辻堂ゆめ『十の輪をくぐる』の感想と評価｜読むべき3つの理由

辻堂ゆめさんの『十の輪をくぐる』は、ミステリーとしての驚きと、家族の物語としての深い感動を同時に味わえる、唯一無二の読書体験を約束する作品です。

物語は、認知症の母がふと漏らした「私は…東洋の魔女」という一言から始まります。

母が秘めた過去の謎を息子が追うという設定が、多くの読者の心を掴んで離しません。

『十の輪をくぐる』の概要とあらすじ

ミステリーとしての驚きと、家族の物語としての深い感動。

本作は、その両方を味わえる稀有な作品です。

何よりも、認知症の母が秘めた過去の謎を追うという設定が、読者の心を強く惹きつけます。

物語の核心に触れるネタバレは一切ありませんので、ご安心ください。

まずは作品の全体像を掴むために、物語の導入部分や登場人物についてご紹介します。

ネタバレなしでわかる物語の導入

主人公の漆原泰介は、80歳になる認知症の母・万津子を自宅で介護する日々を送っています。

妻と高校生の娘と共に暮らす、どこにでもいるような家族でした。

しかし、ある日テレビでオリンピック特集が流れたとき、万津子が発した一言が、穏やかだった日常に波紋を広げます。

「私は…東洋の魔女」。

今まで何も語らなかった母の口から出た衝撃的な言葉をきっかけに、泰介は母の過去を探り始めます。

母の言葉は真実なのか、そしてそこに隠された秘密とは何なのでしょうか。

この謎が、物語全体を貫く大きな柱となります。

泰介が母の過去をたどる旅は、読者を予想もしない真実へと導きます。

ただのミステリーではない、家族の愛の物語の幕開けです。

物語の鍵を握る主な登場人物

この物語の魅力は、謎解きの面白さだけではありません。

登場人物一人ひとりの心情が丁寧に描かれているからこそ、読者は深く感情移入できます。

特に、記憶を失っていく母と、それに戸惑いながらも愛情を注ぐ息子の姿は胸を打ちます。

主人公の泰介とその母・万津子を中心に、物語は展開していきます。

彼らの周りの人物も、物語に奥行きを与えています。

登場人物	役割
漆原 泰介	主人公。認知症の母を介護しながら、その過去を探る息子
漆原 万津子	泰介の母。80歳で認知症を患っており、過去に秘密を抱える
漆原 由佳子	泰介の妻。介護をめぐり泰介と意見がぶつかることもある
漆原 萌子	泰介の娘。高校2年生で、祖母の万津子を気遣う

登場人物たちの何気ない会話や葛藤を通じて、家族というものの複雑さや温かさがリアルに伝わってきます。

著者・辻堂ゆめ先生の経歴と作風

著者の辻堂ゆめ先生は、緻密に練られたミステリーの構成力と、登場人物の心を深く掘り下げる温かい筆致を両立させる作家として知られています。

読者の心を揺さぶる感動的な物語を描くことに定評があります。

2015年に『あなたのための誘拐』で第22回『このミステリーがすごい！』大賞の優秀賞を受賞してデビューして以来、数々の話題作を発表しています。

特殊な設定の中でも、普遍的な人間の感情を描き出す手腕は、多くの読者から支持されています。

『十の輪をくぐる』は、辻堂先生の持ち味である「驚きのミステリー」と「心温まる人間ドラマ」が、最も高いレベルで融合した作品と言えるでしょう。

書籍の基本情報と文庫版の存在

実際に本を手に取るにあたって、書籍の形態や発売情報は気になる点です。

この作品は単行本だけでなく、より手軽に読める文庫版も発売されています。

2020年に刊行された単行本に続き、2023年には小学館文庫から文庫版も登場しました。

電子書籍版もあるため、あなたの読書スタイルに合わせて選べます。

項目	詳細
書名	十の輪をくぐる
著者	辻堂 ゆめ
出版社	小学館
ページ数	358ページ（単行本）
単行本発売日	2020年11月26日
文庫版発売日	2023年10月6日
形式	単行本、文庫、電子書籍

書店やオンラインで探す際は、単行本か文庫版か、好みのものを選べるのが嬉しいポイントです。

第42回吉川英治文学新人賞候補としての実績

吉川英治文学新人賞とは、大衆文学の分野で、将来性のある優れた新人作家に贈られる歴史ある文学賞です。

多くの人気作家を輩出してきました。

『十の輪をくぐる』は、この第42回吉川英治文学新人賞の候補作に選ばれています。

この事実は、本作がエンターテインメントとして面白いだけでなく、文学作品としても高い水準にあることを示しています。

読書好きなら誰もが知る賞の候補に選ばれたという実績は、この本を手に取る価値があることの何よりの証明になります。

ネタバレなしで解説する『十の輪をくぐる』を読むべき3つの理由

この物語の魅力は、ただ謎を解くだけのミステリーに留まらない点です。

読者の心を深く揺さぶるのは、物語の根底に流れる温かい家族の愛情にあります。

ミステリーとしての驚きと、人間ドラマとしての感動、その両方を存分に味わえるのが本作最大の魅力と言えるでしょう。

これからお話しする3つの理由を知れば、きっとあなたもこの本を手に取りたくなるはずです。

理由その1-伏線と感動が両立したミステリー体験

『十の輪をくぐる』は、ミステリーとしての面白さと人間ドラマの感動が巧みに融合した作品です。

緻密に張り巡らされた伏線が、ラストの感動を最大限に引き出す装置として機能している点が、読者に深い余韻を残します。

物語の序盤から散りばめられた何気ない言葉や出来事が、終盤で一つの線として繋がっていく構成は見事です。

実際に多くの読者がその構成を高く評価しており、読書メーターでは登録者のうち82%が好意的な評価をしています。

ミステリーファンも、感動的な物語を求める読者も、どちらも満足させる完成度の高さがうかがえます。

単なるお涙頂戴の物語ではなく、本格的なミステリーとしてもしっかりと骨格が作られています。

伏線が回収されたときに訪れる驚きと感動は、忘れられない読書体験になるでしょう。

理由その2-認知症の母と息子のリアルな心情描写

本作のもう一つの大きな柱は、登場人物たちの心の動きが丁寧に描かれている点です。

特に、認知症を患う母・万津子と、その介護をしながら過去の謎を追う息子・泰介の関係性は、読む人の胸に深く迫るリアリティを持っています。

物語では、記憶を失っていく80歳の母・万津子と、そんな母に戸惑い、時に苛立ちながらも深い愛情を注ぐ息子の姿が克明に描かれます。

これはフィクションでありながら、多くの人が自身の家族と重ね合わせてしまう普遍的なテーマを含んでいます。

奇抜な設定のミステリーとは一線を画す、地に足のついた人間ドラマがここにあります。

読み終えた後、自分の大切な人のことを改めて考えさせられる、そんなきっかけをくれる物語です。

理由その3-史実「東洋の魔女」が物語に与える深み

この物語に独特の奥行きを与えているのが、母の過去に関わる「東洋の魔女」というキーワードです。

「東洋の魔女」とは、1964年の東京オリンピックで金メダルを獲得し、日本中を熱狂させた女子バレーボール日本代表チームの愛称を指します。

認知症の母がふと漏らした「私は…東洋の魔女」という一言から、物語は大きく動き出します。

一人の女性の人生の秘密と、国民的なスポーツ史の出来事が交差するという着眼点が、物語をより一層魅力的なものにしています。

史実を物語の軸に据えることで、単なる家族の物語が、時代を映す大きな歴史の一部として感じられます。

このスケールの大きさが、読後に深い感慨をもたらすのです。

読書メーターでの評価や感想・口コミ

『十の輪をくぐる』が実際に読者からどのように受け止められているのか、気になりますよね。

国内最大級の書評サイト「読書メーター」では、8割を超える読者が「読んでよかった」と高く評価しています。

多くの感想や口コミは、「感動」と「ミステリーの完成度」という二つの側面に集約されます。

ここでは、具体的な口コミの内容を交えながら、本作の魅力を深掘りしていきます。

多くの読者が共感し、称賛するポイントを知ることで、作品への期待がさらに高まるはずです。

読書メーターにおける高い評価

この作品の評価の高さを客観的に示す指標として、読書メーターのデータが挙げられます。

3000人を超える登録者のうち、実に82%もの読者が肯定的な評価を下しています。

この数値は、多くのミステリー小説の中でも際立っているものです。

また、第42回吉川英治文学新人賞の候補作に選出された事実も、文学界からの評価の高さを物語っています。

単なる人気だけでなく、物語の質そのものが認められているのです。

多くの読者の心を掴んで離さない、その理由が口コミから見えてきます。

「涙が止まらない」感動を伝える実際の感想

『十の輪をくぐる』の感想で最も多く見られるのが「泣ける」という言葉です。

その涙の源泉は、物語の核となる認知症の母と、その過去を辿る息子の愛情描写にあります。

読者は、二人の姿に自身の家族を重ね合わせ、心を揺さぶられるのです。

読書メーターや各種レビューサイトには、読者の感動を伝える声が溢れています。

よく見られる感想の傾向
ラストの展開に涙が止まらない
認知症の母を想う息子の姿に感動する
家族の絆の温かさに胸が熱くなる
読後に優しい気持ちになれる

物語がもたらす感動は、単に悲しいというだけではありません。

読み終えた後に、心が温かくなるような優しい涙を流せる作品です。

ミステリーとしての完成度を称賛する口コミ

本作は感動的な家族小説であると同時に、本格的なミステリーとしても高く評価されています。

物語の魅力は、巧みに張り巡らされた伏線とその鮮やかな回収にあります。

母が呟いた「私は…東洋の魔女」という謎の一言から始まる物語は、読者をぐいぐいと引き込みます。

史実と個人の人生がどのように結びつくのか、その意外な繋がりと構成の妙に、多くの読者が賞賛の声を寄せています。

感動だけでなく、知的好奇心も満たしてくれるのが本作の大きな魅力です。

感動的な人間ドラマと、緻密に設計されたミステリー要素が見事に融合しているからこそ、これほど多くの読者から熱い支持を得ているのです。

こんな人におすすめの『十の輪をくぐる』

この物語は、単なるミステリー小説の枠に収まりません。

緻密な伏線が回収される快感と、心を揺さぶる家族の物語が融合した、唯一無二の読書体験を求めているあなたにこそ読んでほしい一冊です。

ミステリーファンはもちろん、普段あまり読まない方でも、きっとその世界に引き込まれていくでしょう。

これからご紹介する3つのタイプに当てはまるなら、ぜひ手に取ってみてください。

謎解きと人間ドラマの両方を楽しみたい人

『十の輪をくぐる』の最大の魅力は、巧妙なミステリーと感動的なヒューマンドラマが見事に両立している点です。

物語の謎を追いかけるうちに、いつの間にか登場人物たちの心情に深く寄り添っている自分に気づかされます。

実際に、読書メーターに寄せられた764件以上のレビューでも、ミステリーとしての完成度の高さと、家族の物語としての感動の両方が数多く称賛されています。

謎が解ける爽快感と、読み終えた後に温かい涙が流れる感動を、同時に味わうことができます。

ハラハラする展開と、胸が熱くなる感動の両方を一冊で楽しみたいと考えている方に、心からおすすめします。

家族の絆や愛情をテーマにした物語が好きな人

この物語の根底に流れているのは、切なくも温かい「家族の愛」というテーマです。

特に、認知症を患う母・万津子と、その過去を探る息子・泰介の関係性には、胸を打たれずにはいられません。

「私は…東洋の魔女」という母の過去をたどる旅は、息子がこれまで知らなかった母の人生を知り、親子の絆を再確認していく過程でもあります。

忘れていく母と、思い出そうとする息子。

二人の姿を通して、家族だからこその葛藤や愛情の深さが丁寧に描かれています。

ページをめくるたびに、あなた自身の家族や大切な人のことを想い、その存在のありがたさを再認識するきっかけになる物語です。

読後に温かい余韻を求める人

「読書の後、しばらく物語の世界から抜け出したくない」そんな深い余韻を味わいたい方に、この作品はぴったりです。

読後感は、ただ「面白かった」だけではありません。

謎が解けたすっきり感と共に、心の中に温かい光が灯るような感動が待っています。

その文学的な評価の高さは、第42回吉川英治文学新人賞の候補作に選ばれたことからも明らかです。

読書メーターの感想でも「涙が止まらない」という声が多数寄せられており、多くの読者の心を揺さぶったことが分かります。

ミステリーを読んで、これほどまでに温かい気持ちになれる作品は稀です。

明日への活力が湧いてくるような、優しい読後感を約束します。

文庫本や電子書籍の入手方法

『十の輪をくぐる』は、あなたの読書スタイルに合わせて購入形態を選べます。

単行本に加え、持ち運びに便利な文庫本や、すぐに読める電子書籍も出版されています。

単行本のページ数は358ページと、じっくり物語の世界に浸れる程よいボリューム感です。

それぞれの特徴を以下の表にまとめましたので、参考にしてください。

形態	特徴	こんな人におすすめ
文庫本	持ち運びに便利で価格も手頃	通勤中や外出先で読みたい人
電子書籍	購入後すぐに読めて保管場所も不要	スマートフォンやタブレットで読書する人
単行本	大きな活字で読みやすく所有感がある	自宅でじっくりと作品世界に浸りたい人

ご自身のライフスタイルに合った一冊を選んで、この感動的な物語を体験してみてはいかがでしょうか。

よくある質問（FAQ）

『十の輪をくぐる』に続編はありますか？

2024年現在、『十の輪をくぐる』の続編に関する公式な発表はありません。

この物語は一冊で美しく完結しており、読後に深い満足感を得られる作品です。

本格的なミステリーですか？殺人事件は起こりますか？

この作品は、いわゆる殺人事件を追うタイプのミステリーではありません。

主人公が認知症の母の過去を探る中で、家族の知らなかった秘密や真相が明らかになる「ヒューマンミステリー」です。

謎解きの面白さと人間ドラマの感動を両方味わえます。

辻堂ゆめ先生の他の作品と比べて、どんな特徴がありますか？

辻堂ゆめ先生は特殊設定ミステリーで知られていますが、本作はより現実に根差した物語です。

家族の愛や記憶という普遍的なテーマを丁寧に描いている点が大きな特徴になります。

驚きの結末と温かい感動を両立させる、先生の魅力が凝縮された一冊と言えるでしょう。

この物語の探偵役は誰にあたりますか？

主人公の息子・泰介が探偵役となり、母が残した言葉の謎を追います。

彼は特別な能力を持つ探偵ではなく、ごく普通の会社員です。

だからこそ、彼の奮闘する姿に読者は深く共感します。

文庫版は出ていますか？

はい、2023年10月に小学館文庫から文庫版が発売されました。

物語の内容は単行本と同じですが、より手軽に持ち運べるサイズになっています。

あなたの読書スタイルに合わせて選んでください。

読後の感想として、どんな声が多いですか？

多くの感想やレビューで、「伏線の回収が見事で、物語の結末に涙した」という声が目立ちます。

ミステリーとしての驚きと、家族の絆を描く感動的な物語が完璧に融合している点が高い評価を受けています。

読後、自分の家族に会いたくなるような温かい気持ちになる作品です。

まとめ

辻堂ゆめさんの『十の輪をくぐる』は、ミステリーとしての驚きと、家族の物語としての深い感動を同時に味わえる作品です。

認知症の母が漏らした一言の謎を息子が追う中で、巧みに張り巡らされた伏線が感動的な結末へと繋がっていく構成は、多くの読者の心を掴んで離しません。

ただのミステリーでも、単なる感動小説でもない、特別な読書体験がここにあります。

読後に優しい余韻を味わいたいあなたは、ぜひこの感動を体験してみてください。