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【ネタバレなし】雫井脩介「霧をはらう」の感想と評判|3つの見どころを解説

雫井脩介さんの小説『霧をはらう』は、社会に潜む理不尽さや偏見という「霧」に、あなたも無関係ではないと問いかける物語です。

この記事では、法廷ミステリーの枠を超えた重厚な社会派ドラマである本作の魅力を、ネタバレを一切含まずに、読者のリアルな感想や評判を交えながら解説します。

読後感が重すぎないか、自分に合う作品か知りたい

ご安心ください、この記事を読めば購入前に作品の魅力と読後感がしっかりわかります

目次

雫井脩介『霧をはらう』が問う社会の理不尽さ

この物語が問いかけるのは、単なる事件の真相だけではありません。

一度貼られたレッテルや思い込みがいかに人の目を曇らせ、真実を遠ざけてしまうのかという、社会に潜む根深い理不尽さです。

本作は、ある日突然、殺人事件の容疑者となった母親とその家族の姿を通して、人間の弱さや司法の危うさ、そして信じることの難しさを浮き彫りにします。

法廷での攻防だけでなく、登場人物一人ひとりの心の葛藤が丁寧に描かれており、読者は物語の世界に深く引き込まれるでしょう。

法廷ミステリーの枠を超えた社会派ヒューマンドラマ

この作品は、謎解きを楽しむだけの法廷ミステリーではありません。

むしろ、事件の当事者やその家族が、社会の偏見や無関心によってどのように追い詰められていくかを描いた重厚な社会派ヒューマンドラマとしての側面が強いのです。

読書メーターでは660件を超える感想が寄せられており、その多くがミステリーとしての面白さに加え、物語のテーマ性や人間描写の深さに言及しています。

『火の粉』や『犯人に告ぐ』でもそうだったように、雫井脩介は常に「日常の裏側にある不穏」を描いてきた作家だ。だが『霧をはらう』では、これまでのサスペンス色の強い作品とは少し異なり、むしろヒューマンドラマとしての深みを強く感じる。彼はただ“事件”を描くのではない。“事件の後”を描く。その冷静で誠実なまなざしが、本作ではいっそう研ぎ澄まされている。

https://booklog.jp/item/1/4344037944

ただのミステリー小説とは違うの?

はい、犯人捜しだけでなく、事件が人々の心に落とす影まで丁寧に描いているのが大きな特徴です。

息をのむ法廷劇と、胸に迫る人間ドラマが見事に融合しており、読後に深い問いを投げかけてきます。

偏見という名の「霧」に立ち向かう人々の苦悩と希望

物語のタイトルにもなっている「霧」とは、世間の先入観やメディアによる一方的な報道、そして個人の思い込みといった「偏見」を象徴しています。

日本の刑事裁判における有罪率は99.9%とも言われており、一度容疑者と見なされると、その「霧」をはらって無実を証明することがいかに困難であるかが、本作ではリアルに描かれます。

「刑事裁判ってのは、国という大きな存在が個人を裁くんだ。それだけなら一方的な戦いだよ。裁判員や裁判官にしても、その人のことを知らないわけだから、どうしても疑心暗鬼になる。霧の中で不気味なシルエットを見るようなものだ。人を襲う獣なのかもしれないという目で見てる。だから、まとわりついている霧を払って、その人を一人の人間として見てもらうようにする必要がある。弁護士がそれをやる。…」

https://booklog.jp/item/1/4344037944

登場人物たちは、この目に見えない霧の中で懸命にもがき、時に傷つきながらも、真実を信じようとします。

その姿は、読者の心に確かな希望の光を灯してくれるのです。

日常の違和感に心を痛めるあなたにこそ読んでほしい一冊

ニュースで流れる事件報道の裏側や、職場や人間関係の中で感じる言葉にできない割り切れなさに、心を痛めた経験はありませんか。

ソースの感想には、「職場の理不尽なイジメも読んでて辛かった」「一度でもイジメを受けた、見逃してしまった人には私も含めて、自問させられる内容です」といった声があり、多くの読者が作中の出来事を自分事として受け止めていることがわかります。

人はどんな強い人だって、他に味方がいない状態だと弱い。
弱くなると人は狡い事もするし、黙ってしまう。
本当の事を言えなくなる。
それがどんなに自分を傷つけてしまうかー。

https://booklog.jp/item/1/4344037944

読んでいると辛くならないかな…?

確かに胸が苦しくなる場面もありますが、それ以上に、誠実に真実と向き合う登場人物の姿に勇気をもらえますよ。

この物語は、そんなあなたの心のモヤモヤにそっと寄り添い、社会や他者を見る目に新たな視点を与えてくれるでしょう。

ネタバレなしでわかる『霧をはらう』3つの見どころ

この物語がなぜ多くの読者の心を揺さぶるのか、その魅力をネタバレなしで3つのポイントに絞って解説します。

社会の不条理や人間の心の奥深さに触れる、重厚な読書体験があなたを待っています。

見どころ1, 冤罪事件の恐ろしさを描く圧倒的なリアリティ

この物語の核心は、冤罪事件がいかにして作られてしまうのか、その過程を克明に描いている点です。

特に、日本の刑事裁判における有罪率が99.9%という数字が、主人公たちが直面する絶望的な状況に重くのしかかります。

決定的な証拠がないにもかかわらず、一度してしまった自白や周囲の憶測という見えない「霧」が、容疑者とされた母親を追い詰めていく様子は、息苦しいほどの緊張感に満ちています。

読者はまるで弁護団の一員として、この困難な裁判に挑んでいるかのような感覚を味わうのです。

ニュースで見る冤罪事件って、どうして起こるんだろう…

この物語は、その「なぜ」に迫るリアルな過程を描いていますよ

自分はやっていないと証明することの難しさ、そして社会が作り出す偏見の恐ろしさを、本作は鋭く問いかけてきます。

見どころ2, 「加害者家族」が直面する過酷な現実

本作は、逮捕された容疑者の視点だけでなく、「加害者家族」というもう一つの視点から物語を深く掘り下げています。

事件が当事者だけでなく、その家族の人生をも狂わせてしまうという厳しい現実が、読者の胸に突き刺さるのです。

母親が逮捕された後、残された娘たちは「加害者の家族」というレッテルを貼られ、世間からの冷たい視線や職場での理不尽ないじめに苦しみます。

この生々しい描写は、私たちが普段ニュースの向こう側で起きていることとして見過ごしがちな、当事者たちの痛みを伝えてくれます。

自分だったら、この状況に耐えられるだろうか…

家族の苦しみを通じて、事件の多面的な影響を考えさせられます

物事を単純な善悪二元論では語れない、その複雑さと向き合わされる点も、この物語が持つ大きな魅力です。

見どころ3, 絶望に差す光、若手弁護士のひたむきな信念

暗く重いテーマが続く中で、物語に希望の光を灯すのが若手弁護士の存在です。

彼は、不利な状況にも臆することなく、依頼者に人として向き合おうとします

勝算が低いとされる裁判で、彼はただ法律の知識を駆使するだけではありません。

まとわりつく憶測や偏見という「霧」を一つひとつ丁寧にはらおうと、地道な調査を続け、依頼者の心に寄り添い続けます。

その誠実でひたむきな姿勢が、絶望的な状況の中に確かな救いをもたらします。

こんな誠実な人が本当にいるのかな?

彼の存在が、人を信じることの尊さを教えてくれます

彼の奮闘を通じて、読者はどんな困難な状況でも諦めないことの大切さと、人を信じることの温かさを改めて感じ取るのです。

「深く考えさせられた」人間心理の巧みな描写への高評価

読者からは、物語のテーマの深さや、人間の心理描写の巧みさを評価する声が数多く寄せられています。

善悪や被害/加害といった単純な二項対立では語れない、人間の複雑な内面が丁寧に描かれている点が、多くの共感を呼んでいるのです。

この小説の秀逸さは、善悪や被害/加害といった単純な二項対立を拒む点にある。誰かが完全に正しく、誰かが完全に間違っているわけではない。
むしろ、登場人物それぞれが抱える葛藤や矛盾が丁寧に描かれ、読者は一方に肩入れすることなく、ただ“人間”という存在の複雑さと向き合わされる。

この物語は裁判のお話だけれど、そんな大きなことでなくても、他人を自分の都合の良いフィルターを通して見てしまう、人とはそういうものだと思います。
ましてや事件の容疑者ともなれば、どうしても先入観を持ってその人を見てしまうでしょう。

これらの感想からも分かるように、物語を読むことで、自分自身が無意識のうちに持っている偏見や先入観について考えさせられます。

ミステリーとしての面白さ、二転三転する緊迫の法廷劇

社会派ヒューマンドラマとしての側面に加え、純粋な法廷ミステリーとしての面白さも高く評価されています。

特に、裁判が進むにつれて二転三転する緊迫の法廷劇は、読者を物語の世界に強く引き込みます。

裁判の辺りになってからどんどん面白くなって、最後に明かされる真実にも驚かされた。

裁判中のところも、証言が公判でどう話されるのか分からなかったり、検事と弁護士の論争など、緊迫感があり読み応えがありました。

弁護側と検察側のスリリングな攻防や、最後まで予測できない展開が、512ページというボリュームを感じさせません。

ページをめくる手が止まらなくなるほどの、夢中にさせる力を持っています。

「読んでいて辛い」リアルすぎる描写への正直な意見

この作品には、多くの賞賛とともに、いくつかの正直な意見も寄せられています。

その一つが、「加害者家族」が受けるいじめなど、あまりにリアルな描写が読んでいて辛いというものです。

由惟の職場の理不尽なイジメも読んでて辛かった。裁判の辺りになってからどんどん面白くなって、最後に明かされる真実にも驚かされた。

ただ個人的に、職場の嫌がらせや、言っても信じて貰えないという苦しさが溢れる部分が、読むに耐えられなかったです。そこも今回の事件と重ね合わせた描写なんでしょうが、読むのに挫折しかけました。

リアルなのはいいけど、あまりに辛いと読むのがしんどそう…

その辛さがあるからこそ、物語のテーマがより強く心に響くんですよ

これらの苦しい描写があるからこそ、登場人物たちが置かれた状況の過酷さがより深く伝わり、終盤の展開が一層胸に迫るという側面もあります。

物語の読後感を左右する登場人物たちの個性

『霧をはらう』の魅力を語る上で欠かせないのが、登場人物たちの存在です。

読者が感情移入したり、時には苛立ちを感じたりするほど人間味にあふれている点が、物語に奥行きを与えています。

登場人物それぞれの個性がしっかり伝わるところ、内容の分かりやすさなどはよかったです。

すこし変わった母親とそれ故に頑なで冷淡な長女、素直で純粋な次女、情に満ちた正しい目を持つ弁護士の伊豆原。こんな弁護士が世の中を救っていくんだろうな。

それぞれの登場人物が抱える葛藤や弱さ、そして強さが丁寧に描かれているため、読者は彼らの心の動きに寄り添いながら物語を読み進めることになります。

彼らの存在が、読後も心に残る深い余韻を生み出しているのです。

『霧をはらう』の書籍情報と多様な読書スタイル

『霧をはらう』は、あなたの読書スタイルに合わせて様々な形式で楽しむことができます。

紙のページをめくる感触を大切にしたい方から、移動中に耳で物語を追いたい方まで、ライフスタイルに合わせて最適な読書体験を選べるのが魅力です。

それぞれの特徴を理解し、ご自身にぴったりの一冊を見つけてください。

どの形式を選んでも、この物語が持つ重厚なテーマと心を揺さぶる展開は変わりません。

ご自身の環境や好みに合わせて、物語の世界への扉を開いてみましょう。

単行本と文庫版の基本情報

書籍には大きく分けて、作品が最初に世に出る形である「単行本」と、その後に手軽なサイズで再版される「文庫版」があります。

単行本はハードカバーで装丁がしっかりしており、所有する喜びを感じさせてくれます。

一方、文庫版はソフトカバーで軽量なため、持ち運びに便利で価格も手頃になるのが一般的です。

『霧をはらう』の単行本は、2021年7月28日に幻冬舎から発売され、全512ページという読み応えのあるボリュームです。

物語の世界観を大切にしながら、じっくりとページをめくりたい方には単行本が向いています。

やっぱり紙の本でじっくり読みたいけど、どっちがいいのかな?

物語の世界に深く浸りたいなら単行本、外出先でも気軽に読みたいなら文庫版がおすすめです。

ご自身の読書スタイルを考えて、どちらの形式でこの重厚な物語と向き合うか選んでみてください。

Kindle版で手軽に読む選択

Kindle版は、お使いのスマートフォンやタブレットですぐに読める電子書籍です。

紙の本とは異なり、読みたいと思った瞬間に購入してダウンロードすれば、すぐに物語の世界に入ることができます。

満員電車の中やちょっとした待ち時間でも、手軽に読書を進められるのが大きな利点です。

『霧をはらう』は512ページと厚みがありますが、Kindle版なら端末1つで軽々と持ち運べます

また、文字の大きさを自分好みに調整したり、気になった部分に印をつけたりする機能も便利です。

セールやキャンペーンの対象になることも多く、紙の書籍よりお得に入手できる機会もあります。

通勤時間にサクッと読みたいんだけど、電子書籍はどう?

はい、Kindle版なら重い本を持ち歩く必要がなく、いつでもどこでも物語の続きを読むことができますよ。

荷物を増やしたくない方や、日々の隙間時間を有効活用したい方にとって、Kindle版は最適な選択肢と言えるでしょう。

安達祐実さんの朗読が評判のAudible版

Audible(オーディブル)版は、プロのナレーターが朗読した書籍を耳で楽しむ「聴く本」です。

家事をしながら、車を運転しながら、あるいはウォーキング中など、手がふさがっていても耳が空いていれば、いつでもどこでも読書体験ができます。

文字を読むのが苦手な方でも、物語の世界にスムーズに入っていけるのが魅力です。

『霧をはらう』のAudible版は、俳優の安達祐実さんが朗読を担当しており、その表現力の高さが多くのリスナーから絶賛されています

登場人物の心情を巧みに表現する声の演技によって、物語への没入感が一層深まります。

**ありママさんの感想**
Audibleで上下巻を聴き、安達祐実さんのナレーションが声色をいくつも使い分けていて素晴らしかったです。
加害者家族として由惟が職場でうける仕打ちや、証人尋問で事前打ち合わせと違う内容を証言する人には腑が煮え繰り返りましたが、気になる展開で一気に聴いてしまい、わりとおもしろかったです。
最後の章で全てが明らかになりますが、そこだけ急に展開が早く感じました。
じっくりじわじわと霧を払いながら進んでいただけに頭よりも感情がついていけず惜しく感じました。
由惟の気持ちの変化の描写が丁寧なところや、登場人物それぞれの個性がしっかり伝わるところ、内容の分かりやすさなどはよかったです。

https://booklog.jp/item/1/4344037944

読書する時間がないけど、物語は楽しみたい…

Audible版なら、家事や移動中など耳が空いている時間を使って、臨場感あふれる物語を体験できます。

普段なかなか読書の時間を確保できないという方も、Audible版なら生活の中に物語を取り入れることが可能です。

安達祐実さんの朗読で、よりドラマティックにこの物語を味わってみてはいかがでしょうか。

よくある質問(FAQ)

『霧をはらう』の映画化や続編の予定はありますか?

2024年現在、公式に映画化やドラマ化、続編の発表はありません。

しかし、読者からは映像化を期待する声も多く上がっています。

重厚な人間ドラマと緊迫感のある法廷劇は、映像作品としても見ごたえのあるものになるでしょう。

雫井脩介さんの他の作品と比べてどんな特徴がありますか?

『犯人に告ぐ』のようなサスペンス色の強い作品と比べ、『霧をはらう』は社会派ヒューマンドラマの側面がより強いという特徴があります。

事件の謎解きだけでなく、事件が当事者やその家族の心に落とす影を深く描いている点もポイントです。

雫井脩介作品が初めての方にも、長年のファンの方にもおすすめできる一冊になります。

読後感はスッキリしますか?読んだ人の感想が気になります。

多くの読者の感想では、重いテーマを扱いながらも、真実に誠実に向き合う登場人物の姿に救いを感じ、最後には希望を見いだせるという評価が多く見られます。

ただし、社会の理不尽さをリアルに描いているため、考えさせられる部分も多く残るでしょう。

完全にスッキリするというより、心に深く刻まれる読後感が特徴です。

文庫版は発売されていますか?

はい、2024年4月10日に幻冬舎から文庫版が発売されました。

単行本よりも手軽に持ち運べるため、外出先で読書を楽しみたい方におすすめです。

この作品は電子書籍や、耳で楽しむオーディオブックなど様々な形式で楽しむことができます。

物語の登場人物には共感できますか?

人物描写が非常に巧みで、登場人物それぞれが抱える葛藤や弱さが丁寧に描かれています。

そのため、読者によって共感する人物や、逆に苛立ちを感じる人物は様々です。

どの登場人物の視点に立つかによって、物語の評価や受け取り方が変わってくるのも、この作品の魅力の一つと言えます。

この物語が読者に伝えたいことを一言で要約すると何ですか?

「思い込みや偏見という『霧』をはらい、一人の人間として他者と向き合うことの大切さ」だと要約できます。

有罪率99.9%という数字が示す司法の現実や、社会の無関心といった大きなテーマを通して、人が人を信じることの難しさと尊さを問いかけています。

まとめ

雫井脩介さんの『霧をはらう』は、社会に渦巻く偏見や思い込みという「霧」をテーマにした、単なる法廷ミステリーの枠を超えた物語です。

特に、絶望的な状況下でも真実を信じ、懸命に戦う人々の姿は、私たちの心に強く訴えかけます。

もしあなたが日々のニュースや人間関係に言葉にできない割り切れなさを感じているなら、この物語が新たな視点を与えてくれます。

ぜひ一度手に取って、この重厚な読書体験を味わってみてください。

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