東野圭吾の『犯人のいない殺人の夜』を読もうか迷っている方へ。
この記事では、ネタバレを一切せずに、7つの物語のあらすじや魅力を徹底解説します。
本作は、単なる犯人当てのミステリーではなく、人間の心の闇に深く迫る珠玉の短編集です。
初期作品ならではの切れ味と、読後にずっしりと残る独特の余韻が多くの読者を惹きつけています。

どんな話が収録されているのか、結末は知らずに知りたいな



この記事を読めば、各作品の雰囲気を掴んでから安心して読み始められますよ。
- 『犯人のいない殺人の夜』に収録された全7作品のあらすじ
- 東野圭吾の初期作品ならではの魅力と独特な読後感
- ドラマ化の情報や他の読者からの評価
東野圭吾『犯人のいない殺人の夜』の全体像と3つの魅力
『犯人のいない殺人の夜』は、単なる犯人当てのミステリーではありません。
7つの物語を通して、人間の心の内に潜む光と闇を鮮やかに描き出す、珠玉の短編集です。
魅力 | 特徴 |
---|---|
深い心理描写 | 7つの物語で人間の複雑な感情や動機に迫る |
初期作品の切れ味 | 若き日の東野圭吾ならではの独創的なアイデアとトリック |
独特の余韻 | すっきりしない結末がもたらす、心に残るずっしりとした読後感 |
これらの魅力が絡み合い、読者はページをめくる手が止まらなくなります。
一編読むごとに、人間の業の深さに考えさせられる、そんな知的な興奮を味わえる一冊です。
7つの物語で人間の心理に深く迫る構成
本作は、それぞれ独立した7つの物語を収録した短編集です。
単に事件の謎を解くだけでなく、登場人物がなぜその行動に至ったのか、という心理や動機に焦点が当てられています。
収録されている7つの物語は、殺人、失踪、自殺といった重いテーマを扱いながらも、その背景にある嫉妬、愛情、見栄、後悔といった人間の普遍的な感情を丁寧に描き出します。



短編集って、一つひとつの話が短くて物足りなくない?



ご安心ください。どの物語も長編に引けを取らないほど濃密で、心に深く刻まれますよ。
物語ごとに異なる人間ドラマが展開されるため、最後まで飽きることなく、人間の心の複雑さを多角的に楽しめます。
若き日の東野圭吾が描く初期作品ならではの切れ味
初期作品とは、作家のキャリアの初期に書かれた作品群を指します。
『犯人のいない殺人の夜』に収録された作品群は、後の大ベストセラー作家となる東野圭吾さんの、才能の萌芽を感じさせます。
本書に収められているのは、1985年から1988年にかけて発表された作品です。
後の円熟した作風とは異なる、荒削りながらも独創的なアイデアや意欲的なトリックが随所に見られます。



『ガリレオ』シリーズとかとは雰囲気が違うの?



はい、良い意味で違います。後の作品に繋がるテーマの原型を見つける楽しみもありますよ。
この時期ならではの鋭い感性が光る物語は、長年のファンはもちろん、初めて東野作品に触れる読者にも新鮮な驚きを与えてくれるのです。
読後にずっしりと心に残る独特の余韻
この短編集の大きな特徴は、すべての物語が単純な勧善懲悪で終わるわけではない点です。
読んだ後に、ずっしりとした重みやほろ苦さが心に残る作品が多く含まれています。
犯人が捕まって一件落着、という爽快感だけでなく、事件の裏に隠されたやるせない真実や、救われない登場人物の姿が描かれることで、読者は物語の世界から簡単には抜け出せません。



後味が悪いミステリーは、少し気分が落ち込まないか心配…。



その「割り切れなさ」こそが、人間の心の複雑さを映し出していて、深く考えさせられるきっかけになります。
この割り切れない感情こそが、人間の業の深さや社会の矛盾を問いかけてくるのです。
忘れられない読書体験を求める人にこそ、この独特の余韻を味わってほしいと思います。
ネタバレなしで解説する全7収録作品のあらすじ
この短編集には、それぞれ独立した7つの物語が収められています。
そのため、どの話から読んでも楽しめるのが大きな魅力です。
通勤電車の中や寝る前の少しの時間でも、物語の世界に没頭できます。
収録作品名 | 物語のテーマ |
---|---|
小さな故意の物語 | 友の死の真相を探る青春ミステリー |
闇の中の二人 | 家庭内に潜む秘密と悲劇 |
踊り子 | 憧れの少女の失踪を追う少年の物語 |
エンドレス・ナイト | 亡き夫の知られざる顔を追う妻の旅 |
白い凶器 | オフィスに渦巻く人間の悪意 |
さよならコーチ | 師弟関係の裏に隠された衝撃の真実 |
犯人のいない殺人の夜 | 完璧な殺人計画の綻び |
各作品は人間の心理を深く掘り下げており、読後にはずっしりとした余韻が残ります。
それでは、一つひとつの作品を詳しく見ていきましょう。
小さな故意の物語
高校の屋上から転落死した親友。
警察は事故として処理しようとしますが、主人公の行雄は納得できません。
彼は親友が誰かに突き落とされたのではないかと疑い、たった一人で真相を探り始めます。
友を思う純粋な気持ちが、切ない真実を浮かび上がらせる、胸に迫る青春ミステリーです。



事故なの?それとも誰かが…?



友を思う気持ちが、思わぬ真相を炙り出します。
親友の死の裏に隠された、少年少女たちの「小さな故意」とは何か。
その結末は、あなたの心に静かな問いを投げかけるでしょう。
闇の中の二人
ある家庭で、生後3ヶ月の赤ちゃんが何者かに殺害されるという衝撃的な事件が起こります。
家族の誰もが口を閉ざす中、殺された赤ちゃんの兄である中学生の様子に、担任教師は違和感を覚えます。
家庭という閉鎖された空間でうごめく、人間の深い闇を描いた作品です。



家族の中に犯人がいるってこと…?



誰もが秘密を抱えている、息詰まるような展開が待っています。
教師の視点から徐々に明らかになる家族の秘密。
その重苦しい真実は、読んでいるこちらの心にも突き刺さります。
踊り子
塾帰りの少年がいつもバスの中から見かける、新体操の練習に打ち込む美しい少女。
彼女の姿は、少年の日常にとってささやかな光でした。
しかしある日、少女は練習場から忽然と姿を消してしまいます。
これは単なる家出なのか、それとも事件に巻き込まれたのか。



これは事件なの?それともただの失踪?



少年の淡い恋心が、意外な真実へと繋がっていきます。
憧れの少女を探す少年の純粋な行動が、思わぬ物語を紡ぎ出す、少しビターで忘れがたい一編です。
エンドレス・ナイト
大阪への単身赴任中に夫が殺害されたという知らせを受けた妻の章子。
彼女は、大嫌いな街である大阪へと向かいます。
そこで彼女が目にしたのは、自分の全く知らなかった夫のもう一つの顔でした。
夫はなぜ殺されなければならなかったのか、その真相を探る物語です。



夫婦なのに、知らない一面があったのかな。



夫が愛した街で、妻は衝撃の事実に直面します。
事件の謎を追ううちに、夫婦とは何か、愛とは何かを問い直していく、大人のためのミステリーと言えます。
白い凶器
とある食品会社で、まず森崎課長が社屋から転落死します。
続いて、部下であった安部係長が交通事故で死亡。
警察は二つの死を事故と判断しますが、同僚たちはその偶然に疑問を抱きます。
オフィスという日常的な空間に潜む、人間の悪意がじわじわと浮かび上がる作品です。



一見すると無関係な事故に見えるけど…



日常に潜む悪意が、じわじわと暴かれていきます。
誰にでも起こりうる職場の人間関係が、取り返しのつかない悲劇に繋がる様子を描いた、身近な恐怖を感じさせる一編です。
さよならコーチ
名門女子高アーチェリー部の女性部員が、自宅で自殺するという事件が起きました。
現場には「コーチ、さようなら」という不可解なメッセージが残されていました。
彼女の死は本当に自殺だったのか。
部員たちから慕われていたコーチが、教え子の死の真相に迫ります。



メッセージには何が書かれていたんだろう…



信頼していたコーチだからこそ、たどり着けた真相があります。
スポーツの世界を舞台に、信頼していた師弟関係が崩れていく様子と、事件の真相が巧みに描かれています。
犯人のいない殺人の夜
この短編集の表題作であり、物語は殺人を犯した側から始まります。
著名な建築家である主人と、その家族や愛人が共謀し、完璧な殺人計画を実行します。
死体もなく、すべてが計画通りに進むはずでしたが、被害者の兄の登場によって、その歯車が少しずつ狂い始めます。



犯人がわかっているのに、どうして面白いんだろう?



計画の綻びから生まれる緊張感が、この物語の醍醐味です。
犯人たちの視点で描かれることで、彼らの焦りや恐怖がダイレクトに伝わってくる、倒叙ミステリーの傑作です。
ドラマ化もされた作品の評価と口コミ
小説の面白さを測る上で、映像化されているかや、他の読者がどう感じたかは重要な指標になります。
この短編集は、テレビドラマの原作にも選ばれており、多くの読書家から高い評価を受けている点が特徴です。
評価のポイント | フジテレビ系列『東野圭吾ミステリーズ』 | 読書メーター |
---|---|---|
メディア形式 | テレビドラマ | 書評・口コミサイト |
評価の主体 | 制作陣・視聴者 | 一般読者 |
収録作の扱い | 5作品を原作として映像化 | 全7作品への感想・レビュー |
ドラマというプロの視点と、読書メーターに集まる一般読者の声、両方の側面から作品の魅力を探っていきましょう。
フジテレビ系列『東野圭吾ミステリーズ』の原作
『東野圭吾ミステリーズ』は、東野圭吾さんの短編小説を原作とした、一話完結型のテレビドラマシリーズです。
本作からは、収録されている7作品のうち5作品が選ばれ、豪華キャストによって映像化されました。
2012年7月から9月にかけてフジテレビ系列で放送され、中井貴一さんがナビゲーターを務めました。
唐沢寿明さん、坂口憲二さん、松下奈緒さんといった主役級の俳優が各話で主演を務めたことからも、原作の物語がいかに魅力的であるかがわかります。
原作タイトル | ドラマ放送回 | 主な出演者 |
---|---|---|
さよならコーチ | 第1話 | 唐沢寿明、田中麗奈 |
犯人のいない殺人の夜 | 第2話 | 坂口憲二、八嶋智人 |
エンドレス・ナイト | 第3話 | 松下奈緒、田中圭 |
小さな故意の物語 | 第9話 | 三浦春馬、波瑠 |
白い凶器 | 第10話 | 戸田恵梨香、平岡祐太 |



ドラマ化されるほどの作品なら、面白さは保証されている感じがしますね。



そうなんです。プロの目から見ても映像化したいと思わせる、ストーリーの完成度の高さがうかがえます。
ドラマを先に観た方も、原作ならではの心理描写や細かな伏線を読むことで、物語をより深く楽しめることでしょう。
読書メーターにおける読者の感想や評価
「読書メーター」は、読んだ本の記録や感想を共有できる日本最大級の書評サイトです。
多くの読書好きが集まるこのサイトでの評価は、本の面白さを判断する上で参考になります。
『犯人のいない殺人の夜』は、この読書メーターで6,700人以上が登録し、1,200件を超える感想やレビューが寄せられています。
これは、発売から年月が経った作品としては注目すべき数字です。
項目 | データ |
---|---|
登録数 | 6761件 |
感想・レビュー数 | 1209件 |
総合評価 | 62% |
寄せられた感想の多くは、初期作品ならではの切れ味や、後味の悪さも含めた読後感の深さを評価するものです。
多くの人がこの短編集に心を揺さぶられていることがわかります。
『犯人のいない殺人の夜』がおすすめな人と作品情報
本書は、人間の心理の深淵を覗くような、濃密な読書体験を求める方にぴったりの一冊です。
ミステリーとしての面白さはもちろん、読んだ後に心にずっしりと残る何かがあります。
ここでは、どのような方にこの作品が響くのかを解説し、書籍の基本情報もまとめました。
骨太なミステリーで知的好奇心を満たしたい人
本書が提供するのは、単なる犯人当てに留まらない、人間の心の動きや複雑な動機に焦点を当てた物語です。
なぜその人は罪を犯したのか、その背景には何があったのか。
物語の奥にある人間ドラマが、読者に深い問いを投げかけます。
収録されている7つの物語は、どれも読者の推理力を試すだけでなく、読後も「なぜ?」と考えさせるテーマ性を持っています。
日常に知的な刺激を求めている方にとって、最高の時間を提供してくれる作品です。



単純な謎解きだけじゃ物足りないんです



その知的好奇心、この本が満たしてくれますよ
人間の心理の闇や社会の矛盾を鋭く切り取った物語は、あなたの知的好奇心を存分に刺激します。
通勤中など隙間時間で楽しめる一冊を探している人
本書は7つの独立した物語で構成された短編集であるため、一つの物語が数十ページで完結します。
長編小説のように、登場人物や伏線をずっと覚えておく必要がありません。
例えば、片道の通勤時間である30分から1時間もあれば、一つの物語を読み終えることが可能です。
それぞれの物語が独立しているので、どこから読んでも楽しめますし、少しずつ読み進めるのに適しています。



長編小説だと、途中で話がわからなくなりがちで…



短編集なら、毎回新鮮な気持ちで物語に入り込めます
日々の忙しい生活の中でも、質の高いミステリーで気分転換をしたい方に最適な一冊です。
東野圭吾作品の原点に触れたい人
本書に収録されているのは、東野圭吾さんが1980年代後半に執筆した初期の作品群です。
後の大ベストセラー作家となる著者の、才能の萌芽を感じ取れる貴重な一冊といえます。
1990年に単行本が刊行された本作には、後の『白夜行』や『容疑者Xの献身』といった長編大作にも通じるテーマが見られます。
ファンにとっては、著者の作風の変遷や原点を探る楽しみもあるでしょう。



最近の東野作品しか読んだことがありませんでした



後の巨匠がどのように才能を開花させたか、その軌跡を辿れます
荒削りながらも光るアイデアや意欲的なトリックの数々に触れることで、東野圭吾という作家をより深く理解できます。
書籍の基本情報-光文社文庫版
この短編集の元になった単行本は1990年に刊行され、1994年に光文社文庫から文庫版が登場しました。
手に取りやすい文庫版の基本情報は以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
著者 | 東野 圭吾 |
出版社 | 光文社 |
レーベル | 光文社文庫 |
刊行日 | 1994年1月20日 |
ページ数 | 336ページ |
よくある質問(FAQ)
- この短編集はどの収録作品から読むのがおすすめですか?
-
どの物語も独立しているため、基本的には目次を見て気になったタイトルから読んで問題ありません。
もし迷うようでしたら、ドラマ化もされた表題作『犯人のいない殺人の夜』や『さよならコーチ』から読み始めると、この作品集の持つ独特の雰囲気を掴みやすいです。
- ミステリー初心者ですが、トリックや伏線は難しい内容ですか?
-
ご安心ください。
本作は複雑なトリックで読者を試すというより、登場人物たちの心の動きや人間関係の機微に重点を置いています。
そのため、ミステリー初心者の方でも難解だと感じることはなく、上質な人間ドラマとして面白いと感じられます。
- 感想で見る「後味が悪い」とは、具体的にどんな結末なのですか?
-
物語の多くは、必ずしも悪が裁かれる勧善懲悪の結末を迎えるわけではありません。
人間の弱さややるせなさが描かれるため、読後にずっしりとした重みが心に残ります。
しかし、それは不快なものではなく、人間の心の奥深さについて考えさせられる知的な余韻です。
- 学生の読書感想文の題材として適していますか?
-
はい、とても適しています。
『小さな故意の物語』など、友人関係や家族の問題といった、若い世代にも通じる普遍的なテーマを扱った作品が収録されています。
事件の真相だけでなく、なぜそうなってしまったのかという動機について深く考察できるため、読書感想文を書きやすい一冊になります。
- 感情移入できる登場人物はいますか?
-
本作に登場するのは、特別な能力を持つ探偵ではなく、ごく普通の学生や会社員といった一般の人々です。
彼らが抱える嫉妬や愛情、後悔といった感情が丁寧に描かれているため、誰かしらの登場人物に共感し、感情移入しながら物語を読み進められます。
- 東野圭吾さんの他の初期作品と比べて、どんな特徴がありますか?
-
この作品集は、後の科学ミステリーなどとは異なり、人間の「悪意」や「心の闇」そのものに焦点を当てた物語が多い点が特徴です。
デビュー間もない頃ならではの、荒削りながらも鋭い切れ味と、人間の心理を深く見つめる東野圭吾さんの作風の原点を感じ取れます。
まとめ
この記事では、東野圭吾さんの短編集『犯人のいない殺人の夜』の魅力を、ネタバレなしで解説しました。
本作は、7つの物語を通じて人間の心理の奥深さを描き出し、読後にずっしりとした重みが残る独特の読後感が味わえる、初期の傑作です。
- 人間の心の闇に深く迫る7つの物語
- 読後にずっしりとした余韻を残す独特の結末
- 若き日の東野圭吾の才能が光る初期の傑作
通勤中などの短い時間でも、骨太なミステリーの世界に没頭できます。
ぜひ本書を手に取って、忘れられない読書体験を味わってみてください。