自然に触れる効果とは｜科学が証明した心と体へのメリット7選と都会でできる6つの方法

PC作業で疲れた心と体を癒やしたいと思っていませんか。

自然との触れ合いには、科学的に証明された驚くべき効果があります。

この記事では、ストレス軽減や集中力アップといった具体的なメリットから、都会の日常で今日から始められる6つの方法までを詳しく解説します。

この記事を読むとわかること

自然に触れることで得られる心と体への変化

都会の喧騒やデスクワークで疲れた心と体にとって、自然と触れ合う時間は最高の休息になります。

自然は、私たちの心と体の両方に良い影響を与えてくれることが、多くの研究で明らかになっています。

ここでは、自然がもたらす代表的な4つの変化について、詳しく見ていきましょう。

ストレスホルモンを減らす心理的な癒し

私たちがストレスを感じると、体内ではコルチゾールというホルモンが分泌されます。

このコルチゾールは「ストレスホルモン」とも呼ばれ、過剰になると心身に不調をきたす原因となるのです。

千葉大学の研究によると、わずか20分間、都市の公園や森を眺めるだけで、唾液に含まれるコルチゾールの濃度が13.4%も低下することがわかっています。

木々の緑や土の匂いが、私たちの緊張を自然とほぐしてくれる効果があります。

緑豊かな景色を眺めるだけで、知らず知らずのうちに溜まったストレスが和らぎ、心が穏やかになる癒しを実感できます。

免疫力を高める身体的な健康効果

自然、特に森林には、私たちの体の防御システムである免疫力を高める力があります。

その鍵を握るのが、体内に侵入したウイルスやがん細胞を攻撃するNK（ナチュラルキラー）細胞です。

日本医科大学の研究では、3日間の森林浴旅行によって、NK細胞の数と活性が50%以上も増加し、その効果が1ヶ月後も持続したという結果が出ています。

これは樹木が発散する「フィトンチッド」という化学物質の効果によるものです。

定期的に森や公園を散歩することは、風邪などの感染症に負けない、強い体をつくることにつながります。

集中力を取り戻す脳のリフレッシュ作用

長時間のデスクワークで疲れた脳をリフレッシュさせる作用も期待できます。

これは「注意回復理論（Attention Restoration Theory）」という考え方で説明されていて、自然の風景は、私たちの疲れた「意図的注意」を休ませ、回復させてくれる働きがあるのです。

ミシガン大学の研究では、自然の中を散歩した学生は、繁華街を歩いた学生と比較して、記憶力と注意力を測るテストの成績が20%も向上しました。

これは、自然環境が脳に過度な刺激を与えず、リラックスさせながらも注意力を回復させるためです。

仕事で行き詰まった時や集中力が途切れた時に、公園の緑や街路樹を眺めるだけで、脳がリセットされて午後の作業効率も上がります。

幸福度に関わるセロトニンの分泌促進

自然に触れることは、気分の安定や幸福感に深く関わる脳内物質、セロトニンの分泌を促します。

セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、不足すると気分の落ち込みや意欲の低下につながることがあります。

セロトニンの分泌を促す最も簡単な方法は、太陽の光を浴びることです。

特に、朝の時間帯に15分から30分ほど太陽光を浴びながら公園などを散歩すると、セロトニンの生成が活発になります。

休日や出勤前に少しだけ早起きして散歩する習慣をつけると、精神的な安定感が得られ、一日を前向きな気持ちでスタートできます。

科学が証明した心と体へのメリット7選

自然に触れることのメリットは、単なる気分の問題ではありません。

数多くの研究によって、心と体に良い影響を与えることが科学的に証明されています。

特に重要なのは、ストレス社会で生きる私たちの心と体の両方を、同時に癒やしてくれる点です。

これから紹介する7つのメリットを知ることで、自然との触れ合いが私たちの健康にとっていかに価値のあるものか、きっと深く理解できるはずです。

ストレス軽減と深いリラックス効果

自然の中に身を置くことは、ストレスホルモンと呼ばれる「コルチゾール」の分泌を抑える効果があります。

森の香りや木々の緑、穏やかな風の音などが五感を優しく刺激し、心身を深いリラックス状態へと導いてくれるのです。

千葉大学の研究では、都市部で過ごした場合と比較して、森の中でわずか15分間座って過ごすだけで、唾液に含まれるコルチゾールの濃度が平均で15.8%も低下するという結果が報告されています。

短時間でも、確かなストレス軽減効果を実感できるでしょう。

意識的に自然に目を向ける時間を作るだけで、心は穏やかさを取り戻します。

毎日の生活に少しだけ緑を取り入れる習慣が、ストレスに強い心と体を作る第一歩となるのです。

疲れた注意力の回復と集中力の向上

現代社会では、仕事や情報収集などで常に意識を集中させる必要があります。

このような能動的な注意力を「意図的注意」と呼びますが、使い続けると疲弊してしまいます。

一方で、自然の風景など、無意識に心惹かれるものに対する注意力を「自動的注意」と呼びます。

ミシガン大学の研究によると、疲れた「意図的注意」は、自然の中で「自動的注意」を使うことで回復することがわかっています。

実験では、自然の中を散歩したグループは、街中を散歩したグループに比べて、その後の認知機能テストの成績が約20%も向上しました。

仕事で行き詰まった時こそ、一度パソコンから離れて緑に触れる時間を作ってみましょう。

驚くほど頭がすっきりして、新たな気持ちで作業に取り組めるようになります。

免疫細胞を活性化させる森林浴の力

森林浴とは、森の中を歩き、樹木が発する「フィトンチッド」と呼ばれる香り成分を浴びる健康法です。

このフィトンチッドには、私たちの体の免疫機能を担う重要な細胞を元気にする力があります。

日本医科大学の研究では、森林浴によって、ウイルスに感染した細胞やがん細胞などから体を守るNK（ナチュラルキラー）細胞の数と活性が大幅に向上することが明らかになっています。

この免疫力を高める効果は、一度の森林浴で約1週間持続するとも言われています。

定期的に森林浴を取り入れることは、病気に負けない体づくりにつながります。

週末に少し足を延ばして、自然豊かな森で深呼吸をしてみてはいかがでしょうか。

睡眠の質を高める安眠効果

日中に自然光を浴びたり、自然の中で過ごしたりすることは、私たちの体内時計を整え、夜の睡眠の質を高めることにつながります。

心身の緊張がほぐれることで、スムーズな入眠を促すのです。

ある研究では、週末にキャンプで2日間過ごしただけで、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌タイミングが自然な形にリセットされ、通常より約2時間も早く眠気を感じるようになったという結果が出ています。

都会の人工的な光から離れる時間も大切です。

遠くへ行かなくても、近所の公園を散歩する、ベランダで日光浴をするなど、日常生活の中で意識的に太陽の光を浴びることで、心地よい眠りを得やすくなります。

乱れがちな自律神経のバランス調整

私たちの体は、活動的な時に働く「交感神経」と、リラックスしている時に働く「副交感神経」からなる自律神経によってコントロールされています。

しかし、ストレスや不規則な生活で、このバランスは簡単に乱れてしまいます。

多くの研究で、森林などの自然環境にいると、心拍数が落ち着き、交感神経の活動が抑えられて副交感神経が優位になることが確認されています。

自然は、私たちの体を自動的にリラックスモードへと切り替えてくれるのです。

意識的に自然の中で過ごす時間を持つことで、自律神経のバランスが整い、慢性的な疲労感や気分の浮き沈みといった不調の改善が期待できます。

血圧の安定化

自然の中で過ごすことは、心身をリラックスさせるだけでなく、血圧を安定させる効果も報告されています。

ストレスによって上昇しがちな血圧を、穏やかな状態に保つのに役立つのです。

環境省が実施した実証実験では、森林浴セラピーに参加することで、高血圧傾向にある人の収縮期血圧（上の血圧）が平均で4.5mmHg、拡張期血圧（下の血圧）が平均で4.1mmHg低下したという結果が出ています。

特別な運動をしなくても、緑の多い場所をゆっくりと歩くだけで効果が期待できます。

楽しみながら続けられる健康習慣として、自然との触れ合いを取り入れてみましょう。

気分の落ち込みを防ぎ前向きな感情を育む

自然との触れ合いは、私たちの心にも直接作用します。

特に、不安感を和らげ、幸福度を高める働きがある脳内物質「セロトニン」の分泌を促す効果が知られています。

スタンフォード大学の研究では、自然豊かな場所を90分間散歩したグループは、都会を散歩したグループと比べて、悩み事を繰り返し考えてしまう「反芻思考」に関わる脳の部位の活動が低下することが示されました。

自然は、ネガティブな思考のループから心を解放してくれるのです。

気分が落ち込んだ時には、無理に元気を出そうとせず、ただ静かに自然の中に身を置いてみましょう。

鳥のさえずりや木漏れ日が、優しく心を癒やし、前向きな気持ちを育んでくれます。

都会の日常でできる自然との触れ合い方6選

遠くの森や海へ出かけなくても、私たちの周りには自然を感じる機会が隠されています。

忙しい毎日の中でも、意識を向けるだけで心と体をリフレッシュできる簡単な方法がたくさんあります。

ここでは、都会の生活にすぐに取り入れられる6つの方法を紹介します。

これらを習慣にすることで、日々のストレスが和らぎ、穏やかな心を取り戻すきっかけになるはずです。

通勤前や昼休みの公園散歩

ほんのわずかな時間でも、公園の緑に触れることは心に安らぎをもたらします。

たった5分間、木々を眺めながら歩くだけで、ストレスホルモンであるコルチゾールの値が低下するという研究結果もあります。

会社の近くにある公園や、通勤経路の緑道を意識して歩いてみましょう。

週に合計120分以上自然の中で過ごすことで、健康状態や幸福感が向上するといわれています。

いつもの道を少し変えるだけで、心と体に良い変化が生まれます。

デスクに置く一鉢の観葉植物

常に視界に緑がある環境は、心拍数を落ち着かせ、リラックス効果を高めます。

特にパソコン作業が多い方にとって、デスクの上に小さな観葉植物を置くことは、手軽にできる癒やしです。

初心者でも育てやすいポトスやサンスベリア、アイビーといった種類なら、水やりの頻度も少なく手間がかかりません。

小さな緑が、疲れた目の緊張を和らげてくれます。

お気に入りの一鉢を見つけることで、デスク周りが心地よい空間に変わります。

仕事の合間に窓から空や街路樹を眺める時間

パソコン画面を見続けると、脳の特定の部分だけが疲労します。

定期的に窓の外を眺め、意識をぼーっとさせることで、疲れた注意力が回復する「注意回復理論」が知られています。

例えば、25分作業をしたら5分間窓の外を眺める、といったルールを決めるのも良い方法です。

遠くの景色を見る行為は、目の筋肉の緊張をほぐす効果もあり、眼精疲労の予防につながります。

意識的に休憩を挟むことが、結果的に仕事の効率を上げることにもなります。

週末に訪れる近所の川辺や水辺

川のせせらぎや、水面のきらめきには、心を落ち着かせる効果があります。

水の流れる音や景色は、脳をリラックス状態に導くことがわかっています。

週末に少し足を延ばして、目黒川や善福寺川沿いを散歩してみてはいかがでしょうか。

水辺のカフェで読書をするだけでも、日常とは違う穏やかな時間を過ごせます。

普段の行動範囲に水辺を取り入れるだけで、手軽に気分転換ができます。

BGMとしての鳥のさえずりや川のせせらぎ

自然の音には、「1/fゆらぎ」と呼ばれる独特のリズムが含まれています。

この不規則なゆらぎが、脳をα波の状態に導き、リラックス効果をもたらすのです。

YouTubeやSpotifyといったサービスで「自然音」と検索すれば、数千時間を超える高品質な音源がすぐに見つかります。

在宅勤務中や就寝前に小さな音で流すだけで、室内にいながら森林浴のような感覚を味わえます。

聴覚から自然を取り入れることで、自宅やオフィスが心地よい癒やしの空間に変わります。

ベランダで始めるハーブの栽培

植物を育てる過程で土に触れることは、ストレスを軽減し、精神を安定させる効果があります。

「ガーデニングセラピー」とも呼ばれ、土の中の微生物が心に良い影響を与えるという研究もあります。

ミントやバジル、ローズマリーといったハーブは、小さなプランターでも育てやすく、料理やハーブティーに使えるため実用性も兼ね備えています。

植物の成長を日々見守る喜びが、生活に新たな潤いと楽しみを与えてくれます。

自然とのつながりを深めるための知識

これまでにご紹介した自然の効果を、より深く理解し日々の生活に活かすための知識をご紹介します。

なぜ効果があるのか、どれくらいの時間触れれば良いのかを知ることで、自然との関わり方がより一層意味のあるものになります。

効果を最大化するためのヒントを探っていきましょう。

効果を実感するための時間と頻度の目安

自然との触れ合いは、長時間でなければ意味がないわけではありません。

大切なのは、生活の中に継続して取り入れることです。

2019年にイギリスのエクセター大学が発表した研究では、週に合計120分以上、自然の中で過ごすことで健康状態や幸福感が著しく向上すると示されました。

これは1日あたり約20分の計算になり、忙しい毎日でも実現可能な時間と言えます。

一度に長い時間を確保できなくても、通勤中の公園での小休憩やランチタイムの散歩など、短い時間を積み重ねることで心身への良い影響が期待できます。

子供の心と体の発達に与える好影響

自然との触れ合いは、感受性豊かな子供たちの心と体の成長に素晴らしい影響をもたらします。

屋外での遊びは、五感を刺激し、創造性や問題解決能力を育む絶好の機会です。

例えば、自然の中で遊ぶ時間は、子供の注意欠陥・多動性障害（ADHD）の症状を最大で20%軽減する可能性があるという研究報告もあります。

木登りや水遊びは身体能力を高め、友達との関わりの中で社会性を身につけることにもつながります。

親子で一緒に公園を探検したり、植物を育てたりすることは、子供の健やかな成長を促すだけでなく、家族の絆を深める貴重な時間になるでしょう。

知っておきたい「自然欠乏症候群」

「自然欠乏症候群（Nature-Deficit Disorder）」とは、アメリカのジャーナリストであるリチャード・ルーヴ氏が著書『あなたの子どもを自然の中へ』で提唱した、現代人が自然から切り離された生活を送ることで生じる心身の様々な問題を指す言葉です。

これは正式な病名ではありませんが、多くの人が抱える不調の原因を示唆しています。

主な症状	内容
注意力の散漫	集中力が続かず、物事への興味が薄れる
ストレス耐性の低下	小さなことでイライラしやすくなる
身体的な不調	肥満やアレルギーのリスク増加
感覚の鈍化	五感の働きが鈍り、感動する機会が減る
気分の落ち込み	うつ的な症状や不安感の増大

もしご自身の心身の不調に心当たりがあれば、それは自然との触れ合いが不足しているサインかもしれません。

素足で大地と繋がるアーシングという健康法

「アーシング（Earthing）」は、グラウンディングとも呼ばれ、素足や素手で直接地面に触れる健康法です。

靴や建物によって大地から絶縁された現代の生活では、体内に不要な電気が溜まりがちになります。

アーシングによって、その電気を放出し、地球が持つ自然なエネルギーを受け取ることで、心身のバランスを整える効果が期待されています。

アーシングを実践した被験者の約85%が、入眠までの時間が短縮されたと報告した研究もあります。

ほかにも、ストレスホルモンであるコルチゾールの正常化や、体内の炎症を抑える効果などが報告されており、手軽にできる健康法として注目を集めています。

公園の芝生や砂浜を少しの間、素足で歩くだけでも実践できるので、ぜひ試してみてください。

まとめ

この記事では、自然に触れることが心と体にもたらす科学的な効果と、都会の日常で手軽に実践できる方法を解説しました。

特に、ストレスホルモンを減らし集中力を高める効果は、多くの研究で証明されています。

まずは、今日の昼休みに5分だけでも、近くの公園を散歩することから始めてみませんか。

その小さな一歩が、心と体の調子を整える大きな変化につながります。