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【感想・考察】道尾秀介『いけない』レビュー – 最後の1ページで、すべてが反転する体験型ミステリー

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最初に

「読書なのに、まるで謎解きゲームのようだった」
「誰かと感想戦したくなる小説は久しぶり」

そんな読後感を味わえる作品が、道尾秀介さんの『いけない』です。
この記事では、『いけない』をまだ読んでいない方にも魅力が伝わるように、ネタバレなしで感想と考察をお届けします。
最後まで読むと、きっとあなたも「もう一度、最初から読み返したくなる」——そんな一冊です。

『いけない』とは?【基本情報】

  • 著者: 道尾秀介
  • ジャンル: ミステリー(短編集形式)
  • 構成: 全3章+終章
  • 仕掛け: 各章に”写真”が挿入されており、それが真相を覆すカギとなる

『いけない』は、ただの短編集ではありません。
全体は3つの物語と終章で構成されていますが、それぞれの物語に”仕掛け”が施されており、最後の1ページに挟まれた「写真」によって、読者の認識がガラリと変わります。

1回読んだだけでは終わらない、”再読が前提”の構成が特徴です。

『いけない』(道尾秀介)

感想|読者の「思い込み」が暴かれる読書体験

『いけない』の最大の魅力は、読者自身が物語を「都合よく理解してしまう」という心理を逆手に取った構成にあります。

  • 写真が入ってくるまでは、物語はある”方向性”に見える
  • 写真を見た瞬間、読み取っていた「前提」が崩れる
  • そこからもう一度、文章を読み返すと「全く違う物語」が浮かび上がる

という、前代未聞の読書体験が待っています。

また最終章では、3つの物語が1本の線で結びつき、「あの描写の意味って、もしかして…?」と考察が止まらなくなります。
読了後、誰かと「ここ気づいた!?」と話したくなること必至です。

各章の印象と読みどころ(ネタバレなし)

第1章「弓投げの崖を見てはいけない」

自殺の名所で起きた一件の交通事故。
最初は不幸な出来事にすぎなかったはずが、関係者の思惑が絡まり合い、静かに”想像を超えた展開”が待ち受けています。

第2章「その話を聞かせてはいけない」

友達のいない少年が目撃したのは、果たして”現実”なのか”妄想”なのか。
読者の信頼と不信が交錯する、心理ミステリーのような一編。少年の語り口に、あなたはどこまで耳を傾けられるでしょうか?

第3章「絵の謎に気づいてはいけない」

とある宗教団体で発生した事件を追う刑事コンビ。
“絵”というモチーフが登場し、視覚と心理のギャップがじわじわ効いてきます。
物語を追いかけているつもりが、いつの間にか”読者自身”が仕掛けの中にいる、そんな章です。

終章「街の平和を信じてはいけない」

この終章に到達したとき、バラバラだったはずの物語たちが一気に結びつきます。
そして、タイトル『いけない』の意味も、まったく別の角度から浮かび上がってきます。

こんな人におすすめ!

  • ミステリーに”驚き”や”仕掛け”を求める人
  • 読後の「考察タイム」や「感想戦」を楽しみたい人
  • 読者としての自分が試されるような小説を読みたい人

まとめ|『いけない』は「読後」が本番のミステリー

道尾秀介さんの『いけない』は、読者の”認知”や”先入観”をテーマにした、まさに体験型のミステリーです。

  • 先入観に囚われたまま読むと「見落とす」
  • 写真を手がかりに読み返すと「浮かび上がる」
  • そして最終章で「すべてが反転する」

——こんな読書体験、他にはなかなかありません。
ぜひ、先入観を捨てて挑んでみてください。
この本があなたに問いかけてくるのは、「いったい何を信じていたのか?」という、自分自身なのかもしれません。

『いけない』(道尾秀介)

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