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吉本ばなな『ミトンとふびん』の感想とあらすじ|評価と口コミをネタバレなしで徹底レビュー

日々の生活で心が少し乾いてしまったと感じる時、物語にそっと寄り添ってほしいと思うことはありませんか。

吉本ばななさんの短編集『ミトンとふびん』は、大きな事件が起こるわけではありませんが、日常に潜むささやかな光を見つめる物語です。

大切な人との別れというテーマを扱いながらも、物語は決して重苦しくなく、読んだ後には温かい毛布にくるまれたような優しい気持ちになります。

なんだか心が疲れている私でも、穏やかな気持ちで読めるかな?

管理人

はい、この物語は傷ついた心にそっと寄り添ってくれるお守りのような一冊です

目次

心が疲れた時に寄り添う、吉本ばなな『ミトンとふびん』という物語

日々の生活に追われ、心が少し乾いてしまったと感じる時、物語の世界に救いを求めたくなることはありませんか。

吉本ばななさんの短編集『ミトンとふびん』は、そんな時にそっと寄り添ってくれるお守りのような一冊です。

この物語は、人生の大きなうねりや劇的な事件を描くのではなく、静かで穏やかな時間の中に存在する、ささやかな光を見つめています。

大切な人との別れという普遍的なテーマを扱いながらも、不思議と心が温かくなる、独特の世界観が広がっているのです。

大切な人との別れを静かに描く世界観

物語の根底に流れるのは「死」や「喪失」というテーマですが、決して重苦しい悲劇として描かれることはありません。

むしろ、人生の自然な一部として、静かに受け入れられていく様子が淡々と綴られます。

登場人物たちは、大切な人を失った悲しみを抱えながらも、絶望に打ちひしがれるのではなく、その事実と共に日常を生きていきます。

それはまるで「だって、しょうがないよね」と、どうしようもない現実をそっと肯定してくれるかのようです。

この静かな受容の姿勢が、読者の心にもじんわりと染み渡ります。

重いテーマだと、読むのがつらくなりませんか?

管理人

大丈夫です。悲しみの中に温かい光を見出すような、不思議な優しさに満ちていますよ。

この作品の世界観は、無理に前を向かせようとはしません。

ただ、悲しみのそばに静かに座り、同じ時間を共有してくれる友人のような存在です。

大きな事件が起こらない、穏やかな時間の流れ

著者自身が「何ということもない話」「大したことは起こらない」と語るように、この短編集には読者の心を激しく揺さぶるような出来事は起こりません

しかし、その「何も起こらない」時間こそが、この物語の最大の魅力です。

刺激的な展開がないからこそ、登場人物たちの繊細な心の動きや、見過ごしてしまいがちな日常の風景の美しさが際立ちます。

まるで登場人物たちと一緒に旅先のカフェで過ごしているかのような、穏やかな時間が流れていくのです。

展開がないと、退屈に感じてしまわないでしょうか?

管理人

刺激的な面白さとは違いますが、日常に潜む愛おしさに気づかせてくれる、心に深く沁みる読書体験ができます。

慌ただしい毎日から少しだけ離れて、物語の中に流れるゆったりとした時間に身を任せることで、こわばっていた心が自然とほぐれていくのを感じられます。

読後に残る温かい毛布のような余韻

6つの短編を読み終えた時、心に残るのはまるで温かい毛布にくるまれたような、じんわりとした幸福感です。

物語ははっきりとした結末や教訓を示すわけではありませんが、読者の心に小さな灯りをともしてくれます。

登場人物たちが抱える喪失感や悲しみに触れることで、自分自身の心の痛みも優しく包み込んでもらえるような感覚になります。

悲しいけれど、決して絶望的ではない。

むしろ、その先にある穏やかな再生の予感が、静かな希望を与えてくれるのです。

まさに私が求めていた読書体験かもしれません。

管理人

心の栄養を探しているのなら、きっとこの本があなたにとって大切なお守りになりますよ。

『ミトンとふびん』は、明日からまた頑張ろうと背中を押すのではなく、「そのままで大丈夫」と隣で微笑んでくれるような一冊です。

世界を巡る6つの短編と物語のテーマ

『ミトンとふびん』の魅力は、世界各地を舞台にした美しい情景と、すべての物語に共通して流れる普遍的なテーマにあります。

6つの物語はそれぞれ独立しながらも、ゆるやかにつながる共通のテーマを持っています

この短編集は、世界中に散らばる6つの物語で構成されています。

それぞれの物語の舞台と、全体を貫くテーマについて見ていきましょう。

収録作品一覧

本書には、以下の6つの短編が収められています。

吉本ばななさん自身が「何ということもない話」と語るように、どの物語も穏やかに進んでいきます。

それぞれの短編は独立しているため、どの物語から読んでもばななワールドの世界観に浸ることができます。

金沢やヘルシンキなど旅情を誘う舞台

この物語の魅力の一つは、登場人物たちが訪れる場所の空気感まで伝わってくるような、旅情あふれる描写です。

石川県の金沢から始まり、フィンランドのヘルシンキ、台湾、イタリア、沖縄まで、6つの物語はそれぞれ異なる土地で紡がれます

まるで上質な紀行文を読んでいるかのように、その土地の光や風、匂いまで感じられるようです。

読むだけで旅行気分を味わえそうですね

管理人

はい、まるで登場人物と一緒にその場所を旅しているような感覚になりますよ

美しい風景描写が、登場人物たちの心象風景と重なり合い、物語に深みを与えています。

作品全体を流れる「喪失」と「再生」

この短編集全体に共通しているのは、「喪失」と、そこからの静かな「再生」というテーマです。

大切な人との死別や予期せぬ別れなど、登場人物たちはさまざまな形で喪失を経験します。

しかし、物語は絶望を描くのではなく、残された人々がその哀しみと共にどう生きていくのかを静かに見つめます

それは劇的な復活劇ではなく、日常の中で哀しみを受容し、溶かしていく過程です。

大きな出来事を乗り越えるのではなく、ただ時間と共に哀しみを受け入れていく姿は、読者の心に温かい光を灯してくれるのです。

読者からの評価と口コミに見る『ミトンとふびん』

実際に『ミトンとふびん』を読んだ人々は、どのような感想を抱いたのでしょうか。

この作品の評価は、読者が物語に何を求めるかによって、受け取り方が変わってくる点に特徴があります。

読者から寄せられた口コミをもとに、この物語が持つ魅力と、読む人を選ぶ可能性について見ていきましょう。

「肩の力が抜ける」という感想の数々

多くの読者が共通して感じているのは、読後に訪れる「肩の力が抜ける」ような穏やかな感覚です。

人生における「死」や「別れ」といった重いテーマを扱いながらも、物語は悲壮感に満ちているわけではありません。

登場人物たちはただ静かに現実を受け入れ、日常を生きていきます。

あ~~~、なんか、**脱力**・・・。
いいとか、悪いとかじゃなく、肩の力が抜けていく感じ。
元気が出ると、いう感じでもない。
悲しくてたまらない、という感じでもない。
あぁ、、それでも、また明日はやってくる、、、そんな感じ。
大事な人との離別、あるいは死という永遠の別れ、、、、
徐々に近づいて来る死の足音、あるいはある日突然すべてを奪っていく死。
誰の日常に、いつ訪れてもおかしくない、出来事。
それは、悲劇ではないのかもしれない。
なんだか、、、「だって、しょうがないよね」って言ってしまうような感覚。

https://megureca.hatenablog.com/entry/2023/02/28/084612

心が疲れている時に読むと、どんな気持ちになれるんだろう?

管理人

悲しみが癒えるというより、そっと受け入れられる感覚になりますよ。

大きな感動や元気をもらうというよりは、どうしようもない出来事を静かに肯定してくれるような優しさが、この物語にはあります。

慌ただしい日々の中で少し疲れた心に、じんわりと沁みわたる読書体験ができるのです。

ばななワールドが好きな人からの共感

吉本ばななさんの作品に親しんできたファンからは、「これぞばななワールド」という共感の声が多く寄せられています。

「ばななワールド」とは、喪失感を抱えながらもどこか夢見心地のような浮遊感が漂う、吉本ばななさん特有の世界観を指す言葉です。

本作には、その空気感が色濃く反映されています。

6つの短編に登場する人々は、大きな悲しみを経験しながらも、不思議な出会いや出来事を通して、静かに前を向いていきます。

ばななワールドだなぁ、って感じ。

https://megureca.hatenablog.com/entry/2023/02/28/084612

昔から吉本ばななさんの作品が好きなんだけど、この本も楽しめるかな?

管理人

はい、まさにファンの方が求める空気感が詰まった一冊です。

淡々とした日常の中に、ふとした瞬間に訪れる幻想的な風景や心の動きを描く手法は、長年のファンにとって心地よい読書時間を提供します。

これまでの作品が好きだった方なら、安心してその世界に浸れる作品だと言えます。

刺激的な展開を求める人には向かない可能性

『ミトンとふびん』は、穏やかな読後感が魅力である一方、物語に起伏や刺激的な展開を期待する読者には、少し物足りなく感じられるかもしれません。

著者自身が「大したことは起こらない」と語るように、この短編集では劇的な事件や意外な結末は描かれません。

物語は登場人物たちの内面や、流れていく時間を淡々と映し出すことに重きを置いています。

そのため、はっきりとしたストーリー展開を好む人にとっては、退屈に感じてしまうことも考えられます。

あとがきにある、ばななさんの言葉が、この本をそのまま語っている。
”**何ということもない話。**
**大したことは起こらない。**
**登場人物それぞれにそれなりに傷はある。**
**しかし彼らはただ人生をながめているだけ。**”

https://megureca.hatenablog.com/entry/2023/02/28/084612

なんとも、、ほんとに、大したことは起きないお話。だけど、夢の中のようでいて、現実。なるほど、こういう作品が、谷崎潤一郎賞か。。。

https://megureca.hatenablog.com/entry/2023/02/28/084612

この作品を手に取る際は、心を揺さぶるドラマではなく、静かな時間に寄り添ってくれる物語を求めているかどうかで、得られる満足感が変わってきます。

第58回谷崎潤一郎賞受賞作の書籍情報

『ミトンとふびん』は、その静謐な物語世界が高く評価され、文学賞も受賞しています。

購入前に知っておきたい書籍としての基本情報を、ここで詳しく確認しておきましょう。

この物語は単行本だけでなく、文庫や電子書籍でも読むことが可能です。

著者と出版社の情報

著者は、独特の死生観や世界観で多くの読者を魅了し続けている吉本ばななさんです。

本作は、2021年12月20日に新潮社から刊行されました。

総ページ数は256ページと、6つの物語が収められた短編集として、手に取りやすいボリュームになっています。

吉本ばななさんの作品は久しぶりだけど、やっぱりこの空気感が好きだな

管理人

独特のばななワールドは健在で、ファンならずとも引き込まれますよ

デビュー以来、第一線で活躍し続ける作家と、数々の名作を世に送り出してきた出版社による一冊は、物語の世界に深く浸りたいあなたにぴったりです。

単行本と文庫、電子書籍での入手

『ミトンとふびん』は、単行本、文庫、電子書籍という3つの形式で手に入れることができます。

それぞれの特徴を理解して、ご自身の読書スタイルに合ったものを選んでみてください。

紙の質感を楽しみたい方は単行本、通勤時間など隙間時間に読みたい方は文庫や電子書籍を選ぶと、より快適な読書体験ができます。

第58回谷崎潤一郎賞受賞という評価

本作は刊行の翌年である2022年に、第58回谷崎潤一郎賞を受賞しました。

谷崎潤一郎賞とは、その年に発表された小説・戯曲の中から、文学性の高い作品に贈られる歴史ある文学賞です。

大きな事件が起こるわけではない静かな物語の中に、人間の根源的な感情や人生の真実を描き出した点が高く評価されました。

文学賞を受賞した作品って、少し難しそうなイメージがあるかも…

管理人

ご安心ください、文章はとても読みやすく、すっと心に入ってきますよ

権威ある文学賞を受賞したという事実は、この物語が持つ普遍的な魅力と、文学的な価値の高さを証明しています。

よくある質問(FAQ)

この短編集は、どんな気分の時に読むのがおすすめですか?

心が少し疲れている時や、穏やかな気持ちで過ごしたい夜に読むことをおすすめします。

刺激的な展開がある物語ではないため、静かに自分の心と向き合いたい時にぴったりです。

読後は、温かい毛布にくるまれたような、じんわりとした幸福感に包まれます。

収録作品はどこから読んでも楽しめますか?

はい、どの物語から読み始めても楽しむことができます。

この本は6編からなる短編集で、それぞれの収録作品は独立しています。

ただし、全体を通して「死」や「別れ」といった共通のテーマが流れているので、順番に読み進めると、より深く吉本ばななさんの世界観を味わえます。

谷崎潤一郎賞を受賞した作品ですが、内容は難しくないですか?

権威ある谷崎潤一郎賞を受賞した作品ですが、物語の内容は決して難解ではありません。

吉本ばななさんの文章はとても平易で読みやすく、すっと心に入ってきます。

専門的な知識がなくても、登場人物たちの感情に自然と寄り添えるはずです。

『ミトンとふびん』の文庫版は出版されていますか?

はい、出版されています。

最初に新潮社から単行本が発売された後、幻冬舎から文庫版も刊行されました。

通勤時間や旅行のお供にしたいなど、手軽に持ち運びたい方は文庫を選ぶと良いでしょう。

ネタバレなしで、作品全体の雰囲気を教えてください。

この物語は、全体を通してとても穏やかで静かな時間が流れています。

大きな事件は起こらず、さまざまな場所に暮らす登場人物たちの日常や心の動きが丁寧に描かれるのが特徴です。

悲しみを扱いながらも不思議な優しさに満ちた、独特の「ばななワールド」が広がっています。

いわゆる「泣ける話」とは違うのでしょうか?

大切な人との別れがテーマですが、涙を誘うような劇的な感動とは少し異なります。

どうしようもない現実を静かに受け止め、それでも続いていく人生をそっと肯定してくれるような物語です。

読後に心がじんわりと温かくなる、優しい読後感がこの作品の魅力になります。

まとめ

吉本ばななさんの『ミトンとふびん』は、大きな事件が起こるわけではない静かな物語ですが、大切な人との別れというテーマを通して、読んだ後に心がじんわりと温かくなる短編集です。

心が少し疲れてしまった時、穏やかな物語の世界にそっと浸りたいあなたに、ぜひ手に取ってほしい一冊です。

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