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【ネタバレなし】岩井圭也『この夜が明ければ』のあらすじと3つの魅力を解説|感想と評価まとめ

岩井圭也さんの『この夜が明ければ』は、単なる犯人探しでは終わりません。

人間の弱さと社会の闇を鋭くえぐり出し、読後に自分の価値観を揺さぶられる社会派ミステリーです。

この記事では、ネタバレなしのあらすじや登場人物、読者の心を掴む3つの魅力を解説します。

あなたがこの本を読むべきか判断できる情報をまとめました。

ありきたりなどんでん返しには、少し飽きてしまったかも…

管理人

物語の前提が覆るほどの衝撃的な結末が、あなたを待っています

この記事でわかること

目次

岩井圭也『この夜が明ければ』とは心を抉る社会派ミステリー

岩井圭也さんの『この夜が明ければ』は、単なる犯人当てのミステリーではありません。

人間の弱さや現代社会が抱える問題を鋭く描き出し、読後に深い問いを投げかける社会派ミステリーです。

息もつかせぬサスペンスの中に、登場人物たちの痛切な告白が胸に迫ります。

この物語が持つ独特の魅力について、あらすじや登場人物、書籍情報といった側面から詳しく見ていきましょう。

舞台は北海道-閉鎖空間での一夜の物語

物語の舞台は、北海道の港町で行われる水産加工の季節労働。

これは、外部から隔絶された閉鎖的な環境を意味します。

食住が提供される環境で2ヶ月間、カラフトマスを捌く単調な日々。

しかし、仲間の一人の死をきっかけに、その空間は疑心暗鬼が渦巻く極限状態へと一変します。

一夜という限られた時間で真実を探す設定が、物語に凄まじい緊迫感を与えています。

閉鎖空間での物語は、息が詰まりそう…

管理人

その息苦しさこそが、登場人物たちの心理を深く掘り下げ、読者を物語の世界へ引き込むのです

逃げ場のない状況で繰り広げられる人間ドラマは、読んでいるこちらの心臓の鼓動さえも速くさせます。

ネタバレなしのあらすじ

主人公の工藤秀吾は、25歳の青年。

彼は他の6人の男女と共に、夏季限定の水産加工アルバイトに参加していました。

ある夜、バイトのリーダー格だった中野大地が遺体で発見されたことで、平穏な日常は崩れ去ります。

秀吾が警察に通報しようとした瞬間、他のメンバーたちが必死にそれを制止します。

なぜなら彼らはそれぞれ、警察には知られたくない秘密を抱えていたからです。

身の潔白を証明するため、そして夜が明ける前に真実を見つけ出すため、彼らは一人ずつ自らの罪を告白し始めます。

それぞれの秘密を抱える登場人物たち

この物語に登場するのは、年齢も背景もバラバラな男女7人。

彼らに共通しているのは、皆がそれぞれ何かから逃れるようにしてこの場所にたどり着いたという点です。

登場人物たちの告白は、単なる罪の告白にとどまりません。

その一つひとつが短編小説になりうるほど濃密で、彼らの人生そのものを描き出します。

彼らが抱える問題は、現代社会で多くの人が直面している閉塞感と地続きです。

登場人物たちに共感できるのかな?

管理人

彼らの状況は決して特別なものではなく、自分や身近な誰かの物語として読むことができます

読み進めるうちに、あなたは登場人物の誰かに自分を重ね合わせ、彼らの秘密が決して他人事ではないことに気づくはずです。

文庫版などの書籍情報

『この夜が明ければ』は、手に取りやすい双葉社の文庫版が刊行されています

電子書籍版もあるため、自分の読書スタイルに合わせて選べるのが嬉しい点です。

作品の基本的な情報を以下の表にまとめました。

通勤時間や休日のひとときに、この濃密な一夜の物語を体験してみてはいかがでしょうか。

読者の心を掴む『この夜が明ければ』3つの魅力

この小説の最大の魅力は、ただの犯人探しで終わらない、人間の心理と社会の闇を深くえぐる重厚な物語性にあります。

読者を惹きつけてやまない3つの魅力と、専門家や読書家からの評価を解説します。

息をのむノンストップ・サスペンス

物語は、北海道の水産加工アルバイト先で仲間の死体が発見されるという衝撃的な場面から始まります。

しかし、残された人々は警察に通報せず、一夜という限られた時間の中で真実を突き止めようとします。

2ヶ月間の季節労働という閉鎖された環境で、登場人物たちの疑心暗鬼が渦巻く様子は、ページをめくる手を止められなくさせるほどの緊張感に満ちています。

犯人捜しだけのミステリーは少し飽きてしまったかも…

管理人

この物語は犯人探しに加え、極限状態での人間の心理描写が秀逸です

なぜ彼らは警察を呼ばないのか、その謎が物語全体を貫く大きな推進力となり、読者をぐいぐいと引き込みます。

現代社会の問題を映し出す登場人物の秘密

物語の核となるのは、登場人物たちが一人ずつ告白していく「秘密」です。

彼らが抱える秘密は、単なる個人的な事情にとどまらず、現代社会が抱える格差や偏見といった問題を色濃く反映しています。

書評にあるように、彼らを追い詰めた状況は決して他人事ではありません。

読者は物語を通して、自分が誰かを追い詰める側になっていないかと自問させられるのです。

それぞれの告白は重く、胸に迫るものがあり、社会派ミステリーとしての深みを与えています。

巧みな伏線と衝撃のどんでん返し

物語の随所に散りばめられた小さな違和感や何気ない会話が、終盤で一気に収束していく構成は見事です。

すべての告白が終わり、事件の真相が見えたかと思った先に、物語の前提を覆すような驚きの結末が待っています。

結末が予想できると、少し残念な気持ちになります

管理人

ミステリー好きの方でも、このどんでん返しにはきっと驚くはずです

この鮮やかな結末によって、物語をもう一度読み返したくなることでしょう。

書評家・大矢博子による絶賛レビュー

書評家の大矢博子氏は、双葉社の文芸WEBマガジン「カラフル」に掲載されたレビューでこの作品を高く評価しています。

特に、「ミステリとしてもレベルが高い一冊」と評しており、サスペンスとしての完成度の高さを称賛しました。

■『この夜が明ければ』 岩井圭也  /大矢博子[評]
_**季節バイトに集まった7人の男女。1人が殺され、残る6人の秘密が次々と暴かれていく。正しさの意味を問うノンストップ・サスペンス!**_
25歳の工藤秀吾は、北海道の港町で行われる水産加工の季節バイトに参加した。大量に水揚げされたカラフトマスを捌く仕事で、2ヶ月間、食住が提供される。
同じバイトに集ったのは、彼を含めて7人の男女。仕事にも慣れ、各人の個性も少しずつわかり、空き時間にはサイクリングに出かけたり談笑したり、夜には宿舎のロビーで酒盛りをしたりという日々を送っていた。
ところがある日、バイトのリーダー格である中野大地が砂浜で死体となって発見された。秀吾は慌てて警察に電話しようとするが、なんと6人中4人が通報に反対する。そのうち脅迫状らしきものが見つかって他殺の可能性が増すが、それでもなぜか警察に届けることを頑なに拒む人々。そこにはそれぞれ、人には言えない秘密があった──。
犯人ではないかと疑われ、行動の不自然さを指摘され、彼らは仕方なくひとりずつ秘密を語り始める。そこからはもう一気呵成だ。ページをめくる手が止まらなくなった。
その秘密をここに書くわけにはいかないが、皆がそれぞ何かから逃げている、ということまでは言ってもいいだろう。個々人の物語はそれだけで何本もの短編小説が書けるほど濃密で、胸に迫る。
彼らの置かれた状況が決して特異なものではないということに留意されたい。今も多くの人が彼らと同じような閉塞感に直面し、足掻いている問題ばかりなのだ。むしろ彼らは逃げることができてよかった、とすら思える。そして何よりここで大事なのは、彼らをそこまで追い詰めた側はそれが正しいと思い込んでいる、ということだ。
描かれるのは逃げた者たちの話だが、読みながら、自分は追い詰める側になってはいないかと何度も自問した。むしろそちらこそが本書の眼目と言っていい。
保身のため、あるいは自分の利益のため、誰かを犠牲にすることを、私たちは当然と思っていないか。自分の価値観で人を判断し、合わない場合は相手に非があると考えてはいないか。さまざまな格差が自己責任の名のもとに切り捨てられる今、本当にそれでいいのかと本書は鋭く問いかけてくる。これは逃げる側の話ではない。人を逃げざるを得ない状況に追い込む者の話なのである。そうと気づいたとき、背筋を冷たいものが走った。
そして終盤に待つ意外な真実。一夜だけの物語とした構成も、伏線の張り方もともに巧妙で、ミステリとしてもレベルが高い一冊である。

https://colorful.futabanet.jp/articles/-/3650

このレビューは、本作が単なる社会派小説ではなく、一級のエンターテインメント作品でもあることを証明しています。

読書メーターでの高い評価

多くの読書家が集まるレビューサイト「読書メーター」でも、『この夜が明ければ』は高い評価を得ています。

2024年6月時点で単行本には800件以上の登録があり、多くの読書好きから注目されていることがわかるでしょう。

具体的な感想の内容は確認できませんでしたが、多くの人がレビューを投稿していることから、活発な議論を呼ぶ作品であると言えます。

著者・岩井圭也の経歴とおすすめの作品

『この夜が明ければ』の深い物語を生み出した著者がどのような人物なのかを知ることで、作品をより一層楽しめます。

岩井圭也さんは、デビュー以来、人間の心理や社会が抱える問題に鋭く切り込む作品を次々と発表し、文学界で注目を集める作家の一人です。

岩井圭也さんは、社会派ミステリーから歴史小説まで、幅広いジャンルで人間の本質に迫る物語を紡ぎ出しています。

どの作品から読んでも、その世界観に引き込まれるでしょう。

著者・岩井圭也のプロフィール

岩井圭也さんは、1987年大阪府生まれの小説家です。

2018年に『永遠についての証明』で小説家としてデビューし、その後も数々の文学賞にノミネートされるなど、現代の日本文学界で注目を集めています。

デビューから数年で数々の候補に選ばれる実力派作家であり、今後の活躍が期待されます。

『われは熊楠』など他の注目作品

岩井圭也さんの魅力は『この夜が明ければ』だけにとどまりません。

直木賞候補にもなった『われは熊楠』をはじめ、読み応えのある作品がそろっています。

例えば『最後の鑑定人』や『楽園の犬』は第76回と第77回の日本推理作家協会賞候補に、『完全なる白銀』は第36回山本周五郎賞候補に選ばれるなど、その実力は高く評価されています。

他の作品はどんなジャンルがあるんだろう?

ミステリーから歴史小説まで、多彩な作品が楽しめますよ

ミステリーファンはもちろん、重厚な人間ドラマを読みたい方にも、岩井さんの作品はおすすめです。

この物語がおすすめな人

「ただ面白いだけの小説じゃ物足りない」「読んだ後に何か考えさせられる物語が好き」そんなあなたにこそ、『この夜が明ければ』はおすすめです。

特に、社会が抱える問題に関心がある方や、人間の心理描写が巧みなミステリーが好きな方なら、きっとこの物語の世界に深く没入できます。

この小説は、読書を通して日常では得られないような刺激や、物事を深く考えるきっかけを求めているあなたの知的好奇心を満たしてくれる一冊です。

まとめ

この記事では、岩井圭也さんの社会派ミステリー『この夜が明ければ』の魅力を、ネタバレなしのあらすじや読者の感想を交えて解説しました。

この物語の最大の魅力は、単なる犯人探しでは終わらない、読後に自分の価値観を揺さぶられる重厚な人間ドラマです。

もしあなたが日常に物足りなさを感じ、心を深く揺さぶるような読書体験を求めているなら、ぜひこの一夜の物語を手に取ってみてください。

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