森博嗣のデビュー作にして最高傑作である『S&Mシリーズ』を味わい尽くすには、刊行された時系列順にすべての作品を読み進めるのが絶対のルールです。
犀川創平と西之園萌絵の繊細な関係性の変化や工学ミステリーとしての魅力をあますところなく紹介し、全10作の読む順番とあらすじをネタバレなしで徹底解説します。
アニメを見て興味を持ちましたが、いきなり途中から読んでも物語についていけるか不安です



キャラクターの距離感や伏線は巻を追うごとに深まるため、必ず第1作から順番に読むことを強く推奨します
- 迷わずに完走できるS&Mシリーズの読む順番
- ネタバレなしで解説する全10作のあらすじ
- 読了後に楽しむVシリーズとのつながり
S&Mシリーズ読む順番は時系列の刊行順
森博嗣のデビュー作であり、理系ミステリの金字塔であるS&Mシリーズを楽しむ唯一の正解は、第1作から第10作まで刊行順に読み進めることです。
| 順番 | タイトル | 読み仮名 |
|---|---|---|
| 1 | すべてがFになる | すべてがえふになる |
| 2 | 冷たい密室と博士たち | つめたいみっしつとはかせたち |
| 3 | 笑わない数学者 | わらわないすうがくしゃ |
| 4 | 詩的私的ジャック | してきしてきじゃっく |
| 5 | 封印再度 | ふういんさいど |
| 6 | 幻惑の死と使途 | げんわくのしとしと |
| 7 | 夏のレプリカ | なつのれぷりか |
| 8 | 今はもうない | いまはもうない |
| 9 | 数奇にして模型 | すうきにしてもけい |
| 10 | 有限と微小のパン | ゆうげんとびしょうのぱん |
迷うことなく上から順に手に取ることで、作者が計算した演出を完璧に体験できます。
キャラクターの関係性が変化する物語の構造
S&Mシリーズとは、国立N大学工学部の犀川創平助教授と西之園萌絵という師弟コンビが難事件を解決する物語です。
シリーズを通して、少しずつ変化していく全10作分の二人の距離感こそが、トリックや謎解きと並ぶ最大の読みどころとなります。
| 刊行順に読むメリット |
|---|
| 主人公二人の会話の文脈を正確に理解できる |
| 登場人物の成長や心理的な変化を追体験できる |
| 前作の出来事を踏まえた小ネタやジョークを楽しめる |
途中から読んでも話の内容はわかりますか



事件そのものは解決しますが、人間関係の文脈が掴めず面白さが半減します
二人の歴史を順番に目撃し、変化していく関係性を見守ってください。
ネタバレ回避と伏線回収に必要な正攻法
ミステリ小説において最も避けるべき事態は、後の巻で過去の事件の犯人やトリックについて言及されてしまうネタバレ事故です。
特にS&Mシリーズは、第1作で提示された謎や人物像が、最終巻である第10作で大きな意味を持つような壮大な仕掛けが施されています。
| ネタバレ回避のポイント |
|---|
| あらすじやレビューサイトを詳しく見ない |
| 登場人物のその後の生死などを検索しない |
| 巻数通りに読み進めて情報を積み上げる |
アニメを見たので2作目から読み始めてもいいですか



原作小説ならではの微細な心理描写や伏線があるため、1作目から読むのが鉄則です
正しい手順で物語を積み上げ、極上の驚きとカタルシスを味わってください。
S&Mシリーズ全10作のあらすじと見どころ
シリーズを通して最も重視すべき点は、巻を追うごとに変化する犀川創平と西之園萌絵の距離感です。
1作ごとの独立した事件を楽しみつつ、背景で流れる人間関係の機微を味わうために、以下の全10作を刊行順にご紹介します。
| タイトル | 舞台・テーマ | 特徴 |
|---|---|---|
| すべてがFになる | 孤島の研究所 | シリーズ最高傑作とされる伝説のデビュー作 |
| 冷たい密室と博士たち | 極寒の実験施設 | ユーモアと論理が共存する工学ミステリ |
| 笑わない数学者 | 天文台のある館 | 数学的な謎と館ミステリの融合 |
| 詩的私的ジャック | 大学キャンパス | 音楽的なリズムと密室殺人の競演 |
| 封印再度 | 岐阜の旧家 | 美しいトリックと家宝の謎解き |
| 幻惑の死と使途 | 奇術ショー | トリックよりも雰囲気を楽しむ異色作 |
| 夏のレプリカ | 夏の避暑地 | 登場人物の心理と過去に深く迫る |
| 今はもうない | 嵐の山荘 | 驚愕の構成と叙述的な仕掛け |
| 数奇にして模型 | 閉ざされたアトリエ | 虚構と現実を問う哲学的な問いかけ |
| 有限と微小のパン | 長崎のテーマパーク | すべての伏線が収束する完結編 |
1冊ずつ異なる舞台とテーマが用意されており、読者を飽きさせない構成になっています。
すべてがFになるの孤島密室と天才真賀田四季
ここでの「天才」とは、物語の核心を握る真賀田四季博士の圧倒的な知性を指します。
彼女は14歳で両親を殺害した過去を持ち、孤島の研究所に長年隔離されている人物です。
1996年の第1回メフィスト賞受賞作であり、20年以上経過した現在でも色褪せない衝撃を読者に与えます。
外界と隔絶されたハイテク研究所で起きた不可解な密室殺人は、理系ミステリの金字塔として多くのファンを魅了してきました。
犀川助教授と萌絵が初めて読者の前に姿を現し、二人の関係の原点が描かれています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発行年 | 1996年 |
| キーワード | コンピュータ、仮想現実、多重人格 |
| 読みどころ | 犀川創平の思考プロセスと真賀田四季の哲学 |
理系の難しい用語がたくさん出てきて挫折しないか不安です



用語はBGMのようなものとして捉え、わからなくても読み進めれば問題ありません
シリーズへの入り口として、完璧な論理と世界観を提示する一冊です。
冷たい密室と博士たちの実験施設と工学トリック
この作品では、同僚助教授の誘いで訪れた極寒の実験施設内での殺人が描かれます。
施設特有の構造を利用したトリックが特徴で、工学部ならではの舞台設定が光ります。
夜間に行われた実験中に不可解な現象が発生し、マイナス20度の世界で死体が発見される展開はスリル満点です。
前作のシリアスな雰囲気とは異なり、大学の同僚や学生たちとのコミカルな会話も楽しめます。
理系研究者の日常や生態が垣間見える点も、この作品の大きな魅力です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発行年 | 1996年 |
| キーワード | 低温実験室、同僚、アラーム |
| 読みどころ | 犯行の動機よりも手段を重視するドライな論理 |
前作と比べて読みやすさに違いはあるのですか



登場人物同士の会話が増え、より親しみやすい雰囲気で物語が進みます
工学的でありながらも人間味のあるやり取りが癖になる良作です。
笑わない数学者の天体模型と館ミステリ
タイトルにある「数学者」とは、館の主である天王寺博士の偏屈かつ知的なキャラクターを示します。
彼は「オリオン像」消滅のトリックや数学的な暗号を提示し、犀川たちに知恵比べを挑みます。
古典的な「館もの」のスタイルを取り入れつつ、3つの異なる視点で物語が進行する構成は秀逸です。
オリオン座の配置を模した建築や、散りばめられた数学パズルが知的好奇心を刺激します。
館に集められた人々の人間模様も複雑に絡み合い、最後まで結末が読めません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発行年 | 1996年 |
| キーワード | オリオン像、三色問題、ビリヤード |
| 読みどころ | 犀川と天王寺博士による天才同士の頭脳戦 |
数学が苦手なのですがパズルの意味を理解できないと楽しめませんか



数式を解く必要はなく、登場人物が導き出す答えを楽しむだけで十分です
ミステリの王道設定を現代風にアレンジした、安定感のある一冊です。
詩的私的ジャックの大学キャンパスと密室殺人
本作の舞台は、犀川たちが普段過ごしているN大学のキャンパス内で起きた連続殺人です。
ロックミュージシャンの歌詞が事件に関連するなど、芸術的な要素も取り入れられています。
大学の実験室という日常的な空間で、2つの密室が形成される不可解な状況が見どころです。
学生たちの恋愛模様や生活感がリアルに描かれ、これまでの「孤島」や「館」とは異なる身近な恐怖を感じさせます。
萌絵の友人が事件に関わることで、彼女の感情的な側面も浮き彫りになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発行年 | 1997年 |
| キーワード | 歌手、ポスター、大学祭 |
| 読みどころ | 身近な場所で起きる非日常的な事件と学生生活の描写 |
事件の内容だけでなく学生たちの青春ドラマのような要素もありますか



研究室の日常や学園祭の準備など、学生生活の瑞々しい描写も楽しめます
日常と非日常の境界線が曖昧になる感覚を味わえる作品です。
封印再度の家宝の壺と美しい解決編
ファンの間で最高傑作との呼び声も高い本作は、「天地の瓢(こひょう)」と「無我の匣(はこ)」という家宝を巡る物語です。
50年前に起きた事件と現在がリンクし、世代を超えた謎解きが展開されます。
家宝の壺に隠された謎を解く鍵が、50年もの間守られ続けてきたという設定にはロマンがあります。
岐阜県の旧家を舞台にした日本的な情緒と、犀川による論理的な解決が見事に融合しています。
特にタイトルの意味が明かされる瞬間は、多くの読者が感嘆の声を漏らします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発行年 | 1997年 |
| キーワード | 遺言、鍵、日本家屋 |
| 読みどころ | 物理的なトリックと心理的な動機が織りなす美しい結末 |
古い因習や家系図などが複雑で理解するのが大変そうです



人間関係は整理されており、家系図を暗記しなくても物語に没頭できます
謎解きの爽快感と物語の完成度において、シリーズ屈指の満足度を誇ります。
幻惑の死と使途の奇術師と不思議な雰囲気
この作品では、著名な奇術師である有里匠幻が演じる脱出マジック中の死が扱われます。
現実の殺人事件でありながら、どこか幻想的で掴みどころのない空気が漂います。
衆人環視の中で行われたショーの最中に、数千人の観客が目撃者となる奇妙な状況設定が魅力です。
物理的なトリックの解明よりも、「なぜそのような状況が作られたのか」というホワイダニット(動機や背景)に重きが置かれています。
ミステリとしての整合性を保ちつつ、読者を不思議な世界へ誘います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発行年 | 1997年 |
| キーワード | マジック、脱出、すり替え |
| 読みどころ | 虚構と現実が入り混じる独特の浮遊感と奇術の裏側 |
論理的な解決を期待しているのですが曖昧なまま終わるのでしょうか



謎自体は論理的に解明されますが、読後に残る余韻は独特なものになります
いつもの明快さとは一味違う、物語の深みと雰囲気を堪能する一作です。
夏のレプリカの心理描写と距離感の変化
「夏のレプリカ」は、前作『幻惑の死と使途』と同時期に起きた別の事件を描いています。
並行して進む時間軸の中で、萌絵が個人的に関わる事件として重要な位置づけにあります。
夏の避暑地で起きた誘拐事件を通して、萌絵の内面的な脆さと成長が克明に描かれます。
犀川の出番は控えめですが、不在であるからこそ二人の精神的な結びつきが強調される構成です。
家族への想いや過去の記憶と向き合う萌絵の姿は、シリーズ後半へ向けての転換点となります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発行年 | 1998年 |
| キーワード | 誘拐、仮面、家族 |
| 読みどころ | 普段は気丈な萌絵が見せる弱さと犀川への信頼 |
前作と関連しているなら続けて一気に読んだ方が良いですか



時間軸が重なっているため、前作の記憶が鮮明なうちに読むのが最適です
事件の謎解き以上に、主要キャラクターの心情に寄り添うことが重要な作品です。
今はもうないの叙述トリックと構成の妙
本作最大の特徴は、読者の認識を揺さぶる巧みな叙述トリックにあります。
山奥の別荘で起きる密室殺人が、特殊な構成によって語られます。
閉ざされた空間で2人の女性が過ごす奇妙な共同生活と、そこに忍び寄る不穏な気配が緊張感を高めます。
冒頭から違和感を抱かせつつ、終盤で世界が一変する感覚はミステリ読みにとってのご褒美です。
シリーズの中でも特に「再読したくなる」作品として評価されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発行年 | 1998年 |
| キーワード | 嵐、聴覚、過去 |
| 読みどころ | 全てを知った後に読み返すことで気づく伏線の数々 |
騙されるのが好きなのでネタバレを絶対に見たくありません



あらすじ以上の情報を検索せず、真っ白な状態で挑むことを強く推奨します
著者の仕掛けた罠に心地よく嵌まる快感を体験してください。
数奇にして模型の哲学的テーマとモデリング
タイトルにある「模型」は、単なるホビーではなく現実世界を認識するためのモデリングという概念を示します。
M工業大学で開催される模型交換会で、凄惨な死体遺棄事件が発生します。
物語の中に散りばめられた、人工生命や意識に関する哲学的な対話が知的好奇心を刺激します。
模型マニアたちの密室的なコミュニティと、そこで起きる論理的な事件の対比が鮮やかです。
シリーズを通して描かれてきた「現実とは何か」という問いが、より深化した形で提示されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発行年 | 1999年 |
| キーワード | フィギュア、密室、首なし死体 |
| 読みどころ | マニアックな世界観と犀川創平の鋭い洞察 |
哲学的な話ばかりで退屈してしまうことはありませんか



事件自体が猟奇的でインパクトがあり、エンタメとしての緊張感も保たれています
知的なテーマとミステリとしての面白さが高い次元で融合した作品です。
有限と微小のパンのシリーズ完結と真実
ついに迎える最終巻では、第1作『すべてがFになる』の真実が再び眼前に現れます。
長崎の巨大テーマパークを舞台に、シリーズ最大のスケールで物語が収束します。
全10作を通して積み重ねてきた、犀川と萌絵、そして真賀田四季の物語が決着を迎えます。
これまでの伏線が見事に回収されるとともに、タイトルの意味を知った時の感動は言葉になりません。
読了後、すぐに第1作から読み返したくなる無限のループ構造を持っています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発行年 | 1999年 |
| キーワード | テーマパーク、VR、再会 |
| 読みどころ | シリーズの集大成として描かれる圧倒的なカタルシス |
読み終わった後に喪失感で動けなくなりそうで怖いです



心地よい喪失感と共に、彼らの物語を見届けた達成感が上回ります
S&Mシリーズという壮大な思考の旅における、最高の終着点です。
読了後に接続するVシリーズとの関連性
S&Mシリーズの全10作を読み終えた後に待っているのは、森博嗣が構築したさらに広大な「森ミステリィ」の世界であり、その中心にあるのがVシリーズです。
S&MシリーズとVシリーズは、同じ時間軸と世界観を共有しており、両者を読み進めることで単独のシリーズだけでは見えなかった巨大な仕掛けや人間関係の深淵が浮き彫りになります。
異なる主人公と異なるアプローチで描かれる二つのシリーズの特徴を理解し、次の読書体験へスムーズに移行するために、以下の比較表で両者の違いを確認してください。
| 特徴 | S&Mシリーズ | Vシリーズ |
|---|---|---|
| 主役コンビ | 犀川創平&西之園萌絵 | 瀬在丸紅子&保呂草潤平 |
| 所属・舞台 | 国立N大学工学部 | 阿漕荘(古いアパート) |
| 推理の主軸 | 理系的な論理とトリック | 哲学的な思索と動機 |
| 雰囲気 | クールでアカデミック | 倒錯的でアンティーク |
S&Mシリーズが論理を積み上げる「理系ミステリ」であるのに対し、Vシリーズは感情や美学が複雑に絡み合う物語となっており、両輪が揃うことで森博嗣ワールドの真価が発揮されます。
世界観を共有する他作品へのリンク
「世界観の共有」とは、単に同じ地名が登場するだけでなく、ある作品での出来事が他方の作品の背景として機能しているリンクの状態を指します。
具体的には、S&Mシリーズで活躍したキャラクターが意外な形でVシリーズに顔を出したり、逆にVシリーズの主要人物が犀川や萌絵と関わりを持ったりする展開が用意されています。
特に「瀬在丸紅子」という探偵役の女性は、西之園萌絵とは対照的な「没落した旧家の令嬢」という立場にあり、彼女たちの人生が交錯する瞬間はファンにとって大きなカタルシスです。
両シリーズの繋がりを示す具体的な要素は以下の通りです。
| 共有要素 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 時間軸 | S&Mシリーズと同時期、あるいは前後の出来事が描かれる |
| 登場人物 | 脇役や名前だけの登場を含め、相互にキャラクターが行き来する |
| 事件の背景 | ある企業の技術や、特定の犯罪組織の影が両シリーズに落ちる |
S&Mシリーズの登場人物に愛着が湧いたのですが、彼らと再会できますか



主要人物のその後や、意外な過去の姿をVシリーズの中で発見できます
このように、物語の枠を超えてキャラクターが生き続けている感覚を味わえる点が、シリーズを跨いで読み続ける最大のメリットです。
S&Mシリーズ読破後に読むべきタイミング
Vシリーズへと進む最適なタイミングは、S&Mシリーズの最終巻『有限と微小のパン』を読み終えた直後です。
S&Mシリーズの後半、特に最終巻にはシリーズ全体の総決算とも言える大きな謎や人間関係の結論が含まれており、これを知った状態でVシリーズに入ることが、作者の仕掛けた叙述的なトリックを最大限に楽しむ条件となります。
もし順番を逆にしてしまうと、S&Mシリーズで明かされるべき驚きが半減してしまうため、以下の手順を守って読み進めてください。
| ステップ | アクション |
|---|---|
| Step1 | S&Mシリーズ全10作を刊行順に読破する |
| Step2 | 読了の余韻に浸りながらVシリーズ第1作『黒猫の三角』を手に取る |
| Step3 | 両シリーズの微妙なリンクを見つけながら読み進める |
Vシリーズの表紙やあらすじが気になりますが、並行して読んでも良いですか



重大なネタバレを回避するため、必ずS&Mシリーズ完結後に着手してください
S&Mシリーズで培った論理的な思考とキャラクターへの理解を携えてVシリーズへ進むことで、森博嗣が描くミステリの深みをより一層強く感じられます。
S&Mシリーズ読む順番は時系列の刊行順
森博嗣作品を楽しむ上で最も重要なルールは、シリーズ第1作から刊行された順番通りに読むことです。
一話完結型のミステリでありながら、全体を通して描かれる人間関係や時間の流れは不可逆であり、この順番を守ることでしか味わえないカタルシスが存在します。
| 順番 | タイトル | 刊行年 | 舞台 |
|---|---|---|---|
| 1 | すべてがFになる | 1996 | 孤島の研究所 |
| 2 | 冷たい密室と博士たち | 1996 | 極寒の実験施設 |
| 3 | 笑わない数学者 | 1996 | 雑貨店と館 |
| 4 | 詩的私的ジャック | 1997 | 大学キャンパス |
| 5 | 封印再度 | 1997 | 旧家と蔵 |
| 6 | 幻惑の死と使途 | 1997 | 奇術ショー |
| 7 | 夏のレプリカ | 1998 | 夏の避暑地 |
| 8 | 今はもうない | 1998 | 嵐の山荘 |
| 9 | 数奇にして模型 | 1998 | 模型交換会 |
| 10 | 有限と微小のパン | 1998 | テーマパーク |
このように、1996年から1998年という短期間に濃密な10作が発表されています。
必ずこのリストの通りの順番で手に取ることを強く推奨します。
キャラクターの関係性が変化する物語の構造
本シリーズの大きな魅力は、犀川創平と西之園萌絵という二人の主人公の関係性が徐々に変化していく点にあります。
第1作では単なる「教師と教え子」に近い距離感だった二人が、事件を共に乗り越え、季節が巡るごとに精神的な結びつきを深めていきます。
全10作を通して描かれる時間の経過は約3年分に相当し、登場人物の進級や留学、就職といったライフイベントも物語に色濃く反映されます。
途中の巻から読み始めると、彼らの会話に含まれる微妙なニュアンスや、前作での出来事を踏まえた心理描写を正しく受け取ることができません。
先生と学生の関係が進展するのか気になります



二人の関係は非常に微細な変化を積み重ねていくため、順番通りに追うことでしかその機微を感じ取れません
物語としての完成度を高めるためには、彼らの歴史を読者自身が共有体験として持っている必要があります。
ネタバレ回避と伏線回収に必要な正攻法
ミステリ小説において最も恐れるべき事態は、続刊の中で前作の犯人やトリックに関する決定的なネタバレに遭遇することです。
S&Mシリーズは一冊ごとの独立性が高いものの、過去の事件が会話の中で参照されたり、解決済みの事件として言及されたりすることが頻繁にあります。
特に後半の作品では、初期の作品で提示された伏線が見事に回収される場面もあり、刊行順に読むことは著者が仕掛けた壮大なトリックを崩さずに楽しむ唯一の正攻法です。
有名なアニメの原作から読みたいのですが問題ないですか



アニメ化された『すべてがFになる』はまさに第1作目ですので、そこから読み始めるのがベストです
著者が意図した情報開示の順序に従うことで、最終巻で訪れる衝撃と感動を最大限に享受できます。
S&Mシリーズ全10作のあらすじと見どころ
シリーズ全10作はそれぞれ異なる舞台設定と工学的テーマを持ち、理系ミステリとしての多様な魅力を提示しています。
孤島、密室、大学、旧家など、古典的なミステリの舞台装置を現代的な論理で再構築している点が特徴です。
| タイトル | 特徴・キーワード | 理系度 |
|---|---|---|
| すべてがFになる | 孤島・天才・多重人格 | ◎ |
| 冷たい密室と博士たち | 低温実験室・同僚・幾何学 | ◎ |
| 笑わない数学者 | 天体模型・オリオン像・数学 | ◯ |
| 詩的私的ジャック | 大学・ロック・密室 | ◯ |
| 封印再度 | 壺・家宝・物理トリック | ◯ |
| 幻惑の死と使途 | 奇術・錯覚・消失 | △ |
| 夏のレプリカ | 誘拐・心理・仮面 | △ |
| 今はもうない | 叙述・閉鎖空間・過去 | ◯ |
| 数奇にして模型 | 模型・哲学的・虚構 | ◎ |
| 有限と微小のパン | ナノテク・テーマパーク・真実 | ◎ |
各作品が持つ独自の雰囲気と、犀川・萌絵コンビが挑む謎の核心を紹介します。
すべてがFになるの孤島密室と天才真賀田四季
記念すべきシリーズ第1作にして、日本ミステリ史に残る金字塔と称される最高傑作です。
孤島のハイテク研究所で隔離生活を送る天才工学博士・真賀田四季の部屋から、ウエディングドレスを着た死体が現れるという衝撃的な導入部が読者を引き込みます。
「すべてがFになる」という言葉の意味が解き明かされた瞬間の戦慄は、20年以上経った今も色褪せることがありません。
- 物理的なトリックとコンピュータシステムを融合させた先駆的作品
- 真賀田四季という圧倒的なカリスマ性を持つキャラクターの登場
- 犀川創平の思考実験と論理展開の鮮やかさ
理系の知識がないと謎解きは難しいですか



専門用語は雰囲気作りとして機能しているため、知識がなくても論理的な驚きを十分に楽しめます
森博嗣作品の入り口として、これ以上ない完成度を誇る一冊です。
冷たい密室と博士たちの実験施設と工学トリック
マイナス20度の低温実験室という特殊な環境下で発生した、衆人環視の中での不可解な殺人事件を扱います。
同僚である大学の研究者たちが容疑者となり、アカデミックな閉鎖社会特有の人間関係がリアルに描写されています。
理系研究者である著者自身の経験が反映された実験施設の描写や、工学的な思考を駆使した物理トリックが見どころです。
- 実験施設という特異な空間を利用した大胆なトリック
- 研究者たちの日常や苦悩が描かれる青春群像劇の側面
- 犀川創平の人間味が垣間見える同僚との交流
前作よりも人間ドラマの比重が増し、シリーズの空気感に馴染むのに最適な第2作です。
笑わない数学者の天体模型と館ミステリ
偉大な数学者が住む館で起きた、オリオン像の消失と死体の出現を描く王道の館ミステリです。
「三博士の館」と呼ばれる建築物の特殊な構造や、随所に散りばめられた数学的な暗号が知的好奇心を刺激します。
タイトルの通り「数学」がテーマの根底にあり、論理的なパズルを解くような知的な快感を味わえます。
- 古典的な館ミステリを理系的アプローチで再構築
- 数学的な問いかけと人生哲学が交差するテーマ性
- 萌絵の親友である儀同世津子などのサブキャラクターの活躍
数学が苦手でも話についていけますか



数学的な話題は登場しますが、物語の理解には影響せず、むしろ知的な装飾として楽しめます
犀川と萌絵の軽妙な掛け合いも板につき、シリーズの安定感を感じさせる作品です。
詩的私的ジャックの大学キャンパスと密室殺人
物語の舞台を犀川や萌絵が通うN大学のキャンパスに移し、学生生活の日常と非日常的な殺人が交錯します。
大学施設内で発見された密室死体と、現場に残されたメッセージの謎に挑みます。
「詩的」というタイトルが示す通り、動機や背景にアーティスティックな要素が含まれており、若者特有の激情や孤独が描かれています。
- 身近な大学という空間で起きる事件のリアリティ
- ロックミュージシャンが登場するなどポップカルチャーとの融合
- 西之園萌絵の行動力と危険な好奇心が際立つ展開
日常の延長線上で起きる事件を通じて、キャラクターたちのプライベートな一面を垣間見ることができます。
封印再度の家宝の壺と美しい解決編
旧家の土蔵で起きた密室殺人と、50年前に起きた同様の事件の謎を解き明かす現在過去リンク型の作品です。
「天地の瓢」と「無我
まとめ
森博嗣が描くS&Mシリーズの読む順番や各巻のあらすじ、そして犀川創平と西之園萌絵の関係性について詳しく解説しました。
物語の伏線や理系ミステリとしての驚きを損なわず、作品の世界観を100%楽しむための唯一の条件は、全10作を刊行された時系列順に読み進めることです。
- 失敗しない読む順番は第1作からの刊行順
- 巻を追うごとに変化する二人の距離感
- ネタバレ厳禁で味わう最終巻の感動
- 読了後に接続するVシリーズへの入り口
読む順序さえ間違えなければ、あなたの期待を超える深い没入感が待っています。
まずは伝説の始まりである『すべてがFになる』を手に取り、天才・真賀田四季との対面を果たしてください。









