楽しめるのでしょうか?

記憶を失っていく中でも、孫が持ち込む日常の謎を鮮やかに解き明かす名探偵ぶりは健在です

斬新な設定の中に、ミステリーとしての本質的な面白さと家族の愛が詰まった一冊です。

よくある質問(FAQ)

『このミステリーがすごい!』大賞には、どのような人が応募できるのですか?

この賞は新人賞ですが、プロの作家であるかアマチュアであるかは問いません。

過去に商業出版の経験がある方でも応募することが可能です。

ミステリー小説の要素が含まれていれば、幅広いジャンルの未発表作品を募集しており、門戸が非常に広い賞といえます。

受賞作はどのように選考されるのでしょうか?

応募された作品は、一次・二次選考を経て最終候補作が選ばれます。

最終選考会では、大森望さんや香山二三郎さんといったミステリーに精通した評論家たちが、作品の欠点を探すのではなく個性や長所を評価する「加点方式」で受賞作を決定します。

大賞を逃した「隠し玉」とは、どのような作品のことですか?

「隠し玉」とは、最終選考で大賞を逃した作品の中から、編集部が「ぜひ書籍化したい」と判断した作品を指します。

大ヒットした『スマホを落としただけなのに』もこの「隠し玉」出身であり、才能を埋もれさせないための敗者復活ともいえる制度です。

本を選ぶとき、年末のランキングと大賞受賞作のどちらを参考にすれば良いですか?

その年に評価が固まった面白い本を読みたいなら、評論家や書店員による投票で決まる「ランキング」がおすすめです。

一方で、まだ世に出ていない新しい才能が書いた、斬新なミステリー小説に出会いたい場合は、新人賞である「このミステリーがすごい!大賞」の受賞作を選ぶと良いでしょう。

大賞の発表はいつですか? 受賞作はいつ頃から書店で買えますか?

大賞の発表は毎年10月上旬に行われます。

その後、受賞作は宝島社によって書籍化され、翌年の1月頃に文庫本として全国の書店に並ぶのが通例となっています。

年が明けると、新しい才能の作品をいち早く手に取ることが可能です。

最近の大賞はどのような作品が受賞していますか?

近年では、ただ謎を解くだけでなく、社会的なテーマを扱ったり、心温まる人間ドラマを描いたりする作品が注目されています。

例えば、第21回大賞の『名探偵のままでいて』は、認知症の祖父が謎を解くという設定で、ミステリーファンの枠を超えて高い評価を得ました。

まとめ

この記事では、「このミステリーがすごい!大賞」が年末のランキングとは全く違う、未来のベストセラー作家を発掘する公募形式の新人賞であることを解説しました。

この賞は、まだ世に出ていない才能が生み出した、斬新な物語と出会える絶好の機会を提供してくれます。

いつものミステリー小説にマンネリを感じているなら、ぜひ歴代の受賞作一覧から、あなたの読書体験を豊かにする新しい才能を見つけてください。

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