辻村深月 朝が来るのネタバレなしあらすじ｜小説と映画の感想と評価

辻村深月さんの小説『朝が来る』は、特別養子縁組をテーマに、血の繋がりだけではない家族のあり方を深く問いかける物語です。

子どもを望む夫婦と、我が子を手放した少女、それぞれの視点から描かれる心の葛藤は、先の読めないミステリーとして読む人の心を強く揺さぶります。

この記事では、ネタバレなしで以下の点について解説します。

『朝が来る』が描く家族の形と物語の魅力

『朝が来る』は、特別養子縁組というテーマを通じて、血の繋がりだけではない家族のあり方を深く問いかける物語です。

産みの親と育ての親、それぞれの視点から描かれる心の葛藤は、読む人の心を強く揺さぶります。

見出し	概要
辻村深月が紡ぐ特別養子縁組というテーマ	子どもを望む夫婦と手放した少女、双方の視点から描く社会派テーマ
ネタバレなしでわかる物語のあらすじ	謎の電話から始まる、平穏な日常が揺らぐミステリーの導入部
物語の鍵を握る主要登場人物たち	それぞれの立場で葛藤する栗原夫妻と産みの母ひかりの紹介
本屋大賞も納得の巧みなミステリー構成	2016年本屋大賞第5位に選ばれた、読者を引き込む物語の仕掛け

この作品は単なる感動的な家族の物語にとどまらず、先の読めないミステリーとしての側面も持ち合わせています。

それぞれの登場人物が抱える過去と現在の想いが交錯し、読者は物語の奥深さに引き込まれていくのです。

辻村深月が紡ぐ特別養子縁組というテーマ

この物語の核となる「特別養子縁組」とは、実の親との法的な親子関係を解消し、養親と新たに法的な親子関係を結ぶ制度です。

辻村深月さんは、この制度を題材に、子どもを授かりたいと切に願う夫婦と、予期せぬ妊娠によって子どもを手放さざるを得なかった少女、対照的な2つの立場から物語を紡ぎ出しました。

制度そのものを解説するのではなく、当事者たちの喜びや苦しみ、そして愛情を繊細に描くことで、読者一人ひとりが「家族とは何か」という問いと向き合うきっかけを与えてくれます。

ネタバレなしでわかる物語のあらすじ

物語は、長い不妊治療の末に栗原夫妻が特別養子縁組で男の子・朝斗を迎えるところから始まります。

ようやく手に入れた穏やかで幸せな日々。

しかし、朝斗が6歳になったある日、その日常は一本の電話によって崩れ去ります。

産みの母親を名乗る「片倉ひかり」と名乗る女から、「子どもを返してください」という脅迫めいた電話がかかってくるのです。

時系列	出来事
物語の始まり	栗原夫妻、不妊治療の末に特別養子縁組を決意
数年後	男の子を「朝斗」と名付け、幸せな日々を送る
6年後	産みの母を名乗る女から「子どもを返してほしい」という電話
物語の展開	電話の真相を追う中で、それぞれの過去が明らかになる

電話をかけてきた女は本当に朝斗の産みの母なのでしょうか。

その目的は何なのか。

この謎をきっかけに、これまで語られなかった過去の真実が少しずつ明らかになっていきます。

物語の鍵を握る主要登場人物たち

この物語は主に、子どもを愛情深く育てる栗原夫妻と、産みの母である片倉ひかり、それぞれの視点で描かれます。

登場人物	立場・背景
栗原 佐都子	主人公。長い不妊治療を経験し、朝斗の養母となる
栗原 清和	佐都子の夫。共に不妊治療を乗り越え、朝斗の養父となる
片倉 ひかり	朝斗の産みの母。中学生で妊娠・出産した過去を持つ

幸せな家庭を築く佐都子と清和、そして光の当たらない場所で生きるひかり。

異なる境遇にいる彼らの人生が交錯することで、物語はより一層深みを増していくのです。

本屋大賞も納得の巧みなミステリー構成

『朝が来る』は感動的な社会派ドラマであると同時に、読者の予想を裏切る巧みなミステリーとしての魅力も持っています。

その優れた物語性は、全国の書店員から熱い支持を集め、2016年の本屋大賞で第5位に選ばれました。

ミステリーのポイント	詳細
発端	「子どもを返して」と電話をかけてきた女の正体
構造	佐都子の「現在」とひかりの「過去」が交互に描かれる
謎	それぞれの視点から語られる出来事の食い違い
結末	すべての伏線が収束し、衝撃の真実が明らかになる

育ての親である佐都子の視点で描かれる「現在」と、産みの親であるひかりの視点で語られる「過去」。

この2つの時間軸が交互に進むことで、読者は少しずつ真相に近づいていきます。

散りばめられた伏線が一つに繋がるとき、物語は切ない真実を明らかにするのです。

原作小説と実写映画版の比較

辻村深月さんの『朝が来る』は、原作小説だけでなく、映画やテレビドラマとしても映像化されています。

それぞれのメディアが持つ特性を活かして物語が表現されており、どの作品から触れても異なる魅力と感動を味わえます。

原作の繊細な心理描写と、映像作品の視覚的な表現力の違いを楽しむのもおすすめです。

メディア形式	発表年	監督・著者	主要キャスト	特徴
原作小説	2015年	辻村深月	—	登場人物の緻密な心理描写とミステリー構成
映画版	2020年	河瀨直美	永作博美、蒔田彩珠	美しい映像美と俳優陣の魂のこもった演技
テレビドラマ版	2016年	—	安田成美、川島海荷	全8話構成で描かれる丁寧な物語展開

どのメディアも、特別養子縁組というテーマに真摯に向き合い、家族の形を問いかける骨太な物語です。

それぞれの違いを知ることで、作品への理解がより一層深まります。

辻村深月の原作小説とその文庫版

物語の原点である原作小説は、2015年に文藝春秋から刊行されました。

この作品は、単なる感動譚ではなく、先の読めない展開が読者を引き込む社会派ミステリーとして高く評価されています。

その物語性の高さから、2016年の本屋大賞では第5位に入賞しました。

全国の書店員から熱い支持を集めた事実は、この小説が持つ力の証明です。

現在は文庫版も発売されており、手に取りやすくなっています。

項目	内容
著者	辻村深月
発行日	2015年6月15日（単行本）
発行元	文藝春秋
形式	単行本、文庫、電子書籍

ページをめくるごとに深まる謎と、登場人物たちの感情の機微を丁寧に描いた文章表現は、原作小説だからこそ味わえる魅力と言えるでしょう。

河瀨直美監督による映画版の概要

映画版は、2020年10月23日に公開された河瀨直美監督の作品です。

原作の持つテーマ性を大切にしながら、光と影を巧みに使った美しい映像表現で物語を紡ぎ出します。

その芸術性は国内外で高く評価され、第73回カンヌ国際映画祭「Official Selection 2020」に選出される快挙を成し遂げました。

日本国内でも数々の映画賞を受賞し、大きな話題を呼びました。

受賞歴	内容
第45回報知映画賞	監督賞（河瀨直美）、助演女優賞（蒔田彩珠）
第75回毎日映画コンクール	女優助演賞（蒔田彩珠）、監督賞（河瀨直美）
第44回日本アカデミー賞	新人俳優賞（蒔田彩珠）など6部門で優秀賞
第94回キネマ旬報ベスト・テン	助演女優賞（蒔田彩珠）、日本映画ベスト・テン 第3位

小説とは異なるアプローチで、観る者の心に深く訴えかける力を持つ映画作品です。

原作を読んだ後に鑑賞すると、物語の世界をより立体的に感じられます。

永作博美や蒔田彩珠など映画版を彩る主要キャスト

映画『朝が来る』の大きな魅力の一つが、実力派俳優陣による魂のこもった演技です。

養親となる栗原夫妻を永作博美さんと井浦新さんが、そして物語の鍵を握る産みの母・片倉ひかりを蒔田彩珠さんが演じました。

特に、ひかり役を演じた蒔田彩珠さんの演技は圧巻で、報知映画賞や毎日映画コンクールで助演女優賞を受賞するなど、その年の映画賞を席巻しました。

彼女の表現力が、物語に説得力と深みを与えています。

キャスト	役名
永作博美	栗原佐都子
井浦新	栗原清和
蒔田彩珠	片倉ひかり
浅田美代子	浅見静恵

登場人物たちが抱える喜び、悲しみ、そして葛藤。

それらすべてを俳優陣が見事に体現することで、観客は物語の世界へ強く引き込まれるのです。

2016年放送のテレビドラマ版

映画化より前、2016年には東海テレビ制作・フジテレビ系「オトナの土ドラ」枠でテレビドラマ版が放送されました。

安田成美さんが主人公・栗原佐都子を、川島海荷さんが産みの母・片倉ひかりを演じ、話題を集めました。

映画版が約2時間20分という時間で物語を凝縮して描いているのに対し、テレビドラマ版は全8話構成で、登場人物たちの背景や心情の変化をより丁寧に追っています。

項目	内容
放送期間	2016年6月5日 – 7月31日
放送枠	オトナの土ドラ（東海テレビ制作・フジテレビ系）
主な出演者	安田成美、川島海荷、田中直樹

映画版や原作小説とはまた違ったキャストと演出で描かれる物語は、作品の新たな一面を発見させてくれます。

時間をかけてじっくりと物語の世界に浸りたい方には、テレビドラマ版も選択肢の一つになるでしょう。

読者と観客の心に響いた感想と評価

『朝が来る』は、小説・映画ともに多くの人々の心を捉え、高い評価を獲得しています。

物語の核となるのは、「家族とは何か」という普遍的でありながら、答えのない問いかけです。

特別養子縁組というテーマを通して、登場人物それぞれの立場から描かれる葛藤や愛情が、読者や観客に深い感動と思索の時間を与えます。

項目	原作小説	実写映画版
主な評価	2016年本屋大賞 第5位	カンヌ国際映画祭公式選出、国内映画賞多数受賞
感想の傾向	登場人物の緻密な心理描写への共感	キャストの魂のこもった演技と映像美への称賛
作品の魅力	先が気になるミステリーとしての構成	光と影を巧みに使った詩的な映像表現

原作小説と映画版は、それぞれ異なるアプローチで物語の核心に迫ります。

どちらから触れても、忘れられない体験となるでしょう。

小説読者のレビューに見る感動の声

辻村深月さんの原作小説は、読者の心を深く揺さぶり、「涙なしでは読めない」という感想が数多く寄せられています。

登場人物たちの喜びや絶望を、まるで自分のことのように感じさせる巧みな心理描写が、多くの共感を呼んでいます。

読書メーターには4,500件を超える感想が登録されており、その評価は74%と高い水準を記録しています。

特別養子縁組で子どもを迎えた夫婦と、我が子を手放さざるを得なかった産みの母、それぞれの視点が交錯することで、物語に一層の深みを与えています。

単なる感動小説ではなく、先の読めないミステリーとしての側面も持つ本作は、読後に自身の家族観について改めて考えるきっかけを与えてくれる一冊です。

映画鑑賞者の口コミと評判

2020年に公開された河瀨直美監督による映画版は、原作の感動を映像ならではの力強い表現で描き出し、高い評価を得ました。

特に、産みの母親である片倉ひかりを演じた蒔田彩珠さんの鬼気迫る演技は、観る者の胸に深く刻み込まれます。

その圧倒的な演技力は高く評価され、蒔田彩珠さんは第44回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞するなど、国内の主要な映画賞で助演女優賞を総なめにしました。

他にも、永作博美さんや井浦新さんといった実力派俳優陣が、役に深みを与えています。

評価のポイント
息をのむほど美しい自然の風景描写
キャスト陣、特に蒔田彩珠の圧巻の演技力
小説とは異なる解釈も楽しめる映画ならではの表現
重いテーマだが、観終えた後に希望を感じられる

原作ファンからも「小説とは違う感動があった」「映像で観てさらに理解が深まった」といった声が上がっており、小説を読んだ後に観ることで、より豊かな鑑賞体験ができます。

カンヌ国際映画祭をはじめとする輝かしい受賞歴

河瀨直美監督による映画『朝が来る』は、国内だけでなく海外でも高く評価されています。

その証として、世界で最も権威のある映画祭の一つ、第73回カンヌ国際映画祭の「Official Selection 2020」に選出されるという快挙を成し遂げました。

国内においてもその評価はゆるぎないものです。

報知映画賞や毎日映画コンクールで監督賞や助演女優賞に輝いたほか、第44回日本アカデミー賞では6部門で優秀賞を獲得するなど、数々の映画賞を受賞しています。

映画祭・映画賞	受賞内容
第73回カンヌ国際映画祭	「Official Selection 2020」選出
第45回報知映画賞	監督賞（河瀨直美）、助演女優賞（蒔田彩珠）
第75回毎日映画コンクール	女優助演賞（蒔田彩珠）、監督賞（河瀨直美）
第44回日本アカデミー賞	新人俳優賞（蒔田彩珠）など6部門で優秀賞
第94回キネマ旬報ベスト・テン	日本映画ベスト・テン 第3位、助演女優賞（蒔田彩珠）

これらの輝かしい受賞歴は、映画『朝が来る』が、物語、演技、映像表現のすべてにおいて質の高い作品であることを客観的に示しています。

「ひどい」という感想の理由考察（ネタバレなし）

『朝が来る』の感想の中には、少数ながら「ひどい」という言葉が見受けられます。

これは作品の出来が悪いという意味ではなく、むしろ逆で、登場人物たちが直面する現実があまりに過酷で、心をえぐられるような気持ちになったという評価の表れです。

物語では、不妊治療の苦しみ、予期せぬ妊娠、貧困といった、目を背けたくなるような社会の側面が克明に描かれています。

これらの描写は胸が張り裂けそうになるほどリアルであるため、深く感情移入した結果、「つらい」「苦しい」と感じ、「ひどい」という言葉で表現する人もいます。

この「ひどい」という感想は、それだけ物語が人の心を強く動かす力を持っている証左といえます。

つらい現実を描きながらも、その先にある希望や救いを描き出す、力強い作品です。

小説と映画『朝が来る』に触れる方法

この物語の感動に触れるには、原作小説を読む方法と、実写映画を観る方法があります。

どちらから触れても物語の核となるテーマを深く感じ取れるため、ご自身の好みやライフスタイルに合わせて選ぶことが大切です。

それぞれの特徴を理解して、最適な方法を見つけてください。

項目	小説	映画
主な媒体	単行本、文庫、電子書籍	動画配信サービス、DVDなど
特徴	登場人物の繊細な心情や背景を深く追体験できる	俳優の演技や映像美によって物語への没入感が高まる
おすすめの人	自分のペースでじっくりと物語の世界を味わいたい人	視覚的な表現を通して直感的に感動を味わいたい人

どちらの方法を選ぶかによって、物語から受け取る印象も少しずつ変わってきます。

まずは、あなたが最も心惹かれる方法で『朝が来る』の世界の扉を開いてみましょう。

小説の入手方法、単行本・文庫・電子書籍

原作小説の最大の魅力は、文字を通して登場人物たちの繊細な心の動きを、自分のペースでじっくりと追体験できる点にあります。

この物語は2015年6月に文藝春秋から刊行され、346ページにわたる読み応えのある長編小説です。

現在では単行本だけでなく、手軽に持ち運べる文庫本や、すぐに読める電子書籍でも入手できます。

形式	出版社	メリット
単行本	文藝春秋	作品の世界観を存分に味わえる装丁
文庫本	文藝春秋	持ち運びやすく通勤時間などでも読み進められる
電子書籍	文藝春秋	購入後すぐに、いつでもどこでも読むことが可能

全国の書店やオンラインストアで、自分に合った形式を探すことができます。

ページをめくるごとに深まる物語に、きっと心を揺さぶられます。

映画の視聴が可能な動画配信サービス

河瀨直美監督が手掛けた映画版は、美しい映像と永作博美さんや蒔田彩珠さんといった実力派俳優陣の魂の演技が、原作とは異なる新たな感動を生み出します。

2020年10月23日に公開され、産みの母ひかりを演じた蒔田彩珠さんは、第44回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞するなど、その演技が高く評価されました。

物語の持つ光と影を、見事にスクリーン上で表現しています。

現在、映画『朝が来る』は下記の動画配信サービスで視聴できます。

サービス名	配信状況	特徴
U-NEXT	見放題	31日間の無料トライアル期間を利用可能
Amazon Prime Video	レンタル	プライム会員であれば気軽にレンタル視聴できる
Netflix	見放題	多様な映画作品と共に楽しむことができる

※配信状況は2024年6月時点のものです。

最新の情報は各サービスの公式サイトをご確認ください。

動画配信サービスを利用すれば、自宅にいながら、いつでも好きな時に『朝が来る』の世界に浸れます。

小説を読んだ後に映画を観ることで、登場人物の表情や風景の美しさが加わり、物語への理解が一層深まることでしょう。

まとめ

この記事では、辻村深月さんの小説『朝が来る』のあらすじや魅力を、ネタバレなしで解説しました。

この物語は、特別養子縁組をテーマにしながら、血の繋がりだけではない「家族のあり方」とは何かを深く問いかける、感動と驚きに満ちた作品です。

この物語が投げかける問いに、まずは小説でじっくりと向き合うか、あるいは映画で俳優陣の魂の演技と共に体感するか、あなたが最も心惹かれる方法で触れてみてください。